テザリングの解禁については社内で侃々諤々の議論
――9月から開始するLTEサービス「SoftBank 4G LTE」のパケット定額料金は、月額5985円と3Gと比べると高めの料金設定となっています。どのような意図があるのですか。
宮川 社内でもさんざん議論しているのですが、お金のかかる事業だけに、いつまでも「安かろう悪かろう」ではないのではと思います。
巨額の費用を設備投資にかける以上、サービスも「本物」であるべきです。そのためには適正な料金をいただく代わりに、きちんと投資をし、その成果をインフラとしてお客様に還元することが重要であると考えています。
――3Gではスマートフォンの裾野を広げるような安い料金プランを打ち出していますが、LTEでは戦略を転換するのですか。
宮川 幸いなことに、当社では大きな通信障害は起きていませんが、iPhoneを投入した当初は「うちの体力でスマートフォンを扱うべきか」、社内でも侃々諤々の議論を繰り返していました。
これだけスマートフォンを売って行く以上、並行して設備投資に費用をかけなければトラフィックを支えることは無理です。これまでは事業の立ち上げのフェーズでしたが、これからは成熟に向かうフェーズであり、戦略が異なってくるのは当然ではないでしょうか。
トラフィックは予想を上回るペースで増えています。ある時点で米国のように従量課金制を導入することも視野に入れるべきなのでしょうが、1社だけというわけにもいかず、各社とも我慢比べの状況になっていると思います。
――NTTドコモやKDDIと同様、LTEでは、月間のデータ通信量の累計が7GBを超えると利用制限をかける仕組みになっています。こうした規制を設けることで、トラフィック問題を解決できるのではありませんか。
宮川 そうかもしれません。ただ、7GBというのは膨大なデータ通信量です。2~3GBでも一定の時間帯に集中したら、現在割り当てられている周波数の帯域ではとても持ちません。
――イー・モバイルを含む4キャリアの中で、ソフトバンクのスマートフォンだけがiPhoneもAndroidもテザリングに対応していませんが、LTEの本格展開を前に、解禁する計画はありますか。
宮川 考え方として、簡単に「イエス」とは言えません。お客様からいただく料金を高くしてもきちんとした商品を出したいと考えている中で、1台の端末の先に複数の端末が接続し、複数台分のトラフィックが発生しても1台分の課金しかできないというのでは、事業計画を変更せざるをえなくなります。
テザリングを本気で必要とされているお客様は、ごく一握りのユーザーだと認識しています。今後、テザリングを求める声がもっと大きくなり、さらに車の中でつながる端末がWiFiになるなど利用シーンが広がるようであれば、あらためて検討します。
月刊テレコミュニケーション2012年10月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)