血糖値の変動とその影響
機能性低血糖症の方の血糖値は具体的にどのような状態になっているのでしょうか。その診断に使われる糖負荷検査のグラフを見てみましょう。糖負荷検査とは、空腹時とブドウ糖を摂取した後の血糖値の変動を、時間を追って計測するもので、糖尿病の診断時に2時間かけて行われるものです。検査データにより食事を摂った後の血糖値の変動が予想できますが、マリヤ・クリニックではこの糖負荷検査を5時間に亘って行います。また、同時に血中の亜鉛・銅・カテコーラミン等も検査します。単純な血糖値の変動のみでは、精神症状との関わりを詳細に捉える事が出来ない場合もあるためです。検査内容について
正常な方の血糖値は次のような曲線を描きます。
通常食事をすると血糖は上昇し、その後膵臓から分泌されるインスリンの働きにより緩やかに元の値に戻ります。
反応性低血糖症の一例です。
食後上昇した血糖値は、インスリンの過剰分泌等により間もなく急降下を始めます。脳は血中のブドウ糖のみをエネルギーとしているので、血糖の急降下は直接その働きに影響を与え、冷静な思考回路を保てなくなります。
血糖値70以下より感情的になる、注意力が低下するなどの症状が表れ、低下するに従って倦怠感、無気力、冷や汗、顔面蒼白、頭痛、手の震え、混乱、異常行動へと発展し、40以下では意識障害、昏睡の危険性もあります。
身体はこういった危険を回避するため、血糖降下時にはアドレナリン、ノルアドレナリン等の血糖を上げるホルモンを分泌します。これらのホルモンは交感神経を興奮させ、人を「闘争」あるいは「逃避」へと向かわせます。興奮・緊張・怒り・攻撃・不安・過敏等、感情を煽り立てるこれらのホルモンは、生命維持のため自然に備えられているものですが、血糖コントロールが不安定な人は過剰分泌が繰り返されてしまいます。
機能性低血糖症が精神症状につながる要因です。
重度の機能性低血糖症の例です
血糖値が乱高下を繰り返しています。こういった方は低血糖による思考能力の低下と頻繁に分泌されるアドレナリン・ノルアドレナリンによる興奮・緊張のせめぎ合いで、感情コントロールが非常に難しくなります。
無反応性低血糖症の例です。
一見平坦に見える血糖曲線ですが、実際は右図のように短時間の間に細かい上下動を繰り返している可能性が大きいのです。こういった場合は極度に疲れやすいばかりか、精神への影響も非常に大きく、精神科にて何らかの病名を与えられ、向精神薬を処方されている方も珍しく有りません。
過剰に分泌されたアドレナリン・ノルアドレナリンが代謝されず、酸化するとアドレノクロムという物質に変わります。このアドレノクロムこそ幻聴・幻覚・思考障害の原因として、世界的に有名なカナダの精神科医、エイブラム・ホッファー博士により、統合失調症発症の元凶と目される物質なのです。ホッファー博士の理論は、統合失調症の原因として最も有力な説と言われています。