<自民党 安倍晋三総裁・先月31日 臨時国会>
「総理は近いうちに解散すると、確かに間違いなくおっしゃった」
先月29日、月曜日に招集された臨時国会。
衆議院解散を巡る攻防の他にも、大きな焦点となっている問題があります。
<野田佳彦首相・先月29日 臨時国会>
「復興予算の使途に、様々な批判が寄せられています。被災地の復興に最優先で使って欲しいという声に、真摯に耳を傾けなければなりません」
東日本大震災復旧・復興のため、政府が積み上げた予算は今後5年間で総額19兆円。
災害対策としては、かつてない巨額の予算です。
ところが被災地以外で復興とは直接、関連が薄い事業に多額の予算が使われているという批判が相次いでいるのです。
京都市左京区にある「国立京都国際会館」。

156,000平方メートルの広大な敷地には、同時通訳設備を備えた7,000人を超える大型の会議室などあります。
1966年の開館以来、数多くの国際会議やイベントなどが行われてきました。
ところが、耐震基準を満たしていないとして、8年前から総額およそ70億円の「通常予算」を使って、耐震工事が行われています。
ところが…
<記者リポート>
「『京都国際会館』では、現在、外壁の耐震改修工事が行われているのですが、今後も続けられるこの工事に、復興予算が投入される予定だということです」
耐震工事が始まっていない、エントランス部分。
ここに限っては、6億5,500万円の復興予算が割り当てられたのです。
なぜ、復興予算が使われたのか。
予算計上した国土交通省に聞いてみると、次のような回答を寄せました。
「本会議場は西日本を代表する国立の会議場であり、近いうちに発生が懸念される地震等の災害に緊急に備える必要があると考え、不特定多数の方々が立ち入る、エントランス部分等の耐震改修について計上したものです」(国交省・近畿地方整備局のコメント)
「復興への便乗」ともとれる国交省の予算の使い方は、他にもありました。
大阪市中央区にある、大阪第一地方合同庁舎。
地下1階に設置されている、自家発電設備の改修工事に3億1,200万円の復興予算が計上されていたのです。

まだ使用可能な設備だということですが、国交省は「発電能力の増強」を理由に、新しいものに取り替えるとしています。
<街の声・女性>
「こういう所に使われてるっていうのは初めて知らされた。ぜんぜん知らなかったです」
<街の声・女性>
「直接役立つんですかね?」
<街の声・女性>
「何かとってつけたような感じがすごいするんですよね」
<街の声・男性>
「まず困ってるとこ助けなあかんのちゃう?まだまだ全然復興進んでないでしょ。被災地のみなさんが本当、気の毒ですよ」
更に、ハローワークなどが入る、奈良県の合同庁舎では…
<記者リポート>
「奈良にある合同庁舎の屋上です。ここでは、太陽光発電パネルを設置するための土台の工事が進められています」

ここでは、災害で停電した場合の対策を緊急にとる必要があるとして、屋上に太陽光パネルを設置するといいます。
割り当てられた復興予算は、5,200万円。
この予算を計上した理由について、国交省は…
「被災により停電が発生した場合には、災害応急対策活動等に支障を来すおそれがあるため、自家発電設備を補完する太陽光発電設備を設置するものです」(国交省・近畿地方整備局のコメント)
<街の声・女性>
「おかしいですね、まったく関係ないんじゃないでしょうか」
<街の声・女性>
「復興予算を太陽光パネルというのは、ちょっと使いみちが違うんじゃないかなと。復興のためのお金をそういう事に使うのはどうかなと思います」
誰もが首をかしげる疑問符付の事業は、全国でも次々と発覚しています。
調査捕鯨を安全に行うことが被災地の水産業の復興につながるなどとして妨害活動を続ける、反捕鯨団体「シー・シェパード」への対策などにおよそ23億円。
被災地を見て日本への理解を深めて貰おうと、外国の青少年との交流事業に72億円。
被災地から遠く離れた沖縄県では、6,000万円をかけて道路の工事が行われています。
宮城県・気仙沼では、潮位が上がると今も道路が冠水するなど、被災地にはまだ十分な予算が届いているとは言えません。
<被災地の住民。男性>
「ちょっと順番が違うのかなと」
<被災地の住民・男性>
「腹立ちますよね、本音で言えばね」
なぜ、被災地の再建とは、かけ離れた事業に復興予算を使うことができるのでしょうか。
被災地の再建とかけ離れた復興予算。
各省庁が予算要求の根拠としたのは、去年7月に政府が決定した復興基本方針です。
「東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く即効性のある、防災・減災のための施策。活力ある日本の再生」。
このような文言が盛り込まれていることで、被災地以外にも復興予算を投じることを可能にしているのです。
19兆円もの復興予算は特別会計で管理され、主な財源は所得税、住民税、などの増税によるもので、特に所得税は今後25年間という長期間に亘って引き上げられることによって、総額10兆5,000億円もの税金を集めるのです。
取材を進めると、この復興予算、税務署にも注ぎ込まれていました。
大阪市の西淀川税務署の耐震工事に4,000万円。

岸和田市の税務署には1,300万円。
いずれも今年から、急きょ始まった工事です。
<近くの住民・女性>
「こんなん別に我慢してもいいん違う。何のためにこんなことするの」
<近くの住民・男性>
「被災された人々の気持ちを考えたら、そりゃ許されることじゃないわな。政治は一体誰の為にあるのかと」
復興予算19兆円のうち被災地向け事業に、昨年度はおよそ15兆円の予算がついたものの、6割ほどしか使われていません。
一方、こうした官庁の耐震化などへの対策費は、5年分の1兆円をほぼ使い切ったといいます。
<岡田克也行政刷新相・先月16日>
「国民の皆様に増税までお願いしてやっている復興事業について、国民の疑念があるようであればしっかりと説明、解明をする」
政府は行政刷新会議で、16日から事業仕分けを行って、今年度の復興予算の使い道を検証するとしていますが、関西などで既に実施されている工事については、そのまま続けられる見通しです。
今回の復興予算について、専門家は厳しい歳出上限が設けられた一般会計とは違い特別会計となったため、査定が甘くなったと指摘します。
<神戸大学 塩崎賢明名誉教授>
「国民のほとんどの人が、あの増税に反対運動しなかったのは、東日本があまりにひどい状態にあるので、多少の増税もしょうがないかな、という心情だと思うんですね。そのお金でこういう庁舎の修繕とか、耐震化とかいうことは、それ自身は大事だとしても、そのお金でやるのかというところは、一番の問題で、大事なことであれば、それなりの予算を別にちゃんと確保してやるべきだと思いますね」
被災地の復興に直結しない事業に、つぎ込まれた巨額の税金。
徹底的な検証がなされない限り、復興のみならず財政再建も見通すことはできません。
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