日本経済の幻想と真実

「真紀子爆弾」が突きつけた大学倒産時代の現実

政治家を「まつり上げる」官僚機構が元凶だ

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 この場合の政治(まつりごと)の主語は摂政・関白や征夷大将軍などの臣下であり、天皇は彼らの決めたことを追認するだけの「みこし」のような存在である。さらに臣下の意思決定もその部下(家司や執権など)に委任される入れ子構造になっている。

 このような形式的な最高責任者と実質的な決定者の二重構造は、官庁だけではなく企業にも遍在している。経営者の仕事は現場の決めたことを承認して対外的な交渉を行うことだから、組織のバランスをとる調整型の人が出世し、田中氏のような人は通常はトップにはならない。

 この方式は日常業務を既定方針どおり続けるときはいいのだが、トップが現場の積み上げた既成事実を拒否できないので、危機に直面したとき方向転換できない。かつて日本が勝てないと分かっている戦争に突っ込んだ原因も、この無責任の体系にあったと丸山は指摘している。

 今回の騒動は、政治の転換を阻む「まつりごと」の構造を鮮やかに見せ、政治家が官僚に振り回される実態を白日のもとにさらした。こういう欠陥を残したまま「政治主導」などというスローガンを掲げても、何もできるはずがない。

 大学は明らかに供給過剰なのだから、政府が補助して供給を促進する政策はやめるべきだ。今年度は国立大学法人に1兆1600億円の運営交付金、私立大学には3200億円の私学助成が出ているが、大学は「レジャーランド」になっており、企業は大学教育には何も期待していない。

 日本の大学のほとんど唯一の役割は、学歴によって学生を振り分けるシグナリングであり、社会的には浪費だというのが多くの調査結果の示すところだ。また大学の私的収益率は高いので政府が補助する必要はなく、貧しい学生には奨学金を出して返済させるべきだ。

 もちろん、これには官僚も大学関係者も反対するだろう。それを押し切って大学を減らそうという田中氏の着眼はいい。今回は拙速すぎたが、これぐらいの爆弾を落とさないと、政治家も役所も目が覚めない。

 日本の未来を担うべき大学教育の劣化は深刻である。これを機に大学設置審の手続きと人選を見直し、トップダウンで大学を見直すべきだ。

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