- 2009-05-30 (土) 16:00
- books
カシカリスト経由で同僚のかたから「横井軍平ゲーム館」という今ではプレミアで10万円とかになってる本を貸してもらいました。ありがとうございます!
横井軍平さんは、任天堂で玩具からゲームまで、いろんなものを作りまくった人で、事故でお亡くなりになられたのですが、その才能たるやとんでもないです。(wikipedia:横井軍平)
この本では、数多くある横井さんの開発商品の発想からリリース後までの様子がインタビュー取材形式で記されています。借りている本なので大事な部分を引用しておこうと思ったのですが、ほとんど全文コピーしたいぐらいの座右の書という勢いです。
制約から商品への落とし込み方がスゴイ
ラジコンのコントロールチャンネルを2チャンネルにするとコストがかかるので、1チャンネルでどうにかする。できた商品が左にしか曲がらない格安ラジコン「レフティRX」。でも左に曲がりさえすればちゃんとレースができて遊べるんですよ。と仰る。
「使われてる場面」設定が明確
公然と女の子と手を繋ぐための道具「ラブテスター」。二人の間に微電流を流して測定する装置。ドキドキして手に汗握ると電流も流れやすくなるという科学的根拠に一応のっとっていたりするんだけども、企画意図というか、想定シナリオが明確で素敵すぎる。
また、当時は大人がゲームするのが憚られる時代。ゲームウォッチは新幹線でこっそりプレイできるように手のひらで隠せるサイズになった。
十字キー
ジョイスティック全盛の時代、もっと薄く、安くという名目で開発された十字キー。開発上の都合だけでなく、キーの上を押すと下が浮き上がるという指へのフィードバック効果も考えてああいうデザインになり、ゲームウォッチやファミコンに搭載されてる。
キャラクターの役割
ゲームで遊ぶ人はマニュアルなんて読まない。キャラクターにハウツープレイの役割を持たせる。誰が悪役で、主人公は何をしたらいいかをデモ画面(オープニング)で把握させる。
何を捨てて何を入れるかの決断力
初代ゲームボーイはカラーにすることもできた。でもカラーにすると電池があっという間に切れる、値段も高くなる。ゲームの本質は白黒でも伝わるという判断で初代ゲームボーイは白黒、でも電池の持ちはロングライフ。どっちの方が「遊べる商品」になるのかの判断が独断だとしてもしっかりしててすごい。
枯れた技術の水平思考
本全体を通じてというか、横井さんの基本理念なのがこの「枯れた技術の水平思考」。Ajax掘り返したGoogleみたいなもんかと結び付けてもいいんだろうし、ググればその思想の断片も読めるだろうけれど、実際にその理念がちゃんと商品に落とし込まれてる。
本書の最後には横井さんからこれからクリエイターになる人に向けたメッセージが書かれていて、もうシャレになんないぐらい響く。1997年発刊なのに、Flashやってる僕がこんなに感動するとかもう。
読んでみて
発想からすごいのだけれど、技術者の立場からのアプローチからの検証・改良の努力もものすごい。とかくWebだとアイデア一発でさくっとリリースして万歳となりがちなので、凄く戒められました。そういう調整・改良・向上への執念みたいなのは任天堂の文化として今でも引き継がれているんだなぁと「Wii.com JP – 社長が訊く『Wiiモーションプラス』 」を読んで思いました。
この本は書店には並んでないので、普通には読めないでしょうけれど、最近発売された
任天堂 “驚き”を生む方程式 | |
井上 理
おすすめ平均 |
という本にも、「横井軍平ゲーム館」の内容が多く引用されており、任天堂の岩田社長・宮本茂さん・横井軍平さん・山内前社長たちのエピソードが書かれていてとても面白かったです。
ということで、深澤直人さんの「デザインの輪郭」と、この「横井軍平ゲーム館」が僕の座右の書トップ2です。(もちろん借り物なので返しますけど。)
おまけ
今会社で作ろうとしているものが、自分的には横井さん的だなぁと思う企画があったので、その件をMTLのゆうごさんに話したらゆうごさんも、横井さんの遺作となったワンダースワンのパズルゲーム「GUNPEY」でゲーム廃人になりかけたぐらい「横井さん(&任天堂)すごいなぁ」派だそうで話が盛り上がったんだけど、そのゆうごさんが発案した「調整さん(最近独自ドメインになりました:http://chouseisan.com/)」というWebサービスが凄く好きで、それに憧れて僕は MTL(当時のたたみラボ) で働きたいなと思ったということで、なんだかいろいろと繋がってスッキリしました。
Comments:2
- cosaic 09-05-31 (日) 9:53
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先日のセミナーイベント、お疲れさまでした。
横井軍平さんのゲーム館、ぼくもカシカリたいです。 - tera 09-06-01 (月) 13:23
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cosaicさま
セミナーご来場ありがとうございました!
復刊の要望も多いそうですよ。
http://www.fukkan.com/fk/VoteComment?book_no=6260