内陸部へ行っても凄まじいほどの建設ラッシュですごい量のカネが落ちていることがよく分かる。一方で農民は税を免除されているそうだ。
会見した李上将がくしくも個人的意見として、「自由というものは、経済の発展に伴い徐々に得られるものである。中国の場合、まずは、国民を食べさせるという問題を解決してから他の問題を解決していく必要がある。今の中国にとって、領土の平和と安定が最も重要である。平和と安定がなければ、現在の中国の経済発展はなかったと考える」と述べたところに本質があろう。
防御的な国防戦略の意味するものは世界の富の独占による覇権の確立
さて、中国の戦略の考え方であるが、その主張は常に変わらない。中国は、「平和発展の道を歩み、対内的に社会主義の和諧社会、対外的に平和共存の和諧社会の実現を目指し、いかに発展しても永遠に覇を唱えず、軍事的拡張はしない」というものである。そして中国の軍事戦略は「防御的」であるというものである。
これだけ読むと大半の人は本当かと言いたくなるが、中国人は信じて疑わない。しかしここに中国の深謀遠慮が隠されていることを読み解かねばならない。中国にとっては結果、覇権を取ればいいことだ。
防御的軍事戦略にはマクロの目とミクロの目から見る必要がある。
マクロの目で見た場合、中国の説明する米国が覇権国家だという根拠として、「米国は武力により自らの政治的利益・イデオロギーを主権国家に強制的に押し付けようとすること」を挙げ、「中国は軍隊を他国に派遣して押し付けることはしないし、他国から領土を奪うこともしない」と言う。
また、「米国のように強い軍事力を整備して世界に覇権を唱えることはしない」と言う。
確かに中国のやり方は異なる。それは、米国やかつてのソ連のように理念を持って世界を制覇しようとしたやり方ではなく、富を独占することによって、結果、覇権を握ることにあるからだ。
理念ではなく、中国の繁栄と生存のため富を独占することにある。理念がないことで、どこへでも浸透していける利点がある。
その準備段階として1992年に領海法を定め、1995年に「中国は大陸国家であると同時に海洋国家である」と宣言したのである。
そして「真珠の首飾り戦略」と言われるように、アフリカ、ペルシャ湾から中国に至るユーラシアの繁栄の弧の独占に着々と進んだのである。これが明の鄭和が切り開き最大の版図を築いた「中華民族の偉大なる復興」の絵姿だ。
インド洋にまで軍事的な覇権を拡げるまでは少し時間がかかるだろうが、2011年12月に胡錦濤国家主席は、中国海軍幹部を前にして、海洋権益を含めて「拡大する中国の国家利益」を守ることが人民解放軍の新たな歴史的任務の1つとし、戦争に備えよと呼びかけた。
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