“九十一日目”
俺達は昨日の昼に森を出発した。
休む事無く動く事が可能な骸骨百足――そのままだと流石に目立ち過ぎる為、かなり変わった自走する帆馬車風にしている。これでも目立つが、骸骨百足そのままよりはマシ、か?――を本気で走らせていれば、森を抜けた先にある広大な草原を踏破し、丘陵地帯を越え、山道を抜け、目的地である防衛都市≪トリエント≫に続く街道に到着していたかもしれない程の時間はあった。
が、俺達は草原にある村で一夜を過ごしたので、未だ草原に居る。
泊まった村は“クルート”と呼ばれ、人口は約三百人ほど。一応農業もしているがそれは最低限度のモノで、基本的には俺達が生まれ育った森、人間達からは“クーデルン大森林”と呼ばれている場所で採れる良質な木材――ココでもベルベットのダンジョンに集まっていた精霊が作用してか、精霊の力の名残りがある古木があるのだそうだ――を使って普通とは一風変わった椅子や楽器などを製造し、それを街で売って収入としているのだそうだ。
製品を見せてもらったが、見事なモノだった。僅かにだが精霊の力が宿っていたので、金持ちなら一種のステータスとして購入しているのも頷ける。【吟遊詩人】など楽器を使う職業持ちなら、普通よりも性能のよいコレを買い求める者もいるだろう。
本来ココは周囲の草原のように何も無かった場所だったらしいが、森から採れる良質な材木を求めて腕に自信のある職人が集まって集落ができ、そしてその職人に弟子入りする人間が増えた結果造られた、所謂職人の村、と言った所である。あと数年もすれば規模はもっと大きくなるだろう。
職人の中には貴族専門の商売をしている名人が何人も居るので、顧客の貴族の取り計らいで村の警護を担当する人造魔法生物【守人】――早い話が、鉄で製造されたゴーレムである。実力はオーガ未満ホブ・ゴブリン以上とそこまで強くは無いが、鉄製なので耐久値が非常に高い――が五体ほど居る。それに加えて外からの脅威に対する備えとして、物見やぐらに壕や木壁なども設置されていた。
赤髪ショート達が言うには、この世界では安全度と言う意味でかなり恵まれた環境にある村の一つだそうだ。
しかしこれだけの村ならふらっと立ち寄って――俺がオーガであるが故に一悶着あったがそれは省略する。それと、目立つ黒い体表はベルベットの遺産の一つである【変身の腕輪】で普通のオーガと一緒な茶色に変えた。後でリングを喰おうと思う――ご近所の挨拶をし、分体を埋め込んで通信機能を持たせた名刺ならぬ名鉄を渡し、そのまま都市に向かって出立していただろう。
そうしなかったのは、この村に最近一つの問題が発生し、村人たちが困っていたからだ。
問題と言うのは、以下の通りとなる。
この村は村ができた十年ほど前から半年に一度女の奴隷を数人か、あるいは食料や武器などを一定量森に住むオークの氏族に献上する事で森の中から安全に良質の木材を得ていた。森のモンスター達から、オークが守ってくれていたからだそうだ。
村ができた当時はそうする事が一番都合が良かったらしく、それが現在まで続いていた訳である。
しかしながら最近オーク達が契約を守らず、それどころか伐採中に襲ってくるようになり、そのせいで三人ほど弟子入りしていた若い娘が攫われてしまった。そればかりか、最近では村にも何度か襲撃があった。
オークは【守人】なら十分殺せる程度のモンスターではあるが、如何せん数が多かったそうだ。【守人】が壊される事こそないが、五体だけの【守人】だけでは村全体をカバーできず。村を守る為に村人達は困惑しながらも武器を持って戦い、その結果としてまだ死者こそ出ていないが怪我人は続出するし、畑は荒らされ、材料となる良質な木材を安全に得られなくなった。
この十年間ずっと友好的だったオークが何故このような蛮行を、と村人は戸惑い、やはりオークはモンスターでしかないのか、という思いを抱いたそうだ。
まだ木材には余裕があるが、それもこの状況が続くのなら納品期間などに差し支えが出てくるだろうし、最悪顧客が遠のいて、村が寂れてしまうと言う。そうなれば廃村である。
歴史が浅く、殆どの村人が生まれ育った村ではないが、それでも暮らせば愛着が湧く。開拓当初から十年も暮らしていた古参の職人達ならば尚更だ。廃村とするには悔しく、職が無くなるのを避けたいのは人間として当然の考えだろう。
そしてそうなるくらいなら、と近々オークの討伐依頼を総合統括機関に出そう、といった所まで話が進んでいたそうだ。
つまりだ、うん、この村の危機的状況の根本的な原因は俺達にあると言う訳だ。
現在の俺達の本拠地は、かつてオーク達のモノだった。それを俺達はオークを殺す事で奪った。その時にオークの主力、というかリーダーやメイジなど群れの頭脳を残らず殺し、喰らっている。
そうした結果残ったのはあの時採掘場に居なかった、つまりオークの集落にいたオーク達であり、分体で調べた結果、あまり知恵の無いオークだけが残ったらしい。クルート村を襲撃した際、【守人】や村人などによって何体か殺されて数が減りはしたが、まだ三十体程生存しているのも確認した。
もう少し知恵の回る個体が居れば結果は違ったのかもしれないが、事実として、今までリーダーやメイジが決めていた役割や食料配分はそれ等が死んだ事で崩壊し、本能のままに動き、無計画な暴食により食料が無くなり、食糧不足で困るようになった、と言うのは妥当な流れだろう。
オークは力は強いが気配を消すなどの技能は拙いので、気配に敏感な森の動物やモンスターを集落にいるオーク全てが飢えないだけ確保するのは困難を極めたろうというのは、想像にし難い事ではない。
最近のオーク達は痩せてきていた。碌なモノを喰えていないのだろう、とはその姿でも判断できた。
そんな感じで切羽詰まった残りのオークは、とにかく生きる為に人間から略奪行為をするようになった。森の獣よりも、人間を狩る方が遥かに楽だからだ。
畑の作物も手に入るので、尚更だっただろう。
オークは村を襲った。
とまあ、そんな感じで、原因は俺達に、特に俺にある。
俺も、流石に見ず知らずの村人を巻き込んだまま問題を放置するのは忍びない。原因が俺にあるのだから尚更だ。それに、と言うかコッチが本音なのだが、恐らく依頼が出されれば拠点の現状が外に漏れるだろう。オークの採掘場から発掘された精霊石は、偶にこの村に卸されていた事から確実に洞窟は探され、調べられるだろう。
精霊石は貴重だ。売る所に売れば、莫大な金になる。上質なマジックアイテムの素材としても需要がある。そんな金の成る木を、人間が見逃すとは到底思えない。今まではオークとの契約によって調べずに情報を秘匿していたそうだが、それも今は過去の話だ。
俺としても、探られるのだけは避けたい。拠点はまだまだ要塞化計画の途中なのだ。情報は可能な限り洩らしたくない。拠点は秘密であるに越した事は無いのだ。
