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大阪都区割り4案 決定先送り…全区長会議

 橋下徹大阪市長が目指す「大阪都構想」を巡り、市域を分割して複数の特別区に再編する区割り案について協議する全24区長会議が5日開かれた。公募区長10人のプロジェクトチーム(PT)がまとめた4通りの素案を全区長案として正式決定する予定だったが、反対が相次ぎ、決定が先送りされた。橋下市長が「尊重しないといけない。大胆な案だ」とお墨付きを与えたPT案に、区長らが「待った」をかけた形で、地域の利害がぶつかり合う区割りの難しさが浮き彫りになった。

調整難航

 「区長の意思決定までたどり着けなかった」

 5日夕、市役所で会議を終えたPT長の清野善剛・生野区長は記者団に、調整を続ける考えを示した。

 素案は24区を5区か、7区の特別区に再編する4案。

 非公開で行われた会議では、「もっとほかのバリエーションを」などの異論が噴出したといい、了承を取り付けられなかった。調整は難航しそうで、11月中に市議会や大都市制度協議会で議論するたたき台がまとまる見通しは立っていない。

住民にも賛否

 慣れ親しんだ区の再編に住民の意見は割れる。

 波紋を呼んでいるのが、24区で税収1位の中央区と2位の北区を、「大阪都の経済を先導する『メガ区』にする」(PTの区長)との狙いで合区する案で、4案中、2案に盛り込まれた。

 うち1案で両区と一緒になる阿倍野区。日本一の超高層ビル「あべのハルカス」の完成を控え、同区商店会連盟の岡山哲煕(てつじ)会長(69)は「ハルカスを生かすためにも北区や中央区と一緒に大経済圏を作って」と話す。

 一方、大阪駅前の再開発に沸く北区と隣接する福島区は、北区と一緒になるパターンは4案中、1案のみ。福島区の豆腐店経営、村上億町(おくちょう)さん(63)は「福島には、北区のオフィス街で働くサラリーマンの居住者も多い。北区とセットにするべきだ」と不満を漏らした。

 生活保護受給者の割合が24区最大で、1人あたりの税収が最も低い西成区は、4案とも隣接区と統合する案が打ち出された。

 西成区選出の市議が「地域性がまったく異なる区と一緒になるのは違和感がある」と合区に反対する一方、同区の時計店経営、高橋幸子さん(76)は「他の区と一緒になって、『西成』のイメージを払拭したほうがいい」と語った。

カギは財政調整

 PT案では、合区後の税収は2〜4倍の格差が出る。特別区は選挙で選ばれた区長をトップに、市町村と同じ位置づけになる。税収の豊かな区と貧しい区の間の財政調整が大きな課題だ。現在は市役所が区間の財政調整を行っているが、都構想で市役所は解体され、調整は特別区同士と、都と区の間での新たな制度が必要になる。

 市議の1人は「区民サービスに直結する財源の話だけに、今後の議論は簡単にはまとまらない」と言う。

 府市特別顧問の金井利之東京大教授(都市行政学)は「難問は財政調整だ。豊かな区から貧しい区にお金を回すのは政治的にも難しく、精緻な制度設計をしないと市民の合意は得られ難いだろう」と指摘している。

2012年11月6日  読売新聞)
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