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格差社会の中心で友愛を叫ぶ
【最終回】 2010年6月4日
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西川敦子 [フリーライター]

偽装結婚に養子縁組…
「戸籍を売りたい人々」がハマる危険すぎる罠

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 入籍の半年後、男性は相手の女性から150万円を受け取ったという。相場を尋ねると、「だいたい100~150万円」とのこと。

 「金は生活費なんかに遣いました。友人がブローカーにつながっているかどうかって?そんなことはないんじゃないですか。

 自分としても別に不都合なんてありませんよ。デメリットはせいぜいバツイチからバツ2になるくらいですか。こちらで結婚して3年以上、日本に住んでいれば永住権を得られますから。そうなればまあ、たいていは離婚ということになります。

 ただ、今後本当に好きな女性ができて、それが外国人だと困るかなあ。2度続けて外国人と結婚するとなれば、入国管理局も疑いの目を向けるだろうし。じつは今、海外旅行先で知り合った娘が気になっているんですよ。

 ええ、親には入籍のことは一切話していません。そりゃそうでしょう。どうしたって言えっこないですよ……」

興行ビザに代わる
隠れ蓑「国際結婚」

 戸籍ビジネスの代表格ともいえる「偽装結婚」。昔から存在する貧困ビジネスだが、ここにきてひそかに広がっているのだろうか――。

 人身売買禁止ネットワーク共同代表の大津恵子さんはこう説明する。

 「2006年に興行ビザが厳格化されましたでしょう。かわりにさかんに行われるようになったのが国際結婚なんです」

 エンターテイメント活動のための「興行ビザ」は、80年代からアジア女性が来日する際の“隠れ蓑”として、便利に使われてきた。

 だが、シンガーやダンサーとしてやって来たはずの彼女たちが強制されたのは、ホステスやストリッパーの仕事、そして「テンガイ」「ドーハン」といった名の売春行為だ。たいていは驚き、辞めようとするが、そうはいかない。来日に際し、ブローカーから約400万円もの架空の借金を背負わされているからである。暴力や脅迫でがんじがらめにされるケースも多い。

 「ILOでは日本を『人身売買の最大の受け入れ国』と報告。国際的に問題となりました。これを受けて、日本は2004年に人身売買罪を新設、その翌年、人身取引対策行動計画を策定しています」

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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