インタビュー

ソフトバンク宮川専務 「900MHz帯でドコモとau超える。AXGPは一番の戦力に!」

聞き手◎土谷宜弘(月刊テレコミュニケーション編集長) 2012.11.05

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ソフトバンクモバイルは7月25日、900MHz帯でサービスを開始した。集中的な投資により当初の計画を前倒しして、2014年3月末まで計画の実現を目指す。「設備投資にお金をかける以上、サービスも本物であるべき」と責任者の宮川氏は意気込みを見せる。

PHSは音声に特化して継続

――ソフトバンクグループ全体では、3G、LTE、PHS、AXGPと複数のネットワークを持つことになりますが、今後はどのように使い分けるのですか。

宮川 まず900MHz帯については携帯電話事業に参入したときから「何としても取るぞ」と決めていました。結果的に8年かかりましたが、ようやく手に入れることができました。今後は900MHz帯がメインになりますが、移行が完了するまでは上下5MHz幅ずつしか使えないので、当面は隙間を埋めるような形で使います。

3Gで使っている2GHz帯は4波あり、今年はそのうち1波をFDD-LTEに切り替えています。W-CDMAからの移行なのでソフトウェアをアップデートするだけで意外に簡単ですが、山手線圏内のようにトラフィックが多いエリアでは900MHz帯の電波を出して5波にして3Gユーザーを収容してから2GHz帯の1波を落としLTEに切り替える作業が必要になります。一方、東京以外の地域は余裕があるので、一気にLTEに展開します。来年からは、さらにもう1波をLTEに切り替える予定です。

Wireless City Planning(WCP)が展開するAXGPの2.5GHz帯についてはきっちり作り込んでおり、現在は約1万3000局になっています。

――AXGPは下り最大110Mbpsと現状では他社のネットワークと比べても圧倒的に高速ですが、どのように評価していますか。

宮川 AXGPは通常のスループットも優れており、今でも30Mbps近く出ています。東京・銀座などで実験するとよくわかるのですが、データ転送能力はFDD-LTEなど他のネットワークと比べてはるかに高く、中長期的には一番の戦力になると見ています。

LTEのチップセットはFDDとTDDの両方に対応することも多く、AXGPが利用できる端末の調達も比較的容易になると思います。

――PHS事業は、ソフトバンクグループの中で航空業界のLCCのような位置づけになるのですか。

宮川 PHS事業については、社内でもいろいろな考えがあります。現在は順調に加入者が増えていることから、事業を継続する方向で社内も同意しています。

ISDNコードレス電話を源流とするPHSは、本来のポジションに戻して音声に特化しようと考えています。月額980円で他社の携帯電話や固定電話への通話料が無料になる「だれとでも定額」はウィルコムのメンバーが発案したのですが、これに反対しなかったのもそのためです。

ただ、設備の8割以上が老朽化しており、それをどうするかが悩みの種でした。局の数が多いだけに入れ替えるのも大変です。そこでWCPのAXGPの基地局を展開する際、PHS基地局は新型機に替えています。少し時間はかかりますが、きちんと設備更改を行っています。

また、音声サービスを本格展開するにはカバレッジがやや足りないので、地方では900MHz帯の基地局にPHS基地局も付けることで、エリアを広げていこうとしています。

――いずれ各キャリアの安いVoLTE(Voice over LTE)サービスが始まると、PHSは影響を受けるのではありませんか。

宮川 長い目で見たときに、VoLTEよりもコスト的に安くなければPHSの存在意義がなくなりますが、現状では高くなっています。もう一段コストを下げるにはハード単価を見直すことが必要で、京セラにもハードの改造をお願いしています。

著者プロフィール

宮川潤一(みやかわ・じゅんいち)氏

2006年11月ソフトバンクモバイル取締役専務執行役・技術統括(CTO)。07年6月ソフトバンクモバイル取締役専務執行役員兼CTO(現任)、ソフトバンクBB取締役専務執行役員(現任)、ソフトバンクテレコム取締役専務執行役員(現任)。2010年8月ウィルコム管財人代理(現任)、同年10月Wireless City Planning取締役COO(現任)、同年11月ウィルコム取締役(現任)
 

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