結果的に、誹謗中傷合戦を制したオバマがロムニーに勝利した。テレビ広告の資金量でもオバマが勝っていた。このことはKFS(Key Factor for Success)として教訓定着するはずで、同じ戦略が次の選挙でも再び採用されるだろう。実際のところ、激しい中傷合戦というのは前回も同じだった。前々回も、否、かなり前から、法外なカネを注ぎ込んだテレビ広告での非難キャンペーンの応酬という問題は米国の大統領選で続き、厳しく批判され、米国の内部からその弊害への反省の声が上がっていた。どこかで市民社会の理性が働き、その悪しき慣習に歯止めがかかるかと予想していたが、事態は全く逆で、非難攻撃合戦のために資金集めをする構図はますますエスカレートしている。「史上最悪の中傷合戦」のレコードを更新する選挙となった。日本のマスコミは、両候補・両陣営の宣伝と演出のスタイルに気を取られ、彼らが上辺で言う言葉をそのまま鵜呑みにして報道しているが、この選挙で気づいて言わなくていけないのは、米国の政治の劣化である。劣化と欺瞞化だ。例えば、オバマもロムニーも、この大統領選が終わったら、民主と共和が一致協力して「一つの米国」を実現しようなどと調子よく言う。言葉は華麗だ。けれども、それは本心ではなく、真実でもなく、彼らの将来の行動を約束するものでもない。ねじれ議会の中で必ず国民不在の政争を復活させ、妥協も協調もすることはないのだ。