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シンガポール インフラ充実で一番人気
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
三つのビルの上に船を乗せたデザインで有名なシンガポールの高級ホテル「マリーナベイサンズ」。ここから間近の高層ビル「ミレニアタワー」35階のオフィスに、HOYAのシステム統合プロジェクトの司令塔がある。現地で陣頭指揮を執るのが、インド出身のプラビーン・ベヌラオ ビジネスITマネジャーだ。
HOYAは2012年4月から、世界中の拠点で個別に構築していた基幹系や情報系のシステムを7カ所のDCに集約するプロジェクトを進めている。合計約1800台にも上るサーバーは、システム集約やクラウド化により、3分の1以下に減らす方針だ。運用コストは従来比で3割減を目指している。
東南アジア地域のシステムを集約するのが、シンガポールにあるNTTコミュニケーションズのDCである(写真5)。周辺の国のDCと比較したが、災害の少なさ、電力や通信インフラの品質の高さ、英語を話す人材の多さなどが決め手となった(図5)。
「バラバラに構築してきたシステムを同一基盤に移行する作業は非常に難しい。その上でコストを減らして、使い勝手などの品質を維持する運用・サポート体制を築くのも課題だ」とベヌラオマネジャーは気を引き締める。
高コストをクラウドで解決
富士通がシンガポールで提供するクラウド基盤へ主要システムを移行しているのがパナソニックだ。富士通がシンガポールのDCに構築したクラウド基盤を使う。
パナソニックは2013年3月までに、日本と中国を除くアジア太平洋(APAC)エリアの十数カ国・地域で利用するシステムをクラウドに移行する。対象となるシステムは、生産・販売管理などの基幹系からメールなどの情報系まで幅広い。仮想サーバー数で100〜200台規模のシステムがクラウド上で動くことになるという。
パナソニックは自社の半導体工場や地域統括拠点がシンガポールにあったことから、2008年ごろまでにAPAC地域のシステムを同国に集約し終えていた。他の国のDCに比べ、電力や通信インフラの信頼性が高いことや、ITベンダーの中核拠点が集まっておりサポートを受けるのが容易であること、税制優遇措置がある点なども評価した。
ただ従来は、DCを借りて自社所有のシステムを設置するハウジングサービスを利用していた。アジア地域のシステム集約地として一番人気のシンガポールだが、欠点は設備や人材などのコストの高さ。土地代や人件費は今も上昇傾向にある。これまで利用していたDC事業者とはハウジングの複数年契約を結んでいたが、シンガポールでのコスト上昇を理由に契約更改のタイミングで値上げを打診された。
そこで、シンガポールに設置したシステムの総コスト削減に向け、クラウドへの本格移行に目を付けた。これによりITインフラにかかるコストを変動費化。ITコストと作業負荷の引き下げを考えた。
コンペの末、富士通のクラウドを選定。「クラウドの料金体系を条件ごとに細かく設定しており、費用の試算がしやすかった点を評価した」(パナソニックの中西秀明コーポレート情報システム社クラウドコンピューティンググループマネージャー)。ハウジングからクラウドへの移行により、シンガポールでのITコストはトータルで従来比2〜3割の削減が可能と見込んでいる。
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