と言う訳で、昨日俺はこの村の村長と話し合いをし、木々の伐採の際の護衛に関する契約の取り決めなどを決めたりして時間が無くなり、一泊した訳である。
オークの時のように裏切られるのではないか、とも思われはしたが、そこは赤髪ショート達が説得してくれた。やはりこう言った時に同族の言葉は参考になるのかもしれない。無料で怪我人の治療をした事も要因の一つではあるだろう。
とにかく、クルート村との契約は成された。幾つかの約束事と、一応今は短期契約とし、様子を見て正式な長期契約を結ぶ、と言う話で片が付いた。精霊石の探索はしてはならないと決めたので、とりあえずが大丈夫だろう。約束を破れば村はどうなるか保証できない、と村長には脅しを入れておいた。
報酬などでは大分譲歩しているので、これくらいは良いだろうさ。
問題が解決したので、朝食を貰い、俺達は村を出立した。
契約が成された時点――つまり昨日の夕方くらいだ――で待機組に指令を飛ばし、数時間後には生存していたオーク達は全て焼き豚となっているので、オークについての問題は解決している。
奴隷にせずに殺したのはオーク程度の奴隷は今は必要ないからだし、オークは喰うと結構美味いので、拠点防衛の為の精力を養う為に喰わせたわけだ。
そして攫われたという三名の女性――【性欲豚】と俺が以前言ったように、あとあのアビリティを得たようにアッチ方面はまさに底なしで、結構汚されていたが、まあ、それは村人がどうにかするだろう――を保護したので、今日の昼ごろにホブ・ゴブリンメイジに率いられたゴブリン十ゴブの総数十一ゴブが村に挨拶する時に連れて来させる予定である。
信頼は、コレから勝ち取っていけばいい。
あと、オークに献上されて生き残っていた女奴隷数名はコチラで引き取る事にした。
以前よりも生活環境はいいと思う。
幸先は、まあまあ良い、と言えるだろう。
そして骸骨馬車に揺られながら腕輪は喰いました。
【能力名【変身】のラーニング完了】
取りあえず、体色だけ変化させておこう。赤い刺青はそのままだが。
“九十二日目”
さっさと都市に行く事は止めた。じっくり周囲の地形を調べたり、モンスターを喰ったりする事に力を注ごうと思ったからだ。
現在地は草原を抜けた先にある丘陵地であり、ココでは草原で何体か殺して喰ったバイコーンに加え、サイとバッファローとイノシシを混ぜ合わせた四メートル程の大きさがある“ボルフォル(仮称)”に、二メートル程の蛇の胴体の中心部に三十センチ程の赤い亀の甲羅を付けた様な“タートルスネーク(仮称)”、額からニ十センチほどの鋭い刃を生やしたホーンラビットの上位種だろう“ブレードラビット(仮称)”、人間の腕と足を鳥に変えた様な“ハーピー(仮称)”など、今まで遭遇した事の無い種族が多く居る。
喰えばまだ得た事の無いアビリティを得られるだろう。楽しみである。
ただ、森のように隠れる事ができる場所は多くない。ココで死角から隠れて近づいて奇襲をするのは、俺やダム美ちゃんは兎も角、赤髪ショートには難しいだろう。
そう判断したので俺とダム美ちゃんが魔術によって先制攻撃を仕掛け、標的が怯んだ隙をついて鬼熊になったクマ次郎に赤髪ショートと共に跨って接近する事にした。
ダム美ちゃんの≪使い魔≫であるトリプルホーンホースは諸事情によって拠点に残してきたので、オルトロスとなったクロ三郎に跨っている。
全て俺一人で終わらせても良いのだが、そうするとダム美ちゃんや赤髪ショートやクマ次郎達に経験値が入らないから、コレが一番良かった。
ただ、ダム美ちゃんが赤髪ショートを羨ましそうに見ていたのは何故だろうか。
最初の得物はボルフォルの群れだった。数は十頭。一頭くらいは≪使い魔≫にして骸骨百足を牽引するカモフラージュとして使おうと決めた。
いや、村に立ち寄った時に骸骨馬車はやはり驚かれたので、少しはマトモに見えるようにしようかと思ったのだ。別に荷台で寝転がっていたクマ次郎でも良かったのだが、有事の際には騎獣として使うので、止めておいた。クロ三郎は遊撃手として有能なので、そちらは乗るよりも自由に殺させた方が効率がいいのだ。
話を戻すが、ボルフォルを狩る事に成功した。
赤髪ショート達に聞いた所、ボルフォルの角は薬の素材として高額で売れるらしいので剥ぎ取った。
肉も売れるそうだが、取りあえず朝飯として五頭ほど喰いました。
【能力名【粉骨犀身】のラーニング完了】
【能力名【知覚鈍麻】のラーニング完了】
喰った数と量はそこそこあったが、俺よりも弱かったので得られたアビリティは二つだった。まあ、こんなモノだろう、と思う。二つとも有用そうなので、特に気にはならないし不満も無い。
と言うか、肉が極上過ぎて不満などある筈がない。焼き肉にしたのだが、口に入れた瞬間溶けるようなあの食感、広がる肉の旨味、堪らん。見た目に反してこの美味さ、詐欺だろう、と言っても仕方がないと思うのだ。
むしろボルフォル肉マジウマー、と吼えて当然だと思うね。
食事中に血で造った分体を走らせ、脳内地図を埋めていく事も欠かさない。食後は≪使い魔≫にしたボルフォルが骸骨百足を牽引できるように形を変えたりした後、丘陵地を進んでいく。
しばらくすると、ブレードラビットを見つけた。ホーンラビットよりも大きく、鋭い武器を持ったブレードラビットはしかし、俺やダム美ちゃんからすると軽く踏み潰せる雑魚も良い所なので、赤髪ショートに狩らせる事にした。
俺はその様子を鍛冶師さん達と一緒に、父親エルフから貰った紅茶を飲みながら見守る事に。
ブレードラビットは案外素早いようだ。短距離ならば赤髪ショートが惨殺していたアカシカなどよりも速く動いている。その速度と奇妙な軌道を描く動きに翻弄されて、赤髪ショートの身体にはすれ違いざまに四肢に小さい傷が増え、血が流れている。
その度に姉妹さん達から小さな悲鳴が上がるが、赤髪ショートは焦る事無くブレードラビットを観察していた。確かに速度には苦戦しているが、どれも掠り傷でしかないし、一度も致命傷を受けていない。日々の訓練の成果の表れだろう。
一分程でブレードラビットのスピードに慣れた赤髪ショートのグルカナイフが振り下ろされ、それはブレードラビットの頸部を正確に捉え、肉も頸椎も纏めて切り裂いた。
ゴロリと転がった頭部と胴体を拾い、赤髪ショートがコチラを振り返る。俺は頷いた。それを見て、死体を赤髪ショートは喰いだした。生で、である。額のブレードは、煎餅のように喰われていた。
血抜きもしていないのでボタボタと溢れる鮮血が赤髪ショートの口や革鎧を赤く染めていく。
結構スプラッタな光景に、流石にクールな錬金術師さんも息を飲んだのが分かった。
