ネットスーパーの落とし穴、私がキュウリマンになる日
投稿者: 都会汁, カテゴリー: コラム・エッセイ
私はある日取り返しのつかないミスを犯してしまった。一生つきまとう十字架を背負って生きねばならぬ。
私は特にキュウリが好きというわけではないが、同僚の上杉さんからぬか床をもらったので、ビールのつまみにキュウリでも漬けるか…と思い立った。
何となく「自分で漬けたキュウリをつまみにする」事が格好いい事だと思った。私は普段仕事で帰りが遅いので、近所のスーパーは閉店してしまう。
やむなくネットスーパーでキュウリを探す。ユビキタス社会に感謝である。すぐ見つかったので「10」と入力して軽快にエンターキーを叩く。明日には10本のキュウリが届くはずだ。
次の日仕事のパッキン剥がしを切り上げ、早々に帰宅するとちょうど宅配便が来ていた。時間指定通り、優秀な宅配便だ。
しかし様子がおかしい。受け取りの印をついた瞬間から次々運び込まれるダンボール。部屋は瞬く間に埋め尽くされたが、勢いは止まらず風呂場、トイレ、キッチン、玄関までダンボールに占拠された。全てに「Qキュウリ」と書いてある。
ネットスーパーのサイトを確認すると、10「本」ではなく単位が「箱」だった。一箱15キロのキュウリである。また勢いよく注文したがために、ゼロを叩きすぎて100箱注文していたようだ。
ターン!とか格好よくエンターキーを叩いた自分を呪い殺してやりたい。
とにもかくにも我が家は1.5トンのキュウリに占拠されたわけだ。玄関前で呆然とする私を塾帰りの小学生が見ている。キュウリマンの誕生だ。
寒さから私は尿意をもよおした。目測でトイレまでに積まれたダンボールは8箱、トイレ内に入れられたダンボールが5箱。まずこれを片付けねばならぬ。
ダンボールを引っ剥がした私は一心不乱にキュウリをかじった。トイレに行くのも一苦労である。さすがに15キロのキュウリは減らない。かじってもかじってもトイレに近づいてる気がしない。
またキュウリに含まれる水分が私を苦しめる。でも諦めるわけにはいかない。
かじりながら上杉の顔が浮かぶ。上杉は美味しい漬け物を食べてもらおうと私にぬか床を渡した。その結果がコレ。なんだか不思議なものだ。
もはや私がキュウリで、キュウリが私状態。何時間たったかわからないが、トイレの戸をあけてダンボールをこじ開けた刹那、近所のコンビニでトイレを借りる事を思いついた。
私は手に持った二本のキュウリをぬか床に差し込み、コンビニへ向かった。
tokaijiru
2011年12月01日ネットスーパーの落とし穴、私がキュウリマンになる日 http://t.co/DWZ0l5xp
たかはし
2011年12月01日東日本に寄付しろ!
都会汁
2011年12月01日寄付する前に、キュウリに押しつぶされて死にそうです