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【発明の名称】 色差測定表示装置
【発明者】 【氏名】岩出 芳明

【目的】 色相差を具体的に把握することができ比較色を目標色に調色する場合具体的な指標とすることができる色差測定表示装置を提供する。
【構成】 目標色と比較色の色相を測定する手段(10、11)と、測定された目標色と比較色の色相差を演算する手段(16)と、色相差を色記号を使用した変化量で表示する手段(17)とからなる。色相差は、Lab色度図上の角度差と、ずれの方向を示す符号と、マンセル記号で表した色相位置とで表示される。色相差は色記号を使用した変化量として表示されるので、単なる数値表示と異なり、色相位置あるいは色相のずれの方向を具体的に把握でき、比較色の目標色への調色が容易になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 目標色の色相を測定する手段と、比較色の色相を測定する手段と、測定された目標色と比較色の色相差を演算する手段と、色相差を色記号を使用した変化量で表示する手段とからなることを特徴とする色差測定表示装置。
【請求項2】 前記色相差をLab色度図上の角度差と、ずれの方向を示す符号と、マンセル記号で表した色相位置とで表示することを特徴とする請求項1に記載の色差測定表示装置。
【請求項3】 目標色の明度、色相、彩度の各色属性を測定する手段と、比較色の明度、色相、彩度の各色属性を測定する手段と、測定された目標色と比較色の各色属性の差を演算する手段と、各色属性の差に正負の方向性を付して表示し、かつ色相差を色記号を使用した変化量で表示する手段とからなることを特徴とする色差測定表示装置。
【請求項4】 前記色相差をLab色度図上の角度差と、ずれの方向を示す符号と、マンセル記号で表した色相位置とで表示することを特徴とする請求項3に記載の色差測定表示装置。
【請求項5】 前記明度、色相、彩度並びに総合色差を一括表示することを特徴とする請求項3または4に記載の色差測定表示装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、色差測定表示装置、更に詳細には目標色と比較色の明度、色相、彩度等の色属性を測定し表示する色差測定表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に色には、色の明るさを表す明度、色合いを表す色相、色の鮮やかさを表す彩度の3つの属性がある。比較色(試料色)を目標色(基準色)に一致させるために各属性を測定して色差を求めてその隔たりを演算表示することが行なわれている。従来色の属性を表示するために、図2に示したようにLab色度図が用いられている。Lは明度を示し、最も明るい値を100、最も暗い値を0としている。またLab座標の円周方向は色相を示し、円周に沿って赤(R)、黄(Y)、黄緑(GY)、緑(G)、青(B)、紫(P)等の色相を表示している。更にLab座標の径方向は彩度を示し、円の中心Nでその色の鮮やかさがなくなり(無彩色)、一方円周で最も鮮やかになっている。
【0003】例えば、図2においてTを基準色、Sを比較色の座標位置とすると、1の例では色相が右回りで赤みによっており、また彩度が高い方に移動している。更に、2の例では色相は変化なく彩度は低い方へ移動し、また3の例では色相が左回りで青みにより彩度は変化していない。
【0004】従来、JISの色彩規格として、色の差を定量的に表すために、Lab色度図で明度差(ΔL)と、色相と彩度の混合した差異(彩度差ΔC)、【0005】
【数1】

