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序章 やられ役Lはみじめな末路をたどって
第二話:運命のファーストコンタクト・その1
「どうかね私の息子は? 私に似て高貴さが溢れ出ているだろう? 野蛮人な貴様らの娘とは違ってな」
「ハハハ。確かに悪党臭さが溢れ出ているな。プンプンとこっちにまで臭ってくるぞ。それに比べてうちの娘の可愛さと来たら……」
「あらあら、ヴォルケイノ家の子女はその辺の枝と草で着飾るのが作法なのかしら? 個性的な上に節約も御上手なのですわね。 独創的過ぎて、由緒正しいクラウン家ではとても真似できませんわ」
「いえいえ、クラウン家の無意味に贅を凝らした装飾には負けます。そんなに宝石で覆い隠さないといけないなんて、中身に乏しい方は大変ですね」
 うっわー。
 客間で繰り広げられる大人の大人げない言い争いに、僕は内心ドン引きしていた。
 互いに貴族らしい紳士淑女の微笑みを保っているけど、交わす言葉はもはや戦争での大砲の撃ち合いに等しい。 そしてやってることといえば、要するに「うちの子の方が凄い」という我が子自慢。
 ――親馬鹿というか、単に馬鹿なんじゃないだろうかこの人たち。
 そんな感想を抱いた自分に自分で驚いた。
 前回のときは、僕も尊敬の眼差しでお父様を応援していたはずなんだけど…… 一度もう経験してるせいなのか、客席から劇を見ているだけのような、どこか醒めた目で僕は両親を眺めていた。
 ちなみに両親が言い争っている相手は、会話からもわかる通りヴォルケイノ家の当主とその妻。 クラウン家とヴォルケイノ家は、先祖代々犬猿の仲なんだそうだ。
「…………」
 そして当主のすぐ横に僕よりも鮮やかな赤、紅髪の女の子が立っていた。 ボサボサの紅髪にはお母様が言うように枝や葉っぱがくっついてるし、ドレスが