(※本インタビューは、ソフトバンクがテザリング解禁やイー・アクセスおよび米スプリント・ネクステルの買収を発表する前の9月上旬に行われたものです)
――CTOとしてこの間、インフラ建設の責任を持ってきましたが、7月25日から念願の900MHz帯のサービスが始まりました。
宮川 900MHz帯の設備投資に会社として2年間で1兆円もの金額を投じるので、結果を出さなければならないと強いプレッシャーを感じています。
総務省に提出した計画書では2017年3月末に基地局4万1000局、エリアカバー率99.9%を目指すことになっているのですが、できるだけ2014年3月末までに一通り決着をつけたいと考えており、社内向けにもそうハッパをかけています。
――2012年度は1万6000局を上回る基地局を設置する方針ですが、進捗状況はどうですか。
宮川 実は総務省から周波数をいただく1年前から、獲得を前提に計画を立てていました。周波数が割り当てられた時に「ありがとうございます。これから本気で取り 組みます」というのでは愚の骨頂だと思ったからです。ドコモやKDDIがすでに持っているネットワークに追いつき、追い越して3社の中で1番になるような 計画だと自負しています。
2年という短い期間で集中的に投資をするため、機材を一括購入したり、工事の回転数を上げたりしていますが、ばらばらにやると1兆5000億円ぐらいかかる計算です。
も ともと持っている鉄塔をすべからく利用しつつ、加えて新しい鉄塔も次々に建てています。通建業界で年間を通じて建設できる鉄塔数には限度があるので、新た にゼネコンを使いコンクリートポールを建てています。通常のコンクリートポールは高さが25メートルですが、それではちょうど樹木にひっかかってしまうの で、高さ30メートルのコンクリートポールも作っています。沖縄で実験したところ、台風の影響も受けませんでした。
――ドコモやKDDIを超えるというのは、どのような指標でですか。
宮川 我々の指標は、お客様が使いたい時に発着信できるかどうかです。お客様が来ない場所まで広げるつもりはありませんが、ドコモかKDDIのどちらかがカバー しているエリアは当社の電波も入るように設計しています。お客様の行動範囲は広く、しかも各社のカバーエリアは少しずつずれているので大変ですが、これが できれば当社のエリアが一番広くなります。ただ、いったん完成しても、お客様の声を聞いて、やり直しが発生することもあると予想しています。
――900MHz帯の基地局建設は大都市中心で地方を軽視していてつながらないとの指摘があるようです。
宮川 すでに北海道から沖縄まで全国で一通り電波を出しています。地方軽視で東京が多いかというと決してそんなことはありません。むしろ都内では同時並行でLTEの基地局建設も進めているので人手が足りず、工事に手こずっているぐらいです。
月刊テレコミュニケーション2012年10月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)