それを見て、俺は『アレは赤髪ショートの【魔喰の戦士】による副作用を抑制する為にも必要な行為の一つで、病気になる事は無いから大丈夫だ』と鍛冶師さん達に言ったのだが、『いや、そうじゃなくて……』と呆れられた。
そしてクスクスと笑われてしまった。
何故だ。
まあ、良い。ブレードラビットを喰った事で能力値が上がったー、と喜んでいる口周りを赤く染めた赤髪ショートの頭を撫でて癒されたので、気にしないでおこう。ちなみに革鎧に付着していた大量の血は【水流操作能力】を使って綺麗に吸い取ったので跡形も無い。
昼になって、タートルスネークの住処を発見した。どうやらタートルスネークは蟻などのように地面を掘って巣穴を造るらしい。奇怪な習性だが、【反響定位】で調べた結果結構な数が中で眠っていたので、一網打尽とする事にした。
【地形操作能力】を使い、眠っているタートルスネーク達を一匹残らず外に押し出す。勢いが強過ぎて天高く飛び上がったそれ等の首を、俺とダム美ちゃんと赤髪ショート、それに一緒に連れてきていた鬼人三名の総数六名で手分けして切り落としていく。
鬼人の種族は【疾風鬼】と【灼熱鬼】、そして最後の一人が【幻想鬼】だそうだ。
直接戦闘系ではない【幻想鬼】は首を刎ねるのにもたついていて、赤髪ショートの方が多く狩れていたってのは、まさに蛇足である。
タートルスネークは甲羅が高額で売れるらしいので、甲羅に傷がつかない様に気をつけた。終わって数を数えた所、タートルスネークの数は八十八体だった。その中の三十八体は俺が殺していた。
赤髪ショートには速すぎだと呆れられたが、鍛冶師さん達が凄かった、と興奮しながら称賛してくれたので気分が良い。
回収した甲羅をアイテムボックスに収納し、蛇肉はかば焼きにして喰う事に。
ナイトバイパーではできなかったかば焼きは、大層美味しかったです。エルフ酒との相性は抜群だった。また喰いたいね。というか、絶対に喰ってやると心に決めた。
【能力名【殻に籠る】のラーニング完了】
【能力名【休眠】のラーニング完了】
味は良かったが、得られたのは微妙なアビリティだった。甲羅は絶対に高額で売ってやる。
本当は空を舞っているハーピー達も喰いたいとは思ったが、ダム美ちゃんや赤髪ショートは兎も角、鍛冶師さん達の精神衛生上良くないと思い、居ない時に喰う事にした。今は我慢の時である。
午後三時くらいになると、もういいか、と思ったので俺達は丘陵地を過ぎた先にある山道まで行く事となった。
既に丘陵地は分体を走らせてマップが完成しているので、特に心残りも無い。
さて、山道ではどんなモンスターがいるのやら。
“九十三日目”
山道には主に、最も短いが困難な崖沿いの道、危険度も距離も中間に位置する基本的で幅広い普通の山道、最も危険度が低いがその分長い川沿いの道、と言った三ルートがあるそうだ。
そして当然な事だがその中から俺が選んだのは最も短いが困難な崖沿いの道である。
困難、というのが道が他よりも険しいと言う事もあるが、何より、この崖にはハインドベアーのような周辺最強種が住みつき、さらにレッドベアーのようなボス級モンスターまで生息しているからだ。
しかも崖に生息しているボスモンスターの強さはレッドベアーを越えているらしい。
崖に生息する周辺最強種は“四翼大鷲”と呼ばれる茶色い羽毛と四つの翼を持つ大型の鷲だ。平均的な身体のサイズは二メートル程で、身体の二倍以上はある四翼を広げて飛ぶ姿は見る者を圧倒するそうだ。しかも厄介な事にその巨躯に見合わない飛行速度と回旋性能を持ち、鉤爪からは得物をジワジワと弱らせる麻痺毒が分泌されているのだと言う。
個体数こそ少ないが、崖沿いの道を進んでいると必ず襲ってくる厄介なモンスターだと言う。
そしてそれを率いるボス――翡翠色の羽毛を持つ【四翼大鷲・亜種】は際立って大きく、神々のどれか一柱から授けられた【加護】の能力によって口から小さな竜巻を発生させて標的を攻撃したり、羽ばたきで生まれる風が敵を切り刻む刃に変化したりする事に加え、配下を指揮するだけの知性もあるのだと言う。
コイツが住みついて以来、崖沿いの道を進むモノは殆どいないそうだ。
確かに厄介そうな話である。レッドベアーは強かったが、あくまでも単体として動いていた。しかし今回は群れと考えた方がいいのかもしれない。
崖沿いの道に入る前に鍛冶師さん達に散々そう説明されたが、俺は大丈夫と言って突き進み、特に困る事は無かった。
確かにファレーズエーグル達の飛行速度は速かった。それに加え、死角の多い崖沿いの道から突然飛び出してくるのは対処が面倒だろう。しかし、【気配察知】を持つ俺からすれば死角から出てきた瞬間を狙って糸で捕獲する事は容易かった。
奇襲など、事前に分かってしまえばそれを狙い撃ちする事など容易いのだ。そんな訳で捕まえた総数十八頭のファレーズエーグル達の売れる素材は剥ぎ取り、残りをから揚げや焼き鳥などにして喰いまくった。
さっぱりとした肉の味わいは、なかなか美味かった。
【能力名【混乱を呼ぶ鳴き声】のラーニング完了】
【能力名【羽毛生成】のラーニング完了】
【能力名【高速飛行の心得】のラーニング完了】
【能力名【風読み】のラーニング完了】
【能力名【麻痺爪】のラーニング完了】
【能力名【麻痺耐性】のラーニング完了】
そんな感じで危なげなく進んでいると、午後二時頃、俺達は崖沿いの道の中で最も広い場所に出た。そこには色んな動物の骨が散らばっていて、道、というよりは何かの巣の様だ。よく見て見れば、人間の骨や武具の残骸が幾つか発見できる。まるで、道に居座った猛獣を討伐しにきて返り討ちにあった名残りのような。
などと思っていると、上空から羽音がバサリバサリと響き。そして吹き荒れる突風が肌を打つ。
【気配察知】で既に感知していたので驚く事は無く、俺は上空を見上げた。
そこにいたのは五体のファレーズエーグルに加え、翡翠色の羽毛をもつ【四翼大鷲・亜種】――“ジャッドエーグル(仮称)”だった。普通のファーレズエーグルの二倍以上はある体躯が力強く飛んでいる光景は、圧倒的存在感に満ち溢れていた。
レッドベアーよりも遥かに巨大で、発している威圧感が桁違いだ。
目が合う。チリチリとうなじの辺りに違和感を覚える。アチラは、コチラを確実に殺しにきていた。
翡翠色の羽毛はまるで刃のように陽光を反射させて煌めき、金剛石のような嘴や鉤爪は早く獲物の肉を斬りたいと疼くのか、しきりに動かされていた。爪と爪が擦れ、火花が散った。
俺を見下ろすその黄色い双眸からは知性を感じる。殺すのは、勿体ないと思うだけの気品がある。
しかし残念ながら、俺は初見の敵はできるだけ喰う様にしている。そしてジャッドエーグルは亜種だ。喰えばレッドベアーの時のように【加護】系のアビリティを得られるだろう。俺からすれば、喰うべき相手だった。
