米大統領選:オバマ候補が再選果たす-富裕層との対立軸奏功
11月7日(ブルームバーグ):6日投開票が行われた米大統領選挙では、4年前に同国初の黒人大統領となった民主党のバラク・オバマ大統領が共和党候補のミット・ロムニー氏を破って再選を果たした。国内経済に対して国民の不満は高まったものの、政治ポピュリズム(大衆迎合)と周到な選挙戦略を駆使して勝利に結びつけた。
オバマ大統領はシカゴで勝利演説し、「道は厳しく長かったものの、今夜、この選挙でわれわれが立ち上がり、闘って立ち直ったことを米国民はわれわれに思い出させてくれた。米国の最良の日々はまだこれからだということを、われわれは心底わかっている」と語りかけた。
フロリダ州のみの結果判明を残した状態で、オバマ大統領は303人の選挙人を獲得し、勝利に必要な270人を上回った。ロムニー氏の獲得数は206人。
同時に行われた上下両院選挙では、共和党が引き続き下院を制した一方で、上院では民主党が第一党を維持した。このためオバマ大統領は引き続きねじれ現象の議会と向い合うことになり、妥協が成立しなければ、来年早々にも強制的な歳出削減と減税失効が重なる「財政の崖」に直面する。
敗北した共和党のロムニー候補は7日、ボストンでの演説で、「大統領の2期目が成功するよう祈る」と述べ、選挙での敗北を認めた。「このような時期に党派争いのリスクを冒すことはできない」とも述べた。
激戦州で勝利オバマ大統領は米国のために協力する方法をロムニー氏と話し合う意向を示した。「われわれは激しく闘ったが、それはわれわれがこの国を深く愛し、その将来を大切に考えているからだ」と演説で語った。
オバマ氏は接戦のオハイオ、バージニア、アイオワ、ニューハンプシャー、ウィスコンシン、ネバダ、コロラドの各州で勝利を収めた。ロムニー氏が選挙戦終盤に逆転を狙い遊説を行ったペンシルベニア州も制した。ロムニー氏はノースカロライナ州で勝利した。フロリダ州はまだ集計中。
オバマ陣営は1年余り前から、中間層を代表するオバマ大統領に対して、富裕層擁護の姿勢をより鮮明にした共和党という対立軸を打ち出し、これが奏功した。
「運命ではない」オバマ大統領は当選確実が伝えられた後、支持者に宛てた電子メールで、「これは運命でも偶然の出来事でもないことを分かっていただきたい。あなた方がこれを実現させたのだ」とした上で、「今後の任期の残りの期間を通してあなた方の支持に敬意を示すつもりだ」と述べた。
大統領はさらに、自分の勝利は「不利な立場でも、普通の米国民が強大な利権に打ち勝つことができることを明確に示した」と強調した。
オバマ大統領は、ロムニー氏の父親がかつて知事を務めたミシガン州での勝利。自動車業界の公的救済を支持したことがプラスに働いた。ロムニー氏の地元で同氏が知事を務めたマサチューセッツ州でも大統領は圧勝した。
共和党の副大統領候補ポール・ライアン氏の地元であるウィスコンシン州もオバマ氏が制した。大統領・副大統領候補がそろって地元で敗れたのは1972年以来となる。
共和党候補の指名争いが混迷する中でも、オバマ陣営は最終的にはロムニー氏との一騎打ちになるとの見方を崩さなかった。同陣営はプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社出身のロムニー氏を、庶民とかけ離れた資産家で資本主義の権化だと印象付ける作戦に出た。
オバマ陣営のロムニー氏に対する戦略は、共和党候補が決定する前の段階、有権者のロムニー氏に対する印象が固まる前から既に始まっていた。激戦州では夏前からネガティブキャンペーンを展開。ロムニー氏が共同で創設したベイン・キャピタルに買収された会社のレイオフや、ロムニー氏が高所得層のみに認められた税優遇措置を受けたことを示す映像を盛り込んだテレビCMを大量に流した。
失業率一方、ロムニー氏は、高止まりする失業率 を争点に据える選挙戦を展開。積極的に自身に対する世間のイメージを変えようとはしなかった。オバマ政権の下で失業率は3年7カ月連続で8%を上回った。これは月次データの集計を開始した1948年以降で最長。
人種・民族で少数派に属する成人の割合が2008年から11年の間にネバダ州で4ポイント、バージニア州で3ポイント、フロリダ州で2ポイント、オハイオとアイオワ両州で1ポイントそれぞれ増加したこともオバマ陣営の追い風となった。ブルッキングス研究所の人口統計学者ウィリアム・フレイ氏がまとめた人口調査データが示した。オバマ陣営は残る激戦州でも支持者拡大のため、選挙事務所を増やすなどの対策を講じてきた。
コロラド、フロリダ、アイオワ、オハイオ、ネバダ、ニューハンプシャー、バージニア、ウィスコンシンの激戦州8州のうち5州において、9月までの段階で失業率が全国平均を下回っていたこともオバマ陣営に有利に働いた。
オハイオ州歴代の共和党大統領が必ず制してきたオハイオ州では、9月までに失業率が7.0%まで下がった。オバマ政権の公的救済が支えた自動車産業の復活は、オバマ陣営の選挙キャンペーンの目玉の一つとなった。センター・フォー・オートモーティブ・リサーチの10年リポートによると、同州では有職者の8人に1人が自動車産業に直接・間接的に関与している。
今年に入って米経済が改善したことにより、ロムニー陣営が争点として前面に押し出していた失業問題の訴求力が失われた。それでも雇用の伸びが鈍化した今年の春から初夏にかけてはロムニー氏は支持率でオバマ大統領と拮抗(きっこう)していたが、 投票日が近づくにつれて再び雇用の拡大ペースが加速した。
今年10月の失業率7.9%は前年同月比1ポイント低下と、大統領選挙年の同月としては1984年以来最も大きな減少幅となった。レーガン大統領が再選を目指していた1984年10月の失業率は前年同月から1.4%低下した。
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更新日時: 2012/11/07 17:06 JST