PHSは音声に特化して継続
――ソフトバンクグループ全体では、3G、LTE、PHS、AXGPと複数のネットワークを持つことになりますが、今後はどのように使い分けるのですか。
宮川 まず900MHz帯については携帯電話事業に参入したときから「何としても取るぞ」と決めていました。結果的に8年かかりましたが、ようやく手に入れることができました。今後は900MHz帯がメインになりますが、移行が完了するまでは上下5MHz幅ずつしか使えないので、当面は隙間を埋めるような形で使います。
3Gで使っている2GHz帯は4波あり、今年はそのうち1波をFDD-LTEに切り替えています。W-CDMAからの移行なのでソフトウェアをアップデートするだけで意外に簡単ですが、山手線圏内のようにトラフィックが多いエリアでは900MHz帯の電波を出して5波にして3Gユーザーを収容してから2GHz帯の1波を落としLTEに切り替える作業が必要になります。一方、東京以外の地域は余裕があるので、一気にLTEに展開します。来年からは、さらにもう1波をLTEに切り替える予定です。
Wireless City Planning(WCP)が展開するAXGPの2.5GHz帯についてはきっちり作り込んでおり、現在は約1万3000局になっています。
――AXGPは下り最大110Mbpsと現状では他社のネットワークと比べても圧倒的に高速ですが、どのように評価していますか。
宮川 AXGPは通常のスループットも優れており、今でも30Mbps近く出ています。東京・銀座などで実験するとよくわかるのですが、データ転送能力はFDD-LTEなど他のネットワークと比べてはるかに高く、中長期的には一番の戦力になると見ています。
LTEのチップセットはFDDとTDDの両方に対応することも多く、AXGPが利用できる端末の調達も比較的容易になると思います。
――PHS事業は、ソフトバンクグループの中で航空業界のLCCのような位置づけになるのですか。
宮川 PHS事業については、社内でもいろいろな考えがあります。現在は順調に加入者が増えていることから、事業を継続する方向で社内も同意しています。
ISDNコードレス電話を源流とするPHSは、本来のポジションに戻して音声に特化しようと考えています。月額980円で他社の携帯電話や固定電話への通話料が無料になる「だれとでも定額」はウィルコムのメンバーが発案したのですが、これに反対しなかったのもそのためです。
ただ、設備の8割以上が老朽化しており、それをどうするかが悩みの種でした。局の数が多いだけに入れ替えるのも大変です。そこでWCPのAXGPの基地局を展開する際、PHS基地局は新型機に替えています。少し時間はかかりますが、きちんと設備更改を行っています。
また、音声サービスを本格展開するにはカバレッジがやや足りないので、地方では900MHz帯の基地局にPHS基地局も付けることで、エリアを広げていこうとしています。
――いずれ各キャリアの安いVoLTE(Voice over LTE)サービスが始まると、PHSは影響を受けるのではありませんか。
宮川 長い目で見たときに、VoLTEよりもコスト的に安くなければPHSの存在意義がなくなりますが、現状では高くなっています。もう一段コストを下げるにはハード単価を見直すことが必要で、京セラにもハードの改造をお願いしています。
月刊テレコミュニケーション2012年10月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)