【0006】から3次元の距離として【0007】
【数2】

【0008】で色差ΔEを表し総合的な要素の色差として表現している。また、色相差ΔHとして、【0009】
【数3】

【0010】を用いている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記ΔEは、総合的な色差を表現しており、色の3要素、すなわち明度、色相、彩度の3属性に分解した評価判断をすることができない。具体的には、ΔLは明度差として把握することができるが、Δa、Δbが色相、彩度を同時に含んでいるために、Δa、Δbからでは、色相差、彩度差を把握することができない。
【0012】また、ΔE、ΔL、ΔCは、色差、明度差、彩度差として数値で求められ色空間上でイメージとして捉えることができるが、ΔHについては色相差が数値だけで表されているだけで、その色相位置や色相ずれの方向が把握できず、何色の方向にどれ程離れているを示しておらず、調色を目的とした場合の指標にすることができない。
【0013】従って、本発明は、このような従来の欠点を解消するためになされたもので、特に色相差を具体的に把握することができ比較色を目標色に調色する場合具体的な指標とすることができる色差測定表示装置を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような課題を解決するために、目標色の色相を測定する手段と、比較色の色相を測定する手段と、測定された目標色と比較色の色相差を演算する手段と、色相差を色記号を使用した変化量で表示する手段とからなる構成を採用した。
【0015】
【作用】このような構成では、色相差は色記号を使用した変化量として表示されるので、単なる数値表示と異なり、色相位置あるいは色相のずれの方向を具体的に把握でき、比較色の目標色への調色が容易になる。色相差は、実施例では、Lab色度図上の角度差と、ずれの方向を示す符号と、マンセル記号で表した色相位置とで表示される。
【0016】
【実施例】以下、図面に示す実施例に従い本発明を詳細に説明する。
【0017】図1において、目標色測定回路10により目標色の明度、色相、彩度の各色属性が測定され、また比較色測定回路11により比較色の明度、色相、彩度の各色属性がそれぞれ測定される。これらのデータは入力回路12、条件判断回路13を介して色値演算回路14に入力され、それぞれ目標色と比較色の明度、色相、彩度の色値が演算される。演算された色値は色値記憶回路15に格納され、更に比較色がある場合には、比較色測定回路により測定を行ない、同様に色値を演算して記憶回路15に格納する。
【0018】記憶回路15に格納された目標色と比較色の明度、色相、彩度から色差が演算回路16により演算され、表示回路17により演算結果が表示される。
【0019】本発明実施例では、演算回路16により演算された目標色と比較色の色差は、Δ[E/L/H(ー>)/C]で表示される。L値は、明度差を示し、+の符号は明るい方向、ーの符号は暗い方向への変化を示す。例えば、図2の例では、比較色の座標位置がS(40、20)、明度がS(60)で、一方目標色の座標位置がT(20、30)で明度がT(55)となっている。この場合、L値は、明度差を示しΔL=5となる。またE値は従来通りΔEで、数2により表され、ΔL=5、Δa=20、Δb=ー10なので、E値=22.9となる。
【0020】H値は、色相差を表し、どちらの色相に変化したかを比較色の角度D2(30°)と目標色の角度D1(60°)の差に基づく値(D2ーD1)*100/180=ー16.7と(目標色相ー>比較色相)のマンセル値=(6.2YRー>6.8R)で表される。+の符号はLab色度図上で逆時計方向回りへの移動を、またーの符号はLab色度図上で時計方向回りへの移動を表している。
【0021】更に彩度差を示すC値は比較色の座標値Sと原点N(0、0)の距離SNと、目標色の座標値Tと原点の距離TNの差を示す値となっており、+の符号は彩度が高い方向へ、ーの符号は低い方向へ移動することを表している。尚、L、H、Cの各値のいずれも100を最大の差としている。
【0022】従って、図2の1の例では、各色差を表示すると、以下の表のようになる。
【0023】
【表1】

【0024】表1の最下行では、色差がΔ[E/L/H(ー>)/C]=22.9/+5.0/ー16.7(6.2YRー>6.8R)/+5.0で表示されている。「22.9」は、総合色差が22.9であることを、「+5.0」は、明度が明るい方向へ5.0ずれていることを、「ー16.7(6.2YRー>6.8R)」は、色相が右回りに16.7変位しマンセル評価で赤みによったことを、また「+5.0」は彩度が高い方向へ5.0ずれていることをそれぞれ示している。
【0025】次に各種の比較色の例を図3に示し、その色相差を求めてみる。図3の(A)は、図2の1と同様で、0≦|D|≦180で、D1=60°、D2=30°、D=D2ーD1=ー30、ΔH=D*100/180=ー16.7となり、色相は右回り方向にずれている。次にTとSの座標のそれぞれマンセル値を求めて、H(ー>)=ー16.7(6.2YRー>6.8R)となる。この色相差の意味は、色相は右回りに16.7移動し、マンセル評価で色相が赤みによったことを示している。
【0026】次に図3の(B)は、0≦|D|≦180でD1=60°、D2=120°、D=D2ーD1=60、ΔH=D*100/180=33.3となり、色相は左回り方向にずれている。次にTとSの座標のそれぞれマンセル値を求めて、H(ー>)=33.3(6.2YRー>5GY)
となる。
【0027】図3の(C)の例では、180<|D|<360でD1=60°、D2=300°、D=300ー60ー360=ー120、ΔH=D*100/180=ー66.7となり、色相は右回り方向にずれている。次にTとSの座標のそれぞれマンセル値を求めて、H(ー>)=ー66.7(6.2YRー>5P)
となる。
【0028】図3の(D)の例では、|D|=180で、D1=60°、D2=240°、D=240ー60=180、ΔH=D*100/180=100となり、色相のずれが最大の正反対方向になっている。次にTとSの座標のそれぞれマンセル値を求めて、H(ー>)=100(6.2YRー>3.8B)
となる。
【0029】上記は、色相差を個々に説明したが、総合差、明度差、彩度差も同様に求めることができる。
【0030】このように色差の要因を各要素(総合差ΔE、明度差ΔL、色相差ΔH、彩度差ΔC)からずれの量、方向が評価でき、調色の指標とすることができる。このように色差表示式として、色の3要素を把握することにより、より人間の判断に近付けることが可能になる。また全てに方向性を示す符号と数値が付されておりより調色が容易になる。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、測定された目標色と比較色の色相の差を色記号を使用した変化量で表示するようにしているので、色相差は、単なる数値表示と異なり色相位置あるいは色相のずれの方向を具体的に把握でき、比較色の目標色への調色が容易になる。
【出願人】 【識別番号】000003399
【氏名又は名称】ジユーキ株式会社
【出願日】 平成3年(1991)7月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
【公開番号】 特開平5−26730
【公開日】 平成5年(1993)2月2日
【出願番号】 特願平3−178563