従来の解釈、法律を正せ
当然日米共同で最大の抑止の態勢を見せなければ、中国の武力攻撃を止めることはできないだろう。この際、米空母と米空軍の決定力を守り、一緒に力を発揮することが必須である。
このため、「集団的自衛権の行使」は当然のこととして認めるべきだ。繰り返すが、戦争を避けるためにも必要だ。また、領海・領空における「領域警備のための武器使用」の法律を早期に作らねば、真の抑止にも、民兵の阻止にもならない。
さらに怖いのは、中国の国防動員法である。動員法によれば、外国にいる留学生も旅行者なども中国の言うところの準戦時、戦時には軍務に服さなければならない。海上民兵も含め、果たして治安維持法で対処できるのかどうか、「対国防動員法」の検討が必要である。
日中の世論調査で、日本人の8割以上が中国に悪印象を抱き、その理由として資源などの確保で自己中に見える、尖閣を巡り対立が続いていることを挙げている。多くの日本人は真実を知りたがり、真の対応を欲しているのだ。
日本の盾と米国のエア・シーバトル構想と一体となれ
抑止・対処の要は、米空母であり米空軍である。特に米空母は決定打である。その空母は一般的に東シナ海に入ることなく南西諸島の太平洋側に展開して戦力発揮の態勢を作るだろう。
先に述べたように、中国は尖閣作戦においても南西諸島も作戦地域として考えるかもしれないし、また、米空母の牽制あるいは攻撃のために潜水艦、ソブレメンヌイ級の艦船を、バシー海峡や大隅・トカラ海峡から迂回させ対艦弾道ミサイルなどと共同して挟撃するかもしれない。
そのようなあらゆる可能性を「想定外」とせず、日本は陸海空統合による南西諸島全般の防衛を考えなければなるまい。従来の陸海空のための防衛力整備や、自己主張を断ち切って、いかに国難たる南西諸島に焦点を当て、この国のために勝つかしかない。
筆者が元西方総監だから言うわけではないが、南西諸島の意義から考えても、架空のシナリオで哲学的な話をしても何の意味もない。
エア・シーバトル構想と一体となるべきだが、一方で米国の国家意思である米陸軍が参戦する可能性は低い。朝鮮半島ではっきりしているが、米国は外国で多くの血を流すことは避けたいと思っている。
まして予算も縮小されていく。素直に考えたならば、海空の充実は当然必要だが、陸自の予算を重点的に削ることは誤りであり、むしろ拡充しなければなるまい。
海空作戦で優越を獲得するためにも陸上戦力は必要不可欠なのだ。陸自が南西諸島作戦で戦力設計をリニューアルすれば陸自の戦い方は画期的に深化するだろうし、今までの欠落機能を見事に埋めてくれるだろう。
陸自の海兵隊化という極論を切り捨て、あくまで高速化、情報化、高威力化などを追求すべきだ。その中に必然的に上陸機能は含まれる。東北の大震災の後に色々と改善事項が議論されたが、着実な具体化を期待する。特に民間輸送を含めた輸送の統合は喫緊の課題である。
最後に、日本も根本的に変わらなければならないが、衝突コースを避けるためには、中国も大国として変わらなければならないだろう。
中国が覇権を取るつもりならば、まず、ローマに学ぶことが必要だ。民衆の声を聴く護民官などは参考になるシステムだろう。
さらに、塩野七生氏は「ローマは勝って譲った。敗者の宗教を認めることは、他民族の存立を認めることだ」と述べている。勝者の寛容と中国古来の徳治政治が一体となれば尊敬されるだろう。
今の中国は他者を気遣う余裕がない。厳しいかもしれないが、尊敬される指標の1つにチベットがある。チベットは独立せず高度な自治を求めている。かって清も自治を認めたばかりか仏教にも帰依した。中国よ。恐れを捨て大人の国へ脱皮してもらいたい。
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