一方、いくら日本が中国に配慮しても、中国にとっては有難い時間稼ぎでしかない。日本も領土問題は存在しないと言うばかりではなく、根拠がはっきり理解できる歴史的経緯を国民に分かりやすく訴え、宣伝戦を挑む時だと覚悟を決めた方がいい。
併せて「民」主体のはっきりと目に見える実効支配を実行しなければならない。そうしないと、いざ尖閣事態になった時に中国の行動を侵略と訴え主導権を取るのが難しくなろう。ここで尖閣の軍事的価値について整理すると、
(1)長江デルタを守る東シナ海の聖域化のための拠点
(2)台湾有事等の際、尖閣に対艦・防空ミサイルを配置することにより先島諸島全域及び台湾北部の制海、制空権を獲得
(3)日中中間線から尖閣は日本側にあることから、日本の主張を崩し、EEZを拡大
(4)沖縄~宮古間の海峡を有事突破するための足がかり
尖閣から南西諸島は戦略的に連動しており、簡単に南西諸島から中国海空軍を西太平洋に突破させたならば、日本の南西諸島防衛のための戦力は流れず、国民の避難もできず、米空母も来援することはできなくなってしまう。
さらには日本の政治・経済の核心である太平洋ベルト地帯を守るものはなくなり、結果、日本はギブアップせざるを得なくなるだろう。尖閣を含む南西諸島は日本にとって死活的に重要な地域である。
安保フォーラムの後で同じメンバーでの夜の会合となった。
昼のフォーラムでも南西諸島の作戦や東シナ海における有事シナリオ、すなわち尖閣有事のことだが、盛んに聞いてきた。
夜もその延長で「南西諸島の作戦はどうするのですか?」「15旅団や西方普通科連隊はどのように作戦するのですか?」「尖閣では自衛隊はどうするんですか?」と直球で聞いてくる。
答えようがないので中国軍に比べたら日本の旅団などは小さなものですよ。と言うと、「そんなことはない、自衛隊は強いでしょう」と言ってくれる。そう言えば、CCTVでは総火演などの映像が頻繁に流れている。一体どこまで研究しているのかと考えさせられた。
そんな折、8月の下旬のCCTVの放送で日本の尖閣の作戦は5段階で実施されるという解説を偶然耳にした。その最初は戦略機動、2番目は防空(空自の配置も含む)、3番目は対艦ミサイルの配置、そして支援体制の確立、最後に尖閣の攻撃と言っていた。
対艦ミサイルの配置とは、米海軍大学の論文を見たり、今回の総火演などを見て考えたのだろう。また、2~4番目は南西諸島における基盤の話をしている。
CCTVは当然中国の検閲が行われているので、日本の反応を見ているのだろうが、中国の尖閣事態とは、単に尖閣諸島地域に限定されることなく、南西諸島も含んで考えているらしい。
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