2012年11月06日

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ、虚淵玄先生インタビュー

2011年テレビ放映されて大きな話題となった「魔法少女まどか☆マギカ」が、映像・音響など一新されて、劇場版[前編]始まりの物語と[後編]永遠の物語の二本立てが全国公開。今回は脚本を書かれた虚淵玄(ニトロプラス)にインタビューをさせていただき、劇場版『まどか☆マギカ』について色々とお訊きしました!取材・構成:かーず(かーずSP

「想定したものの上をいっちゃいましたので、100点を超えました」

「まどか☆マギカ」脚本:虚淵玄(ニトロプラス)インタビュー

―――映画をご覧になった感想はいかがでしたか?

虚淵玄(以下、虚淵):最初に粗編集で『こう繋ぎます』というのを見せてもらったものでまったく異存がありませんでしたので、『お任せします』とお返事したんですが、そしたら、なにかとんでもないものになっていました(笑)

ただの総集編かと思いきや、完全に劇場作品として大成するくらいに描き直されて音響も一新され、素晴らしいものになっていると思います。背景のリテイクもそうですし、想像以上だったのが梶浦由記さんの新規の曲と音響の演出。あれは劇場のために作り直してもらいましたので、そのインパクトが大きかった。もう満点です。というか想定していたものの上をいっちゃいましたので、100点を超えました。

―――オープニングでの、暁美ほむらのスリスリについては?

虚淵:後からデレるキャラだとバレてしまっているオープニング……確かにネタバレなんですが、まあ可愛いからいいんですけどね(笑)

テレビのアバン(序盤の夢のシーン)が無くなった分、実はあのOPが、まどかが劇中で『夢で出てきたような気がする』って言っている、まどかの夢に相当するものだったのかもしれません。その解釈だと、夢の中であれだけイチャついてた女の子が、なんか転校してきて、しかもつっけんどんなことを言っているという風に全然印象が違ってきますよね。

―――劇場版のキュゥべえについてはいかがでしたか?

虚淵:むしろ一貫した悪役になったのかなって気がします。テレビの時は加藤英美里さんもそういうキャラだと思わずに序盤は演じていたと思いますので、その裏表を知った上で演じてもらえたのが違ったのかなと。

まあ、テレビでも端から胡散臭さはありましたしね(笑) むしろ序盤の夢のシーンで契約を迫ってくるキュゥべえのシーンが無くなった分だけ、劇場版は初登場がいきなりほむらにボコられてるあのシーンですから、ひょっとしたらテレビよりも(キュゥべえの印象は)マイルドになっているかもしれませんね。

―――ほむらは、合計何回ループしたんでしょうか?

虚淵:それは自分でもちゃんと設定はしてないんですよ。完全に心が死んでしまうほどの回数はこなしてないし、まだヘタを打つだけの余地があるくらいの回数には留まっていると思いますけど、それにしたって、声のトーンが変わっちゃうくらいにはループしたんだろうなって気がします。

―――ほむらの回想シーンの前に1から10の数字が出ていたので、10回ループしたという意味かと思いました。

虚淵:自分としてはそれは意図した演出ではなかったので、そういう設定に、演出家さんか監督さんがしたのかもしれません。まあ、10回はあり得る数字ですよね。

―――劇場版でも まどかの母親のシーンは、あまりカットされてない印象でした。

虚淵:まどかをヒロイックな存在にできたのは、まず彼女のお母さんがそれなりにヒロイックな女性だったのが大きいと思うんです。それもあって、まどかと母親の重みのあるエピソードがちゃんと残ってくれたのは嬉しいですね。

―――ちなみに先生は、玉子の焼き方やソースか塩かでこだわりはありますか?

虚淵:どっちでも大丈夫です、出てきた物は黙って食べます。多分、和子先生(まどか達の担任)とも上手くやっていけると思います(笑)

―――虚淵先生の周囲では、映画の反響についてはいかがですか?

虚淵:テレビシリーズだと尺がありすぎて観てもらえなかった人たちが、映画になったことで改めて観てくれたという人が結構いました。その為の総集編でしたので、内容も好評をいただいているので嬉しいです。

―――自分が観に行った時は二回とも女性客が多かったのですが、これまで虚淵先生が書かれた作品は男性向けの硬派な作風が多かったです。それらと「まどか☆マギカ」の違いはどこにあると思われますか?