赤髪ショート達の守りをダム美ちゃんとロード三名に任せ、俺は【鞘翅生成】を使って背中に虫のような翅を生やし、上空で俺を見下ろす敵に向かって飛翔した。
ハルバードを、その手に握りしめて。
一時間ほど経過しただろうか。
流石に空はジャッドエーグルの領域だった。
四つの翼を使って生み出されるその飛行速度と旋回能力はまさに風の様だった。先ほど得たばかりの【高速飛行の心得】があったので、余計にその凄さが理解できた。
風のように空を縦横無尽に駆け巡るジャッドエーグルに俺は翻弄され、四つ翼が生み出す乱気流に揉まれて飛行は困難を極め、口から吐き出された小さな竜巻の槍によって翅は何度も何度ももぎ取られ、巨大な麻痺爪が俺の全身各所の肉を抉った。
俺の全身は血に染まり、体液は失われていく。しかも翡翠の羽毛は硬く鋭く、掠っただけで斬られてしまうほどだった。厄介極りない。
それに攻撃を避けきれず、盾にした右腕は金剛の鉤爪によって切り落とされ、左足は金剛の嘴によって食い千切られてしまった。どうやら唾液には回復阻害の効果でもあったのか、食い千切られた左足からは血が止まる事無く流れ落ち、仕方なく筋肉を引き締めて出血を無理やり抑えるしかなかった。
幸いな事に【激痛耐性】や【知覚鈍麻】があったのでココまでの深手を負っても痛みに思考を割かれる事は無く、しかし、ジリジリと俺は追い詰められていっていた。
俺が体得した武術の数々も、流石に空中でその能力を十全に発揮するのは困難を極めた。あくまでもアレは人間が生み出し、受け継いできたモノだからだ。空中でその効果を十全に発揮するのは難しい。
とは言え、それでもただやられていた訳ではない。
付き従っていた五体のファレーズエーグルは全て斬り殺した。
ジャッドエーグルの右足もハルバードで切り落とし、四つの翼には幾つか風穴を開け、胴体には深い刃傷がある。翡翠の体毛は、所々赤く染まっている。
決して個体の能力として負けている訳ではない。
だが戦場は俺の不慣れな空だ。敵の領域が俺の足枷になっていた。
風が渦巻き荒れ狂う突風に晒されながらの不慣れな飛行を戦闘と同時に行う事で精神には僅かだが乱れが生じ、深いダメージによって最初と比べ飛行速度が明らかに衰えた俺は、ジャッドエーグルからすれば狙いやすい的だっただろう。
攻撃は激しさを増し、ついには俺の手からハルバードが崖沿いの道に落ちてしまった。運よくハルバードは骸骨百足の進行方向に落ちて刺さり、崖下に落下する事は無かった。とは言え、即座に拾える場所でも無い。
武器を失ったのを好機と見たのかジャッドエーグルは今までにないほど大きく距離をとり、その金剛石のような嘴で俺を貫くつもりなのだろう、真っ直ぐ俺に向かって突っ込んできた。
それに伴い、まるで嵐のように風が吹き荒れる。
【加護】で生み出したのだろう突風に乗ったジャッドエーグルは、今までとは比べ物にならない程の速度を叩きだした。正真正銘の最高速度で突っ込んできているのだろう。
傷だらけの肉体でよくぞここまで、と思うほどだ。
赤髪ショート達から悲鳴が上がる。
嘴に貫かれ、俺は空で果てる。
ジャッドエーグルが自らの勝利を確信し、小さく嗤ったような気がした。
俺は、悔しそうに歯を食いしばる。
と言う演出をしてみた。
いや、正確に言えば、ただ単純に俺が使うアビリティを限定していた結果がこうなっただけである。
流石に、敵の領域でアビリティ無しのまま勝てるほど優しい敵ではなかったようだ。種族的にオーガよりも遥かに強いのだから、当然と言えば当然かもしれないが。
地力を上げる為の鍛錬だった今までの戦闘を止め、俺は本気で殺しに行く事にした。
ジャッドエーグルが突っ込んでくるタイミングを見計らい、先の戦闘では使っていなかったアビリティの数々を発動させていく。
切り落とされたが密かに回収していた血の滴る右腕を喰らって【補液復元】の発動条件を満たし、【高速再生】や【高速治癒】を重ねる事で全身の損傷を一瞬で治す。切り落とされていた右腕も、食い千切られた左足も、即座に新しいのが生えた。その分エネルギーを使って腹が空いたが、食料は目の前にあるので問題ない。
次いで【外骨格着装】を使って赤いクワガタのような姿に変身した。外骨格は防御面だけでなく俺の膂力を強化してくれる作用があるし、それに加えて【黒鬼の強靭なる肉体】や【堅牢なる竜鱗鎧】などを重複発動させ、竜鱗を持つクワガタのような姿に変化。
俺が一瞬ごとに変化する様を見ていたジャッドエーグルに指先から黄金糸を噴出してその全身をからめ捕り、ついで【重力操作能力】を使ってジャッドエーグルが進行方向とは逆方向に落ちる様に重力を操作し、強制的に失速させる。
身に纏う風の刃で黄金糸は幾らかは斬られてしまったがそれでも残っている黄金糸はあるし、無形である重力に抗える筈は無く、驚異的な速度は既に無い。
今更軌道変更ができなかった敵の頭部に、俺は両腕の拳を振り下ろした。
そこに技など無い。ただ単純に、力の限り両腕を振り下ろしただけである。しかし現在の強化された膂力でそんな事をすればどうなるか、結果は火を見るよりも明らかだった。
ジャッドエーグルは地面に向かって高速で叩きつけられた。落ちた地面には小規模なクレーターができるほどの衝撃だった。普通なら四肢が千切れ飛んで絶命しているようなレベルである。
しかしモンスター特有の強靭な生命力によってか、ギリギリ生きていた。しかしまだ死んでいないレベルである。死んでいなかっただけで十分凄いと思うが。
俺は取りこぼしてしまったハルバードを回収し、ジャッドエーグルの首を刎ねて戦闘に決着をつけた。
転がった頭部から宝石のような目玉を液体入りの小瓶に回収し、頭蓋骨と肉を喰らった。美味い。まるでジャッドエーグルの生命力が俺に流れ込んでくるような感じがする。
堪能した後、刃のような翡翠の羽毛が抜けない様に気をつけながら皮を剥ぎ取ったり肉を捌いたりと、普段通り解体していく。そして心臓の辺りを切っていると、解体用ナイフから硬い感触が伝わってきた。感触から骨ではないと分かっていたので、不思議に思いながら探ってみると、そこから翡翠色をした十センチほどの丸石のようなモノが得られた。
何だこれ? と思い【物品鑑定】を使ってみると、【四翼大鷲の主の御霊石】というアイテムだそうだ。
鍛冶師さん達にコレ知ってる? と聞きたくて振り返ると、そこには行商人四名がすぐ傍にいて、俺の手の中にある石を食い入るように見つめていた。
いつの間に近づいたんだ、と言う程の早業である。流石に驚いた。
気を取り直して、知っているようだったので説明してもらうと、【御霊石】系のアイテムは全て【伝説】級だと言う。
【御霊石】はボス系モンスターの百体に一体の確率で得られるそうだ。それもボス系モンスターが強ければ強いほど手に入れられる【御霊石】の純度やレア度は上がり、強力なモノなのだとか。
