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大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~
【第15回】 2012年10月30日
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加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

大川小児童の遺族が立ち上がってから4ヵ月
明らかになった真実、隠され続ける真相とは

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 休職中のA教諭は、市教委の説明によると、入院はしていないそうだが、指導主事ですら、面会を主治医に止められているという。遺族からの質問書も、主治医が手渡さなかったという。

 ところが、柏葉前校長は、A教諭の自宅近くの路上で、2011年11月に面会していたことを、2012年10月28日の説明会で突然明らかにした。面会していた事実について、市教委も「全く知らなかった」と驚きを隠せない様子だった。

 これまで市教委は、ドクターストップで、誰も会えないと説明してきた。それなのに主治医が遺族の前に出てきて説明をしたこともなく、市教委はなぜこの主治医に抗議をしないのかも不思議だ。

 市教委は今後、こうした一つひとつの疑問に、どこまで根拠のある説明を遺族にしていけるのだろうか。

 2012年10月24日現在、市教委だけでは検証が行えないとして、文科省や県教委が主導した第三者検証委員会の実現に向けた動きが出てきている。有識者の選定や、検証の方向性など、今後、関係者間での話し合いが進められていく予定だ(詳しくは第14回)。

 文科省の試案では、<事故当日とそれ以前の状況・対応について>は検証の範囲とするが、事後対応については、検証に含めないとしている。しかし、ここで挙げてきたように、解決を阻むような事後対応の繰り返しが、遺族を傷つけている現実がある。

 遺族の負担を増やすような事後対応はきちんと検証をして、事故そのものと同じように、再発防止を図る必要があるはずだ。

 納得のいく検証は本当に実現するのか。裁判での決着ではなく、遺族が望む対話で果たして解決できるのか。大川小の関係者だけでなく、日本中が注目している。

(加藤順子)

<お知らせ>
本連載が基になった書籍『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)が2012年10月24日に刊行されることになりました。同著では、十数回に及ぶ情報開示資料を基に、連載で紹介していない生存者やご遺族、関係者 への取材も追加して大幅に加筆。学校管理下で、大惨事につながった「空白の51分間」は、なぜ起きたのか。その背景にある“見えない魔物”の本質に迫った 渾身の作です。

大川小学校関係者や地域の方、一般の皆さまからのお話をお聞きしたいと思っています。情報をお持ちの方は、下記までお寄せください。
teamikegami@gmail.com(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください)

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加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスター集団ウェザーマップ所属のキャスターや番組ディレクターを経て2008年に独立。防災、気象、科学を中心に様々な形で活動中。2006年よりサイエンスコミュニケーターとして「気象サイエンスカフェ」(日本気象学会、日本気象予報士会)をオーガナイズ。写真と詩の連載『はじまる写真』(ソニーデジタルエンターテインメント)、共著に『気象予報士になる!?』(秀和システム)など。また、東日本大震災により変わり果てた被災地・石巻を巡った『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)の撮影協力も行っている。


大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

東日本大震災の大津波で全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。この世界でも例を見ない「惨事」について、震災から1年経った今、これまで伏せられてきた“真実”がついに解き明かされようとしている。この連載では、大川小学校の“真実”を明らかにするとともに、子どもの命を守るためにあるべき安心・安全な学校の管理体制を考える。

「大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~」

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