桐生小6女児自殺から1年 癒えない傷 (上)
時間止まったまま
「教室で何があったか教えて」
【群馬県桐生市】 学習机にともる明かり。
昨年10月23日、自宅で首をつって
亡くなった桐生市立新里東小6年の上村明子さん=当時(12)=の机のスタンドライトを、遺族は今も毎日つける。
父親の竜二さん(51)は
「あの日から時間は止まったままです」。机や遺品はそのままにしてある。
竜二さんや母親(42)は、たびたび明子さんの夢を見る。夢の中で明子さんは笑顔が多い。竜二さんには背中越しに「お父さん」と声をかけ、母親には「ただいま」と玄関に現れた。
母親は「夢でもいいから会いたい」と胸の内を明かす。今年6月の誕生日には変わらずケーキを用意したが、竜二さんは「一日たっても減らないのがさみしい」とうつむく。
小学5年の妹(11)は新里東小に通っている。「妹を
通わせるのはすごく悩んだし、今も悩んでいる」と竜二さん。だが転校を選んでも、いじめにあわないか不安は尽きない。
明子さんは同級生から「臭い」「近寄るな」といった心無い言葉を受け、二学期からはたびたび
給食を一人で食べるようになって孤立を深めた。
遺族は「いじめが原因で自殺したと認めてほしい」と訴えたが、
昨年11月に出た学校の調査結果は
「いじめはあったが、自殺の直接的な原因はわからない」。
納得できずに
同12月、市や県に損害賠償などを求める民事訴訟を起こした。
これまでの
裁判で竜二さんは、
市側が「いじめは深刻なものでなかった」とし、転校が多かった家庭の事情や明子さんの性格などを自殺と結び付けるような主張に心を痛めた。
いじめがあったかどうかすら学校の調査を待たされ、話し合いもままならないから提訴を選んだ。
「私たちの話も聞かずに何がわかるのか」と憤りを隠せない。
当時の
担任教諭から詳しく話を聞きたくても、昨年に
「指導力不足でした」と謝罪を受けたきり、学校に求めた
直接面談の申し込みも断られ、話せないままだ。竜二さんは「担任は苦しんでいないと言えばうそになるだろうが、私たちはもっと苦しい」と対話を望んでいる。
「私たちの時間を前に進めるために、お願いだから
教室で何があったかきちんと教えてもらい、謝罪してほしい」。遺族は葛藤を抱えたまま、日々を過ごしている。
◇
明子さんの死から23日で一年。民事訴訟で遺族と市側の対立が続くなかで、遺族の悲しみは消えず、学校や行政はいじめ対策を強めようと模索している。経緯を振り返り、あらためて課題を考える。
【2011年10月21日 東京新聞】
【写真】上村明子さんの机や遺品などがそのままになっている部屋=桐生市で 桐生小6女児自殺から1年 癒えない傷(中)
測りづらい「効果」
模索続くいじめ対策
「当たり前だが、
子どもの心に、きちっと向き合わなければいけない」
昨年11月、桐生市立新里東小の岸洋一校長は、同小6年だった上村明子さんへのいじめがあったとの調査結果を公表した際、報道陣から再発防止策を問われ、こう答えた。
明子さんの
死後、県内の全小中学校では毎月一度、子どもへ
いじめに関するアンケートを実施。新里東小はさらに、
学校生活の不安などを聞くアンケートも本年度から学期ごとに行っている。
桐生市教委は、子どもや保護者の相談を受ける
学校カウンセラーの数を、明子さんの死後、
2人から10人に増員。本年度は
市内の全小学校18校で週1~3日、相談に応じている。特に新里東小には常駐している。
ただ、こうした対策の効果は測りづらい。市教委教育環境推進室によると、
アンケートによるいじめ認知件数は明子さんの死後、
一時期は急増したが、
現在は自殺前の水準に戻っている。
学校カウンセラーへの相談では、同市の全小学校で4月~9月末まで
児童159人から受けた相談延べ389件のうち、
「いじめ」の相談はゼロ。
「不登校」が237件(75人)、非行や交友関係など「その他」が152件(84人)だった。
担当者は「相談を聞くことでいじめになる前に芽を摘んだととらえることもできるが、学校カウンセラーからの報告で
いじめを察知したことは
まだない」と話す。
また、「
教師が子どもから『いじめられている』と相談を受けた場合も、
すぐにいじめを前提とした指導に入れない」とも指摘。当事者に事情を聴く際も
「先生から疑われている」と思われないようにし、
