長崎大の研究結果を独占公開
福島県産の「新米」から放射性セシウム
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■いわき市のホットスポット |
■汚染米が検査をすり抜ける |
■まるでロシアンルーレット |
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被災地で収穫された今年の新米の出荷が始まっている。放射能汚染に立ち向かい、「安全」を追求した人々が丹念に育てた実りの粒たちだ。しかし、残酷な現実がそこにあった。衝撃のデータを公開する。 |
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いわき市のホットスポット
「食卓に上る今年の福島県産の“新米”の中に、放射能に汚染された“高濃度汚染米”が紛れこむ恐れは避けられません」
放射線生物物理学の研究者で、放射性物質測定のエキスパートである高辻俊宏長崎大学准教授はこう語る。その高辻氏の調査によって、今回、米の放射能汚染に関する衝撃の事実が判明した。現在の検査システムを素通りしてしまう可能性のある“超高濃度汚染米”の存在が、初めて明らかにされたのである。
調査対象になった米の産地は、福島県いわき市志田名しだみょう地区。福島第一原発からおよそ30km離れた小さな集落で、原発事故のあとも、行政上は避難区域とされなかった地区だ。けれども、住民による自発的な放射線測定で高い空間線量が計測され、その後、チェルノブイリ原発事故での“避難対象地域”に匹敵するほどの土壌汚染も見つかった。昨年、NHKのドキュメンタリーシリーズで、放射能汚染の“ホットスポット”としてとりあげられ、その後何度も再放送されたので、ご記憶の方もあるだろう。
高辻氏は、その志田名地区での実地調査を続ける放射線衛生学の専門家、獨協医科大学准教授の木村真三氏の依頼を受け、米などの農作物や土壌、水などの放射能汚染を測定してきた。その過程で、衝撃的な“超高濃度汚染米”の存在を発見したのである。
その“ホットスポット”で昨年、試験的に採取された米からは、1kgあたり357Bq(ベクレル)という高い放射性セシウムの数値が測定された。厚生労働省が定める規制値は100Bq/kg。およそ3.6倍もの高濃度汚染である。
高辻氏は、より精密に汚染を調べるため、以下のような測定を行った。汚染米から2つのサンプルを作り、それらを別個に測定したところ、全く同じ米のはずが、一方からは約18gで6.5Bqの高濃度の汚染が測定されたのに対し、もう一方からは1.27Bqしか検出されなかったのだ。疑問を持った高辻氏は、さらに、高濃度のサンプル米をまた半分に分け、それぞれの汚染を測定した。
この作業を何度も重ねていき、最後にはサンプル米3粒が残った。測定の結果、そのうちのひと粒は2.9Bqで、残りの2粒は0.0048Bq。驚くべきことに、約18gのサンプル米がもっていた汚染のうち、なんとおよそ半分の汚染が、0.02gの米ひと粒に集中していることが明らかになったのである。この0.02gで2.9Bqという濃度は、1kgあたりに換算すると約14万Bq/kgにもなる。
これは、放射能汚染が均等に広がるのではなく、ひと粒、ないしは田んぼの中の1本の稲穂など、極端に偏った状態で進む可能性があることを示している。そして、そうした米だけを検査で弾くことは、現在の検査体制では不可能なのだ。
「高濃度汚染米を取り除こうとするなら、米ひと粒ずつをチェックしなければならない。でもそれは現実的に難しいですし、個人が5kg、10kgのお米を買ってきて、その中のひと粒だけ弾いて食べないようにするなどということもできません。高濃度の汚染米を食べてしまうという、ある種“貧乏くじ”を引いてしまう可能性があるわけです」(高辻氏)
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