Updated: Tokyo  2012/11/08 13:40  |  New York  2012/11/07 23:40  |  London  2012/11/08 04:40
 

中国は日本国債など売り越し転換、尖閣国有化の9月1550億円

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  11月8日(ブルームバーグ):財務省が8日発表した9月の国際収支状況(速報)の対内証券投資によると、中国の対日証券投資は1550億円の売り越しとなった。沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の国有化を受けて日中関係が悪化する中、世界最大の外貨準備を抱える中国による円資産の保有増に歯止めがかかった。

証券投資のうち、短期債 は1352億円、中長期債 が197億円の売り越し。両部門とも純減となるのは昨年12月以来。ただ、全体の売り越し額は7月の約4分の1にとどまった。過去最大の純減は2010年8月の2兆182億円。短期債は同月の2兆285億円、中長期債は昨年6月の5085億円が最も大きかった。中国はきょうから開く共産党大会で習近平国家副主席を胡錦濤総書記の後継者に指名する見通しだ。

野田佳彦内閣は9月11日、日本が実効支配している尖閣諸島の国有化を閣議決定した。領有権を主張する中国側は激しく反発。日中国交正常化40周年の記念行事見送りなどに加え、抗議デモや暴動が発生した。その後も、海洋監視船が尖閣周辺の日本領海に侵入を繰り返しているほか、中国での日本車販売や日本への中国人観光客の急減など経済的な影響も深刻化している。

公的債務残高 が増加の一途をたどる日本に対し、中国が保有する日本国債が武器になるとの意見も浮上。中国商務省の国際貿易経済合作研究院の金柏松副主任は9月17日付の現地紙で、中国は海外勢では最大の保有者なので、これを「最も効果的な方法」で日本に経済制裁を科すために利用できると主張していた。

金融協力への影響

中国は人民元相場の上昇を抑える為替介入などで積み上がった外貨準備高 のリスク管理に取り組んでいる。人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は昨年4月、運用・投資の分散を改善すべきだと提言。米国債保有額 は世界最大だが、過去最高だった昨年7月からは足元で12%以上少ない。共産党の機関紙、人民日報や人民銀幹部らはドルから他通貨への分散投資を進めるべきだと度々、主張している。

日本銀行の統計によると、中国の対日債券投資残高は10年末に英国や米国を抜き、海外勢で最大となった。昨年は71.2%増えて17兆9538億円。加えて、投資急増に伴う日本国内の懸念を避けるため、中国が国際的な金融取引の中心地である英国経由でも対日投資を進めているとの見方が市場では根強い。英国の対日証券投資は昨年、過去最高の68兆3828億円となった。

日中は27兆円規模に達した貿易面に加え、金融の分野でも結び付きを強めてきた。野田首相は昨年12月、北京で温家宝首相と会談。外貨準備を活用した中国国債への投資や、ドルを介しての取引が一般的な日中通貨の直接交換拡大などで一致した。今年2月には安住淳財務相(当時)が訪中し、王岐山副首相と会談。欧州債務危機対応での共同歩調でも合意した。

日本政府は3月、外貨準備を活用した中国国債の購入について、中国政府から650億人民元の認可を取得。安住財務相は、購入枠は「適切な規模」で「少額の運用から開始する」と説明した。6月1日には民間銀行による円と人民元の直接取引が東京や上海で始まった。

記事についての記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net;Rocky Swift rswift5@bloomberg.net

更新日時: 2012/11/08 11:22 JST
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