虚淵:今回たまたま女性ばかり出てくる話を書いただけのことでして、(「まどか☆マギカ」と他の作品で)あまり意図して変えている部分は無いつもりなんです。ただ14歳の女子中学生だったらこんな風に行動するんじゃないのかなっていう自分なりの想像の産物を、女性に受け入れてもらえたのは嬉しいですね。

「まどかファースト厨なんていうのも楽しいと思います」

―――映画のパンフレットやスポーツ報知のインタビューにありました、劇場版の次の展開について。いろんな書き手や作り手が同じ世界観で「まどか☆マギカ」を作る、シェアワールド的な構想なのでしょうか?

虚淵:そこまでいったら幸せだなとは思います。

―――例えば「ガンダム」のように、スタッフを変えて色々な新作「まどか☆マギカ」が作られるという展開も?

虚淵「ガンダム」は歴史年表を一本に統一する事が不可能になっているので、そこでシェアワールドとも違う物になっていると思うんですけども、だからといっていけない物になってるわけではなく、「Gガンダム」は『Gガンダム』で楽しいですし(笑)

『まどか☆マギカ』もファースト世代とセカンド世代で『こんなの「まどか」じゃねー』的な議論をやってもらいたいですね。自分は『ガンダム』ではがっつりファースト厨なんで、その辺は大変共感できます(笑)

『否定はしないけど、プラモ作った時に色まで塗るのは一年戦争のモビルスーツだけだぞ』っていう自分の中のルールがあって、『気が向いたらマラサイくらいまでは色を塗ろうかな。これはまだ初代の面影があるからな』みたいに、まどかファースト厨なんていうのも楽しいと思います。

そういう新しい流れを拒絶するような動きはしたくないと思っていて、『これは自分の著作物だ』と一人で閉じ込めるよりは、オープンに広げていく方が企画としての寿命が断然長引くと自分は思います。

―――「まどか☆マギカ」の前と後で、変化があった事はありますか?

虚淵「まどか☆マギカ」以前のアニメに関しては、横に教官が乗ってハンドルを握っていた教習車の段階で、自分はまだ勉強中でした。文芸部門において独りぼっちでハンドルを握ったのは『まどか』が最初だったので、それで12話を書き上げることができたのは凄く大きな自信になりました。

なので『まどか☆マギカ』が大勢の方に受け入れてもらえた事で、もう名刺にアニメライターって書いてもいいのかなというのが、一番大きな違いです。

―――虚淵先生の今後の活動予定について。秋からTV放映されている「PSYCHO-PASS サイコパス」などアニメのお仕事が増えて、ますますお忙しそうです。

虚淵:そうなんですよね、「まどか☆マギカ」以降スケジュールが破綻気味で、すでに詰まっている仕事の量だけでちょっと目からハイライトが消える勢いなので(笑) ただやっぱり今はアニメが面白くてしょうがないっていう気持ちはあります。

アニメスタジオさんの流儀も、それこそProduction I.Gさんシャフトさんではガラッと違いますので、まったく正解が見えてこない、行く先々で違う方法論の冒険が待っているアニメの仕事の面白さに、今は引っ張られている最中です。

―――最後に、皆さんへメッセージをお願いします。

虚淵:『まどか☆マギカ』をまだ観てない人にとっては、たった二回劇場を観るだけで12話の全貌がわかる、大変お得な映画になっています。テレビシリーズを観ていた方も、作画や演出、音響などまったく違う物になっていますので、より深くアニメを観たいと思ってる方にとっては必見だと思います。

テレビシリーズで終わったものが、ちゃんと生まれ変わって、前後編の総集編だけでもこれだけ凄い物になったので、まだまだ『まどか☆マギカ』は続いていけると改めて感じました。そういう意味で、気長に見守ってもらえればと思います。

この先、本当にまったく違う『まどか☆マギカ』になっちゃうかもしれませんけど、その時はファーストまどか厨として意地を張っていただければ幸いですし(笑)、逆にどんどん受け入れてもらうのも勿論ありだと思います。

―――本日はありがとうございました。

取材・構成:かーず(かーずSP) (C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project

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【関連リンク】
シャフト
劇場版「魔法少女まどか☆マギカ」公式サイト / Twitter
脚本:虚淵玄氏のTwitter
キャラクター原案:蒼樹うめ氏のホームページ「a p r i c o t +」
魔法少女まどか☆マギカ - Wikipedia
シャフト (アニメ制作会社) - Wikipedia
虚淵玄 - Wikipedia
蒼樹うめ - Wikipedia



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