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格差社会の中心で友愛を叫ぶ
【最終回】 2010年6月4日
著者・コラム紹介バックナンバー
西川敦子 [フリーライター]

偽装結婚に養子縁組…
「戸籍を売りたい人々」がハマる危険すぎる罠

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 そのためか、人身取引事犯の検挙数そのものは激減している。警察庁の報告書よると、05年は117件だったが、08年は36件だ。

 「法律が厳しくなり、以前とは人身売買の仕組みが変わっているようです。日本人と結婚している女性が増えたことで、よけい実態が見えにくくなっているのでは」と大津さんは言う。

 上記の報告書も「検挙時の被疑者の在留資格別では、“日本人配偶者”の割合が増加している」と指摘する。

 外国人女性が数多く身を寄せるシェルター「女性の家HELP」の利用者は、07年時点で年間大人97人子ども26人。人身売買や暴力から逃げてくる外国人女性が少なくないという。ホームレス状態の人もいる。出身国はタイ、フィリピン、中国など12ヵ国。スマトラ沖地震以降は、インドネシア人も増えているそうだ。

 法務省の統計によれば、日本人と結婚し、在留資格を得た入国外国人の数はここ数年間微減しているものの、約21~23万人で推移している。これに対し、留学生は15~16万人だ。

 もちろん、これはごく一部の外国人妻の話。とはいえ、ひそかな「偽装結婚ブーム」で、問題の“闇”が深くなっている可能性もある。

貸金業者が廃業すると
結婚ブローカーが増える?

 「これからは国際結婚が増えるんじゃないですか」

 こう話すのは、とある元貸金業者だ。まもなく施行される改正貸金業法により、貸金業を営むのに必要な純資産は300万円から5000万円へと、ぐっと引き上げられることになった。そうなれば、彼のように多くの業者が廃業せざるをえなくなる。

 「たいていはヤミ金に流れるしかないでしょうが、結婚関連業界も魅力がある。今どき、金になるビジネスなんてほかにそうない」

 従来から、結婚関連業界には不透明さがつきまとっていた。あくまで一部にすぎないが、中国人女性を積極的に勧める結婚相談所もあれば、裏稼業でデリヘルを行う業者もある、という。

 少子化の時代、健全なビジネスを行ってくれるのなら、大歓迎だが、今後、偽装結婚のブローカーに転向する業者が急増してもおかしくはない状況だ。

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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