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入院先で花嫁のパパ…病院に臨時の式場

読売新聞(ヨミドクター) 11月8日(木)10時57分配信

入院先で花嫁のパパ…病院に臨時の式場
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手作りのアーチをくぐり、絵梨奈さん(右)と車いすの勝さんがゆっくりとバージンロードを進んだ

 「一緒にバージンロードを歩きたかった」。そんな新婦の夢を叶(かな)えるため、父が入院している東京都あきる野市のあきる台病院で7日、夫婦の2度目の結婚式が行われた。父は脳出血の後遺症で病床から離れられず、10月に行われた式には参列できなかった。事情を知った病院が粋な計らいをした。親族や職員、入院患者約100人が参加した手作りの結婚式。娘の晴れ舞台で、父の目に涙が光った。

 午後3時、武蔵村山市の松村瑛介さん(26)と絵梨奈さん(26)の結婚式が始まった。純白のドレスを着た絵梨奈さんが、車いすに乗った父田中勝さん(57)と並び、ゆっくりと牧師に向かって進んでいく。バラの造花で飾ったアーチや深紅のバージンロード、ステンドグラスを模した窓飾りは全て、病院職員の手作り。普段、食事や歓談に使われるスペースを式場に仕立てた。

 一人娘の絵梨奈さんはお父さん子で、成人しても2人で頻繁にラーメンを食べに行き、「私の悩みを聞いてくれるのはいつもお父さん」と話すほど大の仲良し。勝さんも、絵梨奈さんの結婚を楽しみにしていた。

 それが昨年12月、暗転した。勝さんがバイクで交差点を走っていたところ、横から来たトラックにはねられ、重傷を負った。トラックの信号無視が招いた惨事だという。

 勝さんはリハビリを始め一時は、回復に向かったが、今年4月、脳出血を起こし、意識障害や四肢のマヒが残って寝たきりとなった。動かせるのは、目と左手の先だけで、会話すらできなくなった。

 絵梨奈さんの結婚式は今年10月7日に行われたが、勝さんは血圧が安定せず、出席できなかった。式前の9月、夢を叶えられず落胆する絵梨奈さんに、同病院医療福祉相談室の岩沢元太郎さん(39)が提案した。「病院でも式を挙げませんか」

 病院で結婚式を挙げるのは初めてのことだが、ソーシャルワーカーたちが聖歌隊を結成して賛美歌を練習し、作業療法士はワイシャツを切って勝さんが着られるように加工するなど病院職員が実現に向け、協力を惜しまなかった。

 勝さんの妻政枝さん(48)は式の途中、何度か勝さんの目元をぬぐった。娘を見つめる勝さんの表情は「病床では見られないものだった」。「(勝さんと)2人で式に出られたことで、ようやく娘を嫁に出すという実感が持てた」と病院に感謝した。

 式後、瑛介さんは参列者に「夢を叶えられたのは病院の皆さんのおかげ」と謝辞を述べ、絵梨奈さんは勝さんへの手紙を、真っ赤な目で読み上げた。

 「元気になったら、ラーメンを食べに行こうと言ってくれるんじゃないかな。その時には、ごちそうするね。私のお父さんでいてくれて、ありがとう」(十河靖晃)

最終更新:11月8日(木)10時57分

読売新聞(ヨミドクター)

 

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