オバマ氏か、ロムニー氏か。6日投票の米大統領選に関する報道が熱を帯びています。テレビや新聞などで「大統領」という言葉を見たり聞いたりする機会が増えるなか、ふと素朴な疑問がわいてきました。「大統領」という言葉は、どのようにして生まれ、いつごろから使われ始めたのでしょうか。調べてみると、米国トップに対する訳のルーツを巡る興味深い事情がわかりました。
■日本にはいなかった「選挙で選ばれた権力者」
「大統領」は英語の「President(プレジデント)」を日本語に訳したもの。「president」はラテン語のpre(前に)+sidere(座る)に由来し、「人々の前に座る=議長をする、司会をする」という意味です。米国では1787年の憲法起草時に「アメリカ合衆国大統領」という職名として「President」という語が初めて採用されました。
「President」が「大統領」となったきっかけをつくったのがペリーです。1853年(嘉永6年)、ペリーはフィルモア大統領の親書を携えて浦賀に来航しました。このとき、幕府の役人たちは「President」をどう訳すかで頭を抱えました。当時、日本は鎖国中で海外からの情報が制限されており、米国の政治制度についてもあまり詳しくなかったからです。大統領は選挙によって選ばれますが、日本には選挙で民主的に選ばれた権力者がいなかったこともあり、ぴったり当てはまる日本語が見つかりませんでした。
■「国王」案に異議、議論は振り出しに
いろいろ議論した結果、President=国王という案が出ましたが、ペリーとの交渉役を務めた日本側全権大使の林大学守が待ったをかけます。林大学守はフィルモア大統領の経歴については十分調べていたようで、「フィルモアは町人の出であるから王位で呼んではならぬ」などと主張しました。
これで議論は振り出しに戻りました。
こんどは町人のなかで偉いのは誰かということになりました。頭、親方、旦那、元締、棟梁……。多くの候補のなかから最終的に残ったのが「棟梁」で、これが「大統領」の語源となったという説が今のところ有力なようです。「棟梁」とは「大工のかしら」のことで、家を一軒建てることができるから偉い、という意味で尊敬される身分でした。
もっとも米国のトップに対して「大工のかしら」とそのまま呼ぶのはどうかということで、「棟梁」を「統領」に置き換え、さらに日本の将軍と釣り合うように「大」の文字を冠しました。こうして「大統領」という呼び方が生まれたようです。ちなみに、「統領」は「統(す)べおさめること。また、その人。統御者。かしら。首領」(広辞苑第6版)を表す言葉で、「棟梁」「頭領」も同様の意味を持っています。
フィルモア、グラント、President、大統領、市川左団次、アメリカ合衆国大統領、福沢諭吉、プレジデント、ペリー
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