とはいえ、ボス系モンスターはそう簡単に狩れる存在では無い。
とある有名なボス系モンスターは【御霊石】を持っていると目され、とある国の軍隊が討伐に赴いたそうだが、呆気なく全滅させられたと言う話もあるそうだ。
【御霊石】は、狙って得られるようなアイテムではない。
その為【御霊石】系のアイテムはオークションに出すと小国が買える程の金が動く、らしい。もっとも、大抵の場合は売りに出される事無く、強力無比なマジックアイテムなどの製作に使われるそうだ。
へー、と思いながら喰うかどうか迷っていると、『まさかそれも食べるつもり? 食べるなら売りましょう』と言った感じに、四人にジト目で見られたので一先ずはアイテムボックスに放り込む事にした。
根っこの部分はやっぱり商人な四人に苦笑が漏れる。
これを得られたのは【幸運】と【黄金律】のお陰だろうから、一応感謝しておこう。
その後剥ぎ取った翡翠の羽毛付き皮を羽織り、【外骨格着装】を発動させた。
レッドベアー製の革鎧を取り込んで赤いクワガタのような外骨格を精製した時のように、ジャッドエーグルの翡翠の羽毛付き皮を取り込んで、二つ目となる新しい外骨格が精製・登録された。
全体的に翡翠と黒を基調とした独特の光沢がある外骨格で、背中には翡翠の四つの翼がある。所々にやや鋭い突起があり、四肢には金剛の鉤爪が取り付けられている。意思によって鉤爪は収納できるようなので便利そうだ。新しい外骨格は、全体的に鳥類を彷彿とさせるフォルムをしていた。
試しに飛んでみたが、翅よりも速く飛行する事が可能だった。翼を生み出す事で突風が自動的に発生して飛行速度を底上げしてくれているらしい。
出来心で翅も追加で生やしてみたら、更に高速で飛べたのは嬉しい誤算である。
空中戦時には大活躍してくれそうだと思いつつ、今度は肉を喰う事に。
感想、頭部を喰らった時にも思ったが、多分、今まで喰った中で一、二を争うほど美味かった。
思わず叫んでいた程である。
ウマい!! と。
【能力名【矢羽根】のラーニング完了】
【能力名【天空の捕食者】のラーニング完了】
【能力名【嵐の神の加護】のラーニング完了】
【能力名【風塵完全耐性】のラーニング完了】
【能力名【金剛瞬爪】のラーニング完了】
【能力名【音速飛行】のラーニング完了】
満足いく結果だった。アビリティも良さそうなのが多く、得られたモノは非常に大きい。
ついでに死んだ冒険者たちの骸から何か得られないかなー、と思っていたら、まだ使える“収納のバックパック”が五つほどあった。中身を拝見させてもらうと結構な額の金と武具防具に薬品があったので、ありがたく頂く事に。他にもまだ使えそうなのは粗方回収した。
その代償として、骨だけになった骸の数々は埋葬する。
骨を一ヶ所に集めて火葬した。
南無。
黙祷を捧げた後、俺達は歩みを進める事に。ただ、鬼人三名が酷く複雑な感情を込めた視線を向けてくるのが気になった。
化物を見るような、それと同時に憧れの人を見るような、そんな感じの視線である。
“九十四日目”
今日は豪雨だった。
幸い昨日の内に街道まで到着していたので、街道にある“休憩所”と呼ばれる一辺が三十メートル程もあるただ単純にデカイ平屋の中で雨風を凌いでいる。骸骨百足は馬車専用の建物の中だ。
俺達の前に入っていた行商人の一団やら冒険者の集団やらが入ってきた俺を見た瞬間怯えたり殺気を出したりしたが、取りあえず人間軍からの略奪品の一つである酒樽を二つほど取り出して、そこに居た全員に振舞った。
冒険者はそれで釣れたが、釣れなかった行商人にはこの前手に入れたタートルスネークの甲羅や、森で採れた素材や火葬した冒険者の所持品だったモノを売ったりして交流してみた。
最初は怖がりながらだったが、鍛冶師さん達の存在もあって、次第に打ち解ける事ができた。
後から入ってきた人間や獣人も俺の存在に驚いていたが、周囲の雰囲気から危険は無いと判断したのか、注意を向けつつも襲ってくる事は無かった。襲ってきたら喰ってやろうと思っていたのだが、ちょっと残念だ。
昼ごろ、姉妹さんや他の【料理人】持ちの男女に混じって一緒に昼食を作り、それを喰い終わった後に始まった賭博に誘われて、参加してみる事にした。
カードを使ったブラックジャックに似たゲームで、簡単な説明をしてもらった後、昨日手に入れた金銭を賭けてやってみる。
結果、ボロ勝ちだった。
これもきっと【幸運】と【黄金律】のお陰だろう。他の参加者が素っ裸になるまで剥ぎ取ってしまった。中には商品まで俺に持っていかれたギャンブラーな商人もいた。
ワハハハと勝ち誇った後、衣服は返してやり、もぎ取った商品は欲しいモノだけを貰って返してやった。
金や物資を全て返してやるわけではないが、むさい男達の素っ裸を見ても嬉しくないし、多少イカサマのような事をしているという罪悪感があったからだ。それに商品を賭けたのはそこそこ大きな商会のメンバーらしかったので、貸しを作っておこうと思ったのである。
仲良くなった奴らには傭兵団の宣伝も兼ねて名鉄を配っているので、まあ、そこそこの成果ではないだろうか。
この日は雨が上がる事が無かったので、休憩所で一日過ごす事になった。
別に屋根を取り付けている骸骨百足で進めない事も無かったが、急ぐ旅でもないので雨が上がるまで待つ事にし、休憩所の一角にある訓練所にてダム美ちゃんと赤髪ショート、それにロード三名と組み手などをして時間を潰す事にした。
ダム美ちゃんや赤髪ショートは最近自分にあった戦闘スタイルを見つけた様なのでそれを伸ばしていけばいいが、ロード三名は攻撃が単調で、生来持って生まれた身体能力で無理やり押し切ろうとしている部分がある。
なので取りあえず足癖の悪い【疾風鬼】な風鬼さんにはサバットなどを、肉弾戦を好む【灼熱鬼】な熱鬼くんにはムエタイなどを、直接戦うのが苦手な【幻想鬼】な幻鬼くんには柔術などを教えてみる事に。
転生前の時代では特殊な装置を使い、脳に直接様々な武術の情報を刷り込める事ができたので術技は全て覚えていたし、実際に使っていた技も多くあるので、教えるのには苦労しなかった。
組み手をしばらくしていると、遠くの方で見学していた冒険者が数名混ざりたいと言ってきたので、軽く手合わせをする事になった。
【拳士】よりも【剣士】や【戦士】が多かったので、予め作っておいた木刀や木槍などを“収納のバックパック”から取り出すと見せかけてアイテムボックスから引き出して渡した。
そこそこ手加減してやってみたが、最近はずっと多対一でやっていたし、それほど強いモノも居らず、あまり手応えは無かった。
それでもいい運動になったし、かなり打ち解ける事ができたので良しとしておこう。
それにしても、分体が数体何処かに行ってしまったのは何故だろうか?
