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シリーズ「プロジェクト2030 つながれない 若者たち」。将来、社会を担う若者たちにいま何が必要なのか、シリーズでお伝えしています。
いま、孤独を感じている若者は少なくありません。
NHKが2000人の若者にアンケートを行ったところ“よく孤独を感じる”“ときどき感じる”という人は55%に上りました。
特に増えているのが、親の“過干渉”によって孤立する若者です。
親が必要以上に干渉することで、思わぬ事態に陥ることが少なくないというのです。
その実態を取材しました。
「ごめんね ちょっといい?」との問いかけに、「家出してきちゃった。人間、どうせ、ひとりだし」と答える少女。
夜の東京 渋谷。繁華街を歩く若い女性たちに、話を聞いている人たちがいます。
NPOボンドプロジェクト代表、橘ジュンさん。
さまざまな悩みを抱える女性の支援をしています。
橘さんたちはここ数年、若い女性たちの声に、ある変化を感じています。
NPOに寄せられる、相談のメール。
多い月は、5000件に上ります。
“家族の中に、私の居場所すらない”
“自分なりに頑張っているのに、否定されてしまう”
過大な期待を押しつけられたり、四六時中、電話で行動をチェックされたりして、親から過剰な干渉を受けたと訴える女性たち。
その多くは精神的に追い詰められているといいます。
橘さんは、
「“私”だけど“私”じゃない。お母さんの人形みたいな存在になってしまった子が多い。本当はこうしたい、違うのにと思うことも飲み込んでしまう。そうすると、自分というものがなくなっていく」と分析します。
橘さんの調査によれば、親の過干渉が原因で、自らを傷つけてしまう女性は少なくないといいます。
21歳の佐藤真菜さん(仮名)。
父は自営業、母は専業主婦で、母が卒業した、私立の女子校に入学しました。
門限が厳しく、いまだにアルバイトもさせてもらえません。
洋服は、今でも親から買い与えられています。
真菜さんは、
「親に対して何もいえなくて、なにもわかってもらえない。嫌われちゃうかもという気持ちが多くていえない」と話します。
一番辛かったのは、両親から友人とのつきあいに口出しされ続けたことです。
真菜さんは、相談できる友達を失っていきました。
真菜さんは、
「“そういう子と一緒にいちゃいけない”といわれました。“ほかの子はもうちょっと遊んでるよ”といったら、“うちはうちだし、おまえの周りがおかしい”といわれて、すごいさびしかった」と振り返ります。
誰かに話を聞いてほしい。
真菜さんは、携帯電話で掲示板に書き込みをしました。
すると、多くの男性から返事が返ってきました。
“こんにちは。年上は好きですか?よかったら仲良くしてください”
「自分の言葉に応えてもらえて、うれしかった」と言う真菜さん。
すぐに返事を書きました。
やがて、会って話を聞いてもらいたいと、待ち合わせをするようになりました。
ある日、男性は、身体の関係を持ちかけてきました。
「話せる人がほしい。さびしい気持ちが強かったから、さびしさを紛らわすみたいな。家のことを考えなくてもいいし。誰でもいいから必要とされたい」と、求められるままに応じてしまった真菜さん。
それからは、話を聞いている人を求めて、書き込みと待ち合わせを繰り返すようになったのです。
真菜さんは、
「メールだけじゃ嫌だし、実際に会わないとさびしさは紛れない」と言います。
若者を追い詰める、親の過干渉。
精神科医 斎藤環さんは、その背景に、就職や年金など、将来への不安が高まっていることがあると指摘しています。
斎藤さんは言います。
「親は“うちの子だけはつまづいてほしくない”という思いが非常に強いので、“予防型”“先取り型”の、悪いことが起きぬよう先回りして考えたがる傾向がある。 “過干渉”になるのは当然。しつけに関わって良いのは思春期手前まで。親がどの時点で子離れするか、タイムスケジュールをたてるしかない」。
専門家によりますと、親子が孤立してしまわないように、学校や地域の人たちなど、社会全体で支えてゆく仕組みを作ることも大切だと指摘しています。
◇街で若い女性の「過干渉」の実態を調査しているNPO
「bondproject」
代表:橘ジュンさん
東京都渋谷区桜丘町27-5 シャトレ押田308号
電話:03−3464−3345
◇過干渉の原因や対処法などをインタビュー
「爽風会佐々木病院」
診療部長 精神科医:斎藤環さん
千葉県船橋市金杉町159-2