保護者からは「うちの子がいじめたというのか」と反発されることもある。「子どもの言い分をよく聞き、
本人や保護者に納得してもらうため慎重に判断しなくてはいけない。
神経を使う」と難しさを話す。
子どもたちの相談が「いじめかどうか」の判断も必要だが、それ以上に相談した子が
どれほど困り、追い詰められているか見極めて早く対応することが重要だ。
いじめの研究をしている群馬医療福祉大学社会福祉学部の大野俊和教授は「
相談した子どもが最終的にどう満足したか、その評価が重要」と指摘。
いじめられた子が望む
解決策は「仲直りしたい」や「接触を断ちたい」などいくつかに分類できるとし
「カウンセラーや教師は、解決の選択肢を示すことが大切だ」と話している。
◆あらためて追悼の意 亀山市長 桐生市の亀山豊文市長は21日の定例会見で、昨年10月23日に桐生市立新里東小6年の上村明子さん=当時(12)=が自殺して1年になるのを前に「あらためてご冥福をお祈り申し上げる」と
追悼の意を示した。
亀山市長は明子さんの死後、学校カウンセラーを増やすなど各学校の指導・相談体制を強めてきたと説明。
「できることはやってきたつもり。
相談にもきめ細かく対応しているのかなと思う。今後、このようなことがおこらないよう関係機関と連携していきたい」と述べた。 (中山岳)
【2011年10月22日 東京新聞】
【写真】昨年11月、会見して調査結果を公表する新里東小の岸洋一校長(右)や市教育長(中)ら=桐生市で
桐生小6女児自殺から1年 癒えない傷(下)
第三者委の存在意義は
「学校側や遺族からよく話を聞いた上で事実を解明しないと、再発防止策も進まないのではないか―」
無念の死を遂げた上村明子さんの父竜二さん(51)は、疑念が消えない。
昨年11月、
桐生市教育委員会の鈴木正三委員長(当時)は「再発防止のため、さまざまな角度からさらなる調査が必要」と明言。学校の調査結果を踏まえて明子さんの
自殺といじめの因果関係などの調査を深める意向を示し、
第三者の調査委員会を設置する方針を決めた。
同12月には、
弁護士や精神科医ら五人の委員による第三者調査委員会が発足。
調査委は今年3月、報告書をまとめ
「いじめによるつらい思いが自殺の大きな要因の一つとしても、家庭環境など他の要因も加わり自殺したと判断するのが相当」と結論づけた。
ところが、「公平中立な調査」を理由に
委員長以外の委員の氏名は結果報告まで非公表。
調査内容は今も非公開のままだ。
明子さんの遺族は、委員の氏名や第1回会議が非公表だったことに
不信感を募らせ、調査委への協力を断り、提訴に踏み切った。
調査委が遺族の声を聞かず、いじめや自殺の背景をどう分析したかは分からない。
いじめを受けた子どもが自殺した場合、桐生市のような
第三者調査委員会や外部の調査機関が調べるケースは、全国的にも増えつつある。だが、
調査内容が不透明で
遺族の意見を聞かず、情報開示もされないのなら、事実解明が進んだといえるか疑問だ。
いじめ防止に取り組むNPO法人「
ジェントルハートプロジェクト」(横浜市)は昨年、過去にいじめや学校の重大事故などで子どもが亡くなったり、後遺症が残ったりしたケースで、
被害者本人や家族にアンケートを実施。実際に
第三者機関の調査があった16件の家族らに満足度を聞くと、
9人が「大いに不満」、2人が「少し不満」で、半数以上が不満を持っていた。理由には
調査の経緯が不明、被害者や遺族の意見を聞かれなかったなどが挙がった。
同NPO法人理事の小森美登里さん(54)は「(過去の)第三者調査機関の多くは機能していない。誰がどんな調査をしたか分からないのなら、遺族は結果を信じられない」と指摘。「
自殺・事故直後の初動調査を充実させ、
被害者や遺族、学校が情報を共有できるシステムをつくることが必要だ」と話す。
明子さんの死から23日で1年。
追い詰められて自ら命を絶つ子どもをなくすにはどうしたらいいか。少女の死が残した問い掛けは今も重い。 (この企画は中山岳が担当しました)
【2011年10月23日 東京新聞】
【写真】明子さんの遺骨や写真を前に線香を上げる父親の竜二さんと母親=桐生市で
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