官民あげたトラフィック対策を
――通信キャリア各社はデータオフロード対策としてWiFiに力を入れています。これに対し、総務省の「無線LANビジネス研究会」では、通信事業者はWiFiに頼らずもっと自社のインフラを強化すべきというスタンスのようです。
宮川 それはちょっと言い過ぎではないでしょうか。全国的にトラフィックが1年で2倍程度増え続けていますが、都内の特に山手線圏内ではそれを上回る約3倍のペースです。2年で10倍近く増える計算で、それに見合った周波数を新たにいただけるなら問題ないのですが、そういうわけにもいきません。
トラフィック対策として、基地局のカバー範囲であるセルを小さくして基地局をより多く設置するセルスプリットを昨年だけでも万単位でやっています。しかし3Gではすでに干渉だらけで街中のセル間隔が100メートルを切っており、それほどパフォーマンスが出なくなっているのでだましだましやっています。
また、フェムトセルなど屋内のデータオフロード対策に設備投資をしようとしても、1社だけでは手間がかかるばかりで難しいのが実情です。地下鉄と同様、キャリア各社が共同でエリア対策もするようにしなければ、数年後にはトラフィック増に対応できなくなると見ています。
――2015年に実用化が予定されているIMT-Advancedでは周波数オークションの導入が検討されています。オークションについてはどのような見解ですか。
宮川 粛々と準備を進めているところですが、これまでオークションを導入してこなかった総務省の姿勢の方が正しいと思っています。国の財源確保のためには仕方ないのかもしれませんが、逆に通信事業者の設備投資意欲は減退してしまい、米国のようなインフラになることを危惧しています。
月刊テレコミュニケーション2012年10月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)