女子で優勝した浅田真央のフリー演技=中国・上海で(内山田正夫撮影)
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◇フィギュアスケート グランプリ(GP)シリーズ第3戦<最終日>
女子はショートプログラム(SP)2位の浅田真央(22)=中京大=がフリーで逆転し、合計181・76点で優勝した。男女を合わせ、日本人最多のGP通算勝利数を9に伸ばした。SPで1位だった昨季の世界ジュニア選手権女王、14歳のユリア・リプニツカヤ(ロシア)が177・92点で2位。キーラ・コルピ(フィンランド)が3位、長洲未来(米国)は4位だった。男子はフリーで1位となった22歳の町田樹(関大)が236・92点でSP2位から逆転し、GP初優勝。シリーズの上位6選手で争うGPファイナル(12月・ソチ=ロシア)進出を決めた。SP首位の高橋大輔(関大大学院)は231・75点で2位だった。
競技後の会見場で軽くはにかみながら、浅田は今季の自分の演目を端的に説明した。「元気なSPが子どもの自分なら、フリーの『白鳥の湖』は大人の自分」。迷い、悩みながら22歳となったスケーターの深みが表れた演技で、14歳のリプニツカヤを抜き去った。
フリーでは、2回転半−3回転の連続ジャンプで回転が足りず、3回転ルッツも2回転になった。表現力でカバーし、2位から逆転したが「課題も見つかり、少し悔しさがあった」と浅田。佐藤信夫コーチも「少しずつ変化を見せ始めている段階。もう少し時間は必要」と慎重だった。
世界選手権で2年連続6位に終わり、オフにスケートへの意欲を失った。約2週間練習を休んだのは5歳からの競技人生で初めて。ハンガリーでバレエの指導を受けるなど心身のリフレッシュを図り、佐藤コーチに「もう一度滑りたい」と伝えて本格的に練習を再開したのは8月に入ってからだった。今季の始動が遅れた不安をリンクに持ち込まず、上海の観客を誰よりもとりこにしたのは経験のなせる業だった。
表現力を評価する演技構成点は他を引き離す64・34点。見せ場として最後に配したステップと、上半身の動きを組み合わせて自由に表現する「コレオ・グラフィック・シークエンス」を息切れせずにこなした。
ロシアの新鋭は、冒頭の二つの連続ジャンプで大きく減点。7年前の浅田と同じ中国でGPデビュー戦を迎え、フリー曲も当時と同じ「くるみ割り人形」で勝負を懸けてきたが、重圧を乗り越えられなかった。
SP、フリーともに今回の技術点はリプニツカヤが上。演技構成点はこれから上がる可能性が高いだけに、安穏としていられない。「若くて勢いがあるユリアちゃんに刺激をもらった。自分ももっとレベルアップしないと」。ライバル金ヨナ児(韓国)も復帰するソチ冬季五輪のプレシーズン。いよいよ浅田の心にエンジンが掛かってきた。
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