生ゴミ再生 地域で循環
有用微生物使い 高品質堆肥に

            
 産業廃棄物収集、リサイクルの「太陽産商」(和歌山市西浜)と有機農産物生産グループの「紀州大地の会」が協働で、民間業者の食品廃棄物(生ゴミ)を肥料や飼料に再生し、地域で循環させる仕組みづくりを進めている。食品リサイクル法施行で、食品業者からの生ゴミが増えるのをふまえた取り組みで、1月には、微生物HDM菌を用いた再生プラントの稼働を始め、リサイクルに2つの工程を確立した。太陽産商は「できることから手探りで進めている。肥料や飼料を安定的に生産し、供給できる体制を充実させたい」と話している。
   
※太陽産商、紀州大地の会が協働
   
 太陽産商は、古紙や鉄、瓶、缶などの再生利用、廃プラスチック、木屑を固形燃料にするなどリサイクル事業を展開するだけでなく、天ぷら油をバイオディーゼル燃料とし、自社のパッカー車に使い、温暖化の対策にも力を入れている。
 廃棄物の中で生ゴミは、食品リサイクル法により、2012年には食品製造業で食品廃棄物の85%、スーパーで45%のリサイクルを行うよう定められており、再生処理の体制づくりが課題となっていた。
 同社と紀州大地の会が取り組みを始めたのは3年前。12社が参加する和歌山再資源化事業共同組合で、金田実社長と紀州大地の会の園井信雅代表が出会ったのがきっかけだ。大地の会は、有機物の発酵を促進させる微生物EM菌と堆肥を用いた有機農業を展開。生ゴミに及ぼすEM菌の効果について知識が深く、生ゴミの処理に有用微生物の活用を同社に提案した。それを受け、同社は2年前、同市西浜にEM菌を用いた第一ラインをスタートさせた。
 異物のない生ゴミにEM菌をまぜ攪拌(かくはん)し密閉包装。3カ月かけ発酵させ、特殊肥料にする。飼料向けの生ゴミは家畜の飼料とするが、肥料は大地の会のネットワークを通じ農家に紹介する。「有機農業に使える有機適合肥料で、安くて高品質。生産も年間200トンをこえ、環境保全型の農家に喜んでもらっている」と園井さん。
 一方、第2ラインとして今年1月、海南市下津町にHDM菌を使った生ゴミ処理プラントの稼働を始めた。HDM菌は、放線菌、油分解菌などを含む新しい微生物群で、EM研究所が開発した。これを含ませた木材チップに生ゴミを投入し、攪拌しながらできるだけ減容し、土壌改良に効果のある腐植堆肥にする。この工程では、臭いも排水もほとんどなく、二酸化炭素の排出も一般の焼却処理の約20分の1ですむといわれる。
 これまでも生ゴミをリサイクルし堆肥をつくる試みはあったが、園井さんは「農家の需要を十分にくまずに作り、結局、使えず処分するケースも少なくなかった。農家の喜ぶものをつかみ、太陽産商の場所、機材、労力と組み合わせ、コラボレートできた」と語る。金田社長は「食品リサイクル法で、生ゴミのリサイクルを行う体制づくりは避けて通れない。本格的に堆肥を使う農家に安定的に供給する責任がでてきた」と話している。  
 さらにともにめざすのは、このシステムを地域循環型社会のひとつのモデルに広げることだ。園井さんは「できた堆肥を使い、作った農作物を今度は排出業者であるスーパーや加工業者で扱ってもらい、再び廃棄物をリサイクルさせ、循環させる。良質な堆肥がふんだんにできれば、一般の家庭菜園でも使ってもらい、都市部でも“農が身近にある暮らし”ができるのでは」と構想している。

写真=海南市で稼働を始めたプラント。微生物を含んだ木材チップに生ゴミをまぜ、攪拌し、堆肥にする

※ニュース和歌山2009年2月7日号掲載