会話重ね心のアシスト JFAアカデミー生に帯同、滝本教諭(富岡高)
(2012/11/ 6 14:25) 福島第1原発事故の影響で、日本サッカー協会の中高一貫養成機関「JFAアカデミー福島」が福島県のJヴィレッジから御殿場市に一時移転して1年半が過ぎた。避難を余儀なくされたアカデミーの高校生約60人に帯同して、昨年5月から生徒の通学先の県立三島長陵高(三島市)に勤務する福島県の教師がいる。同県立富岡高の滝本基教諭(42)。単身で三島市内に移り住み、生徒に寄り添っている。
アカデミー生が在籍する富岡高は原発事故の警戒区域内にあり、立ち入ることはできない。生徒が富岡高に籍を置いたまま三島長陵高で単位取得できる協定が昨年結ばれたのに伴い、滝本教諭は三島に一人赴く辞令を受けた。津波被害に遭ったいわき市の実家に両親を残し、三島市内の官舎に一人で暮らす。
三島長陵高では英語の授業とホームルームを担当する。目下、3年生の進路指導が佳境に入った。プロ、大学進学、さらには海外に目を向ける生徒もいる。「寄宿生活でもともと親がそばにいない上、生徒自身も被災者。気軽に話ができるよう努めてきた」という。
先月10日、現3年生の1学年上でドイツ留学をしていた金城クリストファー達樹さん(18)=沖縄県出身=の半年遅れの卒業式が行われた。「先生ありがとう。これまで接した先生の中で一番話をした。すごく濃密な時間だった」。式の後、握手を求めてきた金城さんを、滝本教諭は「自分を信じて頑張ってほしい」と笑顔で送り出した。
「生徒を受け入れてくれた静岡の皆さんとアカデミーのスタッフのおかげで、子どもたちは確実に成長した」と滝本教諭。富岡高は三島長陵高を含め4カ所に分散して授業を行っている状態が今も続く。「一日も早く復興して、元通りに学校が一つに戻れば」と郷里への思いをにじませた。
3年生の英語を教える滝本教諭(右奥)=5日、三島市文教町の三島長陵高