大学新設不認可:文科相と首相官邸 認識食い違いが表面化
毎日新聞 2012年11月06日 20時36分(最終更新 11月06日 21時41分)
田中真紀子文部科学相が3大学の新設を不認可とした問題で、首相官邸はこれまで「文科相が最終的に判断することだ」(藤村修官房長官)と静観してきた。しかし、田中氏は6日、野田佳彦首相らから事前に了承を得ていたと「暴露」し、藤村氏が記者会見で否定するなど、認識の食い違いが表面化。野党は7日の衆院文部科学委員会で田中氏を追及する構えで、野田政権はまたも閣僚をめぐる火種を抱え込んだ。
「官房長官からは『大変結構だ』、首相からは『進めてください』という言葉を頂いている」
田中氏は6日の記者会見で、3大学の不認可について首相と官房長官とのやりとりを明らかにした。藤村氏は同日の会見で「大きな考え方の報告を受けたことは事実」としながらも、「了承する立場ではない」と強調。記者団から首相の任命責任を問われると、「どこに、どう責任があるのか」と気色ばんだ。
大学設置を認可する権限は文科相が持ち、首相が判断することは通常ない。しかし、首相周辺によると、文科省の事務方から発表前日に「不認可にすれば訴訟のリスクがある」との警告が官邸にあったという。それでも官邸サイドが介入しなかったのは、言動が注目される田中氏への遠慮も一因とみられ、首相周辺は「閣僚人事の失敗だ」と嘆いた。
岡田克也副総理は6日の会見で「方向性は田中氏の言う通り。ある意味で(認可の)審議が形骸化していた」と理解を示し、建設的な解決を求めた。しかし、3大学の地元は不認可の撤回を求めて猛反発。教育問題は有権者の関心が高く、民主党内からは「田中氏が突っ走ったこと。面倒を見切れない」と冷ややかな声が上がる。
一方、自民党は6日に開いた党文科部会で、3大学の不認可問題について「大臣の裁量権の明らかな乱用」などと批判が続出。脇雅史参院国対委員長は田中氏の辞任を要求し、石破茂幹事長は参院に問責決議案を提出する選択肢も「排除しない」と述べた。公明党の山口那津男代表も「不認可は違法の疑いもある」と批判した。【影山哲也、坂口裕彦】