さっぱりわからん。
“九十五日目”
昨日は一日中降り注いだ雨は上がり、現在はぬかるんだ街道を進行中。ただし、今まで居なかったメンバーが増えている。
休憩所で仲が良くなったファルメール商会の防衛都市≪トリエント≫支部副店長一行と、その護衛をしている冒険者の集団である。
副店長について分かり易く言うと小太りの禿頭な中年男性で、昨日の賭博で商品を俺に持って行かれた人だ。根っからのギャンブラーで、時たま商品を担保にしてしまうのだそうだ。
そんなので副店長などが務まるのかと疑問に思ったが、ギャンブル狂いさえなければ文句なしの人材なのだと言う。実際、現店長よりも能力としては上なのだそうだ。
おいおい、と思ったが、まあ悪人ではないし関係ないのでどうでもいいのだが。
骸骨百足と違い、休憩を必要とする帆馬車がいるので今までよりも移動速度は遅くなったが、この世界の情勢を色々と聞きだす事ができたので有益な時だった。
話の中で、例の王女様は次期皇帝が持ち帰った秘薬で無事治った、と言う話が出た。
“クリシンド病”が初めて治った事例であり、数滴残った秘薬は帝国と王国が分析している、という噂話もある。
実際には使われなかった秘薬は既に一滴残らず自然発火してしまっているのだが、それは黙っておく事にした。
それに再びエルフが襲われる事はないだろう、というのは分かった。国家間の情勢が不安定になってきて、近々戦があるのではないか、といった話が多くなってきているからだ。
エルフに手を出す余裕がないと言う事である。
今日は話以外、何事も無く日が暮れた。
“九十六日目”
昼ごろ、防衛都市≪トリエント≫に到着した。街をグルリと囲んだ白壁は堅牢そうで、様々な機構が組み込まれている白壁を落とすのはかなり面倒そうだ。
などと言った事を考えていたら、俺がオーガだった事で門前にてかなりの騒ぎとなった。いや、鬼熊やオルトロスにボルフォルも要因の一つではあるか。
俺が街には入れないかもしれない、と言うほどに事態は面倒な方向に進み。
だが、そこは副店長が何とかしてくれた。この街ではファルメール商会の影響力はかなり強い様だ。
感謝である。ただそれと引き換えにタートルスネークの甲羅などを格安で売るように交渉されたけどな。
取りあえず、街内では全身をフード付きコートで身を隠す事にした。巨躯を隠せる訳ではないが、多少はマシ、だろうと思う事にする。
街の中は人間が多かったが、獣人や亜人種なども見受けられた。割合としては人間が六に人間以外が四と言った所だろうか。街には活気が満ち、メインストリートには商店が立ち並び、客引きの声が響いていた。
色々と暗部はあるだろうが、楽しめそうな街だった。
街に入った後は色々と買い物したり、宿を探したりと、なかなか忙しい一日だった。
赤髪ショート達には四、五日ほど滞在するから、それまでに俺と共に来るか、それともこの街に留まるか決めるように、と言っておく。俺としては放したくないが、やはり意思は尊重すべきだろう。
“九十七日目”
今日は赤髪ショートに案内されて、≪総合統括機関≫と呼ばれる施設に赴いた。
メンバーは俺とダム美ちゃんと赤髪ショートで、ココには居ない鍛冶師さん達はロード三名をボディーガードとして街を散策中だ。と言うか、造っていたナイフや魔法薬などを売って明日の買い物の為の資金源を得るのだと言う。流石行商人と言うべきだろう。
≪総合統括機関≫はかなり大きく、立派な施設だった。
外から見た限り三階まであるようで、俺達が踏み込んだ一階には酒場としても使われているようだ。何人か酒を飲んでいる姿が見受けられた。コートは着ていたが巨体を隠せている訳でもないし、室内では邪魔になったのでフードを外して入ってきた俺に驚いて剣を抜いた者もいたが、それを無視しカウンターに向かう。
それを見て斬りかかってきた輩は正当防衛として鎮めていく。流石にココで殺しは不味いので、気絶するに留める。骨が折れた感触があったが、不可抗力だ。
近づくごとに受付嬢は顔面蒼白になっていくが、とりあえず現在ある依頼はどんなものか聞いてみる。近くの板に紙が何枚も貼られていたが、やはり説明してくれる人がいた方が分かり易いだろう。
しかし答えは返ってこなかった。どうやら椅子に座った状態で気絶してしまったらしい。
仕方ないのでその隣に居た不可思議な雰囲気をした老人に聞いてみると、カウンターにドサリと分厚い書物が出された。コレに書いているらしく、それを読んでいく。分からない部分は説明してもらった。
そしてその中から手持ちの品で納品条件がクリアされるモノ――ボルフォルの角の納品など――を選び、冒険者として登録している赤髪ショートに依頼を受けてもらって俺が品を出し、報奨金を貰っていく。ココに来たのは、情報収集と金が同時に手に入るからだ。
書物の中には赤髪ショートの冒険者としての階級的に受けられないモノもあったが、実際に品を取り出してみせれば特別に受けさせてもらえた。話の分かる爺さんである。
その結果赤髪ショートの階級は一つ上昇してしまったが、現在の実力とは釣り合っているので問題はないだろう。
その後色々と老人に話を聞き、ギルドを後にする。
その後で知ったのだが、俺が話していた老人はどうもギルドの責任者――通称ギルド長だったようだ。
なんであんな所に居たのだろうか。不思議である。まあ、俺とは関係ない事だ。
その後錬金術師さん達と合流し、俺も買い物につきあった。つくづく思うが、何故女性の買い物はあんなにも長いのだろう。異世界でもこれは共通だったのだ。
かなり疲れた。
途中、俺を追跡している輩がいたので、路地裏に引き込んで撃退する事に。ナイフで反撃されたので、気絶させた後で身包みを剥いで素っ裸な状態にし、その辺に吊るしておく。
全く、都市に着て早々何だと言うのだ。
宿に帰って軽く訓練をし、寝た。
“九十八日目”
早朝、宿の近くにある空き地にて軽く訓練をこなした後、今日は単独で街を放浪する事にした。
ダム美ちゃんは鍛冶師さん達と一緒に服を見に行くんだと言っていたので、熱鬼くんや幻鬼くんには荷物持ちという生贄となってもらうのだ。風鬼さんはロード唯一の女性体なので、ダム美ちゃん達と一緒に買い物を楽しむだろう。
尊き二人の犠牲に、敬礼。
一人放浪する事にした俺は、今回はフードを被ったオーガ体のままではなく、【変身】と【形態変化】を使い、イメージし易かった前世の身体に似せた人間体となって行動する事にした。
やはり目立つ目立たないで言えば、コチラの方が目立たないからだ。
ふらふらと放浪しつつ、街の情報を収集していく。やはりと言うか当然と言うか、俺の噂は結構広がっていた。
基本的に大鬼は周囲の生物に害を成す【モンスター】として知られている。オーガ・メイジなどの中には稀に人間に害を成さない個体もいるので一概には言えないが、概ね危険な種族として認知されている。門の所での騒ぎもそれに起因した。
俺について良く分からない為に起こる反応は様々だ。ただ恐ろしいとか、怖いとかと言った傾向が強い。まあ、そんなモノだろう。
三時間ほど表通りを歩いて、適当な店で昼食をとり、ある程度情報を収集した後は裏道を歩く。
そこそこ身なりの良い装備にしているので、ゴロツキが釣れないかなー、と思っての行動だ。
結果、釣れた。ナイフや鉈に似た刃物で武装したゴロツキが六名、ゲヘヘとこれまた典型的な下種な笑いを見せながら、だ。
周囲に人気も無かったので、ゴロツキは問答無用で叩き伏せる。ただ人間体となっているので身体が本来よりも小さい事を失念していた。距離感が狂ってしまい、それで生まれた隙を突かれて最後の一人のナイフが心臓に刺さってしまった。
とは言え、人間体でも俺はオーガだ。痛みはあれど大した事は無かったのでナイフを引き抜くと、酷く驚かれた。まあ、いい。全員の首の骨を捻り砕き、路地裏で死体を喰う事にした。周囲には誰もいないと【気配察知】で分かっているが、誰が来てもいい様にさっさと喰った。
【能力名【職業・盗賊】のラーニング完了】
【能力名【静寂の突き】のラーニング完了】
【能力名【逃煙玉】のラーニング完了】
この六名は盗賊だったようだ。共通の紋様が刻まれた指輪を嵌めていたので、同じ組織に所属していた可能性が高い。もしかしたら結構大きな組織の構成員だったのかもしれない。
まあ、そんなのは関係がない話だ。
誰かがこない間に価値のある所持品は回収し、価値の無い所持品を酸性に変化させた体液で溶かし、六名が死んだ痕跡を隠蔽した現場から立ち去る。
再びゴロツキが釣れるのを期待しながら裏路地を歩いていると、五人の男達と一人の少年が激しく言い争っている、という場面に出くわした。
五名の男達は強面で、懐に刃物を仕込んでいるのが鉄の臭いや仕草で分かる。顔に刃傷があるモノも多く、普通なら関わりたくない類の職業についていそうだ。平均的な年齢は二十代後半くらいだ。
それと真正面から言い争っている少年は十三、十四歳くらいだろうか。薄暗い路地裏の僅かな光でも輝く金髪に端正な顔立ちは将来美男子になるだろう、と思うだけの輝きがある。白銀の軽甲冑を着け、赤いマントを羽織り、腰には剣があるので騎士見習いなのかもしれない。武装の品から、そこそこ名のある家の子ではないかと推察してみる。
隠れて話を聞いていると、どうやら誘拐がうんたらかんたら、と言う話だった。
騎士の少年は今にも抜刀しそうな勢いで五人の男達から情報を聞き出そうと躍起になっているようだ。別に興味も無かったので帰ろうかとも思ったが、五人の男達の指に先ほど俺が喰った盗賊連中と同じモノが嵌められているのに気がついた。
取りあえず最後まで見てみるかと思っていると、案の定、乱闘が始まった。
人数は男達の方が多いが、少年の方が個人としては強かった。数の差に、容易く押し潰される事は無かった。だがやはり数の差は大きく、最終的に少年が物量に押されて取り押さえられてしまった。
馬乗りになった一人の男が握るナイフが取り押さえられた少年の胸を突き刺す為に振り下ろされ、俺はそこに割って入った。取りあえず五人の男達は気絶させて分体を寄生させ、男達のアジトの調査をする事にした。
ボロボロになった少年を担ぎ、この場を立ち去る。流石に気絶させた男達を放置せずに殺したり、捕まえたりされると面倒だからだ。
離れた場所まできたところで、少年の怪我は有料で治してやった。何故あの男達を逃がした、と少年には怒鳴られたが、命の恩人になんだその態度は、と鉄拳制裁した後で名鉄を渡し、しばしの時間が経った後にコレを誰にも悟られぬように使え、と言うと少年からお前は何者だ、と聞かれたので、ただの傭兵だ、と言って帰る事に。
少年は美形だったが、男なのだからこんな扱いで十分だろう。
“九十九日目”
午前三時、まだ闇に包まれた街中を、俺は人間体ではなくオーガの姿で移動していた。その傍らにはダム美ちゃんや幻鬼くんに加え、昨日助けた騎士の少年の姿がある。
話は昨日に戻るが、俺が宿に帰ってしばらくして、少年に渡した名鉄から連絡があった。
まだ一時間も経っていないのだが、と思いつつ少年に俺達が宿泊している宿を教えると少年はやってきて、傭兵か、と聞かれたので傭兵だ、と答えた。そして依頼したいと言われた。
依頼内容は少年が仕えるべきお転婆姫の救出だそうだ。
なんでも、お忍びで≪トリエント≫まで来ていたのだがお転婆姫は従者である少年や護衛団の隙をついて宿を抜け、どこぞの貴族の令嬢と思われてヒト攫いの組織に拉致されたそうだ。
そして身代金の要求が送られてきて、少年は他の護衛団の代表として指定された場所に金を持っていったが、そこに居たのは六名の下っ端だった。昨日叩きのめした奴である。一人数が多いのは身代金をさっさと持ち帰った奴が最初は居たからだそうだ。
言い争っていたのは、約束と違い、金を更に請求されたからだそうだ。
なのにそれを叩きのめしては不味かったかもしれないが、始めたのは少年の方だったし、分体は寄生済みなので問題はない。滞りなく予定通りに、と言う風に話を進ませた。
そして現在、闇に紛れて組織のアジトとなっている住民の居なくなった元貴族の屋敷を四名で襲撃する為にやってきていた。分体で内部情報は筒抜けだ。
少年の他にも護衛団は居たが、足手まといは必要ないので何も知らせていない。少年は今回の雇い主で、ついて行きたいと言ったので仕方無くだ。
赤髪ショート達は今も寝ているし、必要ないとは思うがボディーガードとして風鬼さんや熱鬼くんは置いてきた。少年を除いた三人でも十分事足りるので問題無し。
組織のアジトに到着し、少年に分からないように密かにブラックスケルトン・アサシンを生成。敷地内に十体ほど放ち、敵の取りこぼしなどが無いように動かせる。
俺達は敵のアジトに侵入した。
結果だけを言うと、朝日が昇る前に組織は壊滅した。酒を飲んで寝ていた盗賊団のリーダーを暗殺し、その他多くを殺し尽くして決着がついた。見逃しは一切無し。そういう依頼でもあったからだ。
お転婆姫は無事救出する事ができた。予想に反して、線が細いというか、触れれば壊れそうなほど儚げな少女だった。歳は十~十二前後と言った所だろうか。白金に輝く髪は美しく、将来は美人になるのだろうなと予想ができる顔立ちだった。
四肢は鉄の拘束具が嵌められ、口は声を出さない様に塞がれていたが幸い薬で眠らされていただけで、服の乱れも暴力の痕も無かったので大きな問題は無いだろう。これで少年を含む護衛団は一先ず首を刎ねられずにすんだ訳だ。
組織を潰したついでに溜め込んでいた財宝や、色々と王国の暗部に関わる書類を少年に隠れて回収しておく。また一つネタができた。というか、書類を見る限り今回の誘拐は計画的なモノだったらしいが、これには関わるつもりはまだ無いので眼を瞑っておこう。
下手に触れば身体が燃やされかねない話である。
俺は、何も見ていない。
少年は、何も知らない。
誘拐など、そもそも初めから無かった。
コレでいこう。
少年にはこれら全ては王女様が計画した悪戯だった、そして少年は仕方なくそれに協力していた、と護衛団に報告しろ、と言っておく。
王女誘拐などと言った事実はもみ消した方が無難そうだ。守れなかった事に対する厳しい罰を与えられるより、お転婆姫の悪戯だった、という方がまだマシだろうよ。
少年が語った武勇伝から、これくらいしても信じられそうな事をお転婆姫がしていたので、今回も行けるのではないかと思うのだ。
これに少年は、国王には全て報告するべきである、と言って納得してくれなかったので、幻鬼くんの催眠術で無理やり納得させた。真っ直ぐ過ぎるのも考えモノだ。俺の迷惑となる事はして欲しくない。
ついでにお転婆姫にも口裏を合わせるように言っておけ、とも。
少年が催眠によって一時的に意識が混濁している間に組織の構成員を喰ってみた。
【能力名【足止める蜘蛛の糸】のラーニング完了】
【能力名【毒煙玉】のラーニング完了】
【能力名【盗聴】のラーニング完了】
【能力名【ヒト攫い】のラーニング完了】
まあまあ、な成果だ。日が昇る前に、俺達はアジトから撤退した。
屋敷からは、轟々と炎が立ち上っている。証拠隠滅、真実は灰燼に帰したのだ。
その後は昼まで寝て、少年が内密に報酬を持ってきて、その後顔を出すと副店長と約束していたのでファルメール商会の支店に挨拶しに行ったりして時を過ごした。
明日、この街を出立する事になった。次代の子供たちが生まれたので、一時的に帰るのである。
鍛冶師さん達がどういった選択をするのか、若干不安だった。
“百日目”
鍛冶師さん達はこれまで通り俺についてきてくれるそうだ。
嬉しい事である。と言うか、今更だ、と言われた。
昼前、荷物を纏めて一旦本拠地に帰るべく街を出立。しようとして、邪魔が入った。
騎士の少年と、昨日は言葉を交わす事無く別れた小さなお転婆姫の二人によってだ。宿を出た瞬間、待ち構えていたのである。
お転婆姫からは一応、助けてくれた事の感謝を告げられた。やけに年寄り臭い口調で外見からは想像し難いモノではあったが、そこまでは、まあいい。人の口調をとやかく言うつもりはない。
むしろオーガである俺に恐れなく言う様は、やはり王族の貫録があった。図太い、といってもいいのかもしれん。
が、傍らに佇む少年が携えた大量の金の音がする袋を見て面倒事の予感がした。
そしてお転婆姫は王が下民に命令するように、王都≪オウスヴェル≫までの護衛を俺に依頼してきた。その言葉通りに従いたくなるような不可思議な魅力が声音には込められていて。
しかしそれに呑まれる事無く護衛団がいるだろう、と言ってみると、アヤツ等はつまらん、お主が居た方が面白そうだ、と言う。お転婆過ぎる。周囲の迷惑を考えろ、と思わず言ってしまうほどだ。
しかしお転婆姫は、我にそのようなモノ言いはお主が初めてぞ、とか愉快そうに笑って話を聞いていない。少年を見た。苦笑していた。
話が進まないので護衛に対する報酬を聞くと、金板一枚――つまり百万ゴルドだそうだ。
赤髪ショートによると、普通の行商人の護衛は、ギルドが仲介するので幾分か減るとはいえ、ココから王都まで行くなら銀板一枚――つまり一万ゴルドの報酬が基本なのだと言う。
一ゴルドが十円と勝手に解釈しているので、普通は十万円、姫様は一千万といった感じか。食糧費とかで色々減るから予想金額そのままが手に入る訳ではないだろうが、取り合えずアホかと。血税を何だと思っているのだと言いたい気分である。無駄に使うんじゃないと。
とは言え、とは言えだ、王族と言う事を考慮に入れればリスクと報酬は釣り合っている気がしないでもないし、王都≪オウスヴェル≫に行くのも悪い話ではない。
拠点には分体もいるので生まれた子らの教育にも問題はないだろう。とりあえずの目的は達成済みだから、一旦戻ろうか、と思った程度である。別に、絶対に戻らねばならないと言う話でも無い。
別にココで依頼を受けても問題はないのではないか?
そんな訳で軽い気持ちで依頼を受けた訳だが、待ち合わせ場所を門の外に指定された時に気がつくべきだった。
一時間後、約束通り門まで出向き、そこに居たのはお転婆姫と少年の二人だけである。少年は“収納のバックパック”とそれよりも多くの品を入れる事ができる高級品だろう旅行鞄――“収納のキャネーリケース”を抱えており、他には誰の姿も無かった。
影も形も見当たらない。護衛団は? と聞くと、置いてきた、とお転婆姫は言う。
え、これ、誘拐とかって思われるんじゃ……。
都市に残してきた分体の情報網を駆使すると、お転婆姫が護衛団と思しき連中に探されている事が分かった。冷や汗が流れる。正直この小さなお転婆姫に頭が痛い思いだが、既に契約は成されている。護衛団は置いていくのだ、と言う依頼主の意向は、守らねばなるまいよ。
絶対に許容できない内容でも無いのだし。
しょうがないので、さっさと王都≪オウスヴェル≫に行く事にする。今後の軍資金の為だと思う様にしよう。いや、【黄金律】と【幸運】は発動済みなので、コレはもしかしたら良い事が起こる前振りなのかもしれない、と考える事にした。
追手が追いついた時には、お転婆姫がどうにかしてくれる事を期待する。最悪、殺さねばならない事になるかもしれないがそれはお転婆姫の責任と言う事で。
さて、王都≪オウスヴェル≫には何日程で到達するだろうか。
俺達は骸骨百足に揺られて、街道を進んでいく。それにしても、このお転婆姫はどうやら俺の肩が気に入ったようで、まるで椅子に腰かける様に、かなりの時間座っていたのであった。
この世界の歌を歌うほど上機嫌なのだが、一体何なのだろうか。
分からん。分からんが、まあ、王都に着くまでの付き合いだろう。
ん? 肩に乗る少女と見た目バーサーカーな俺? はて、何処かで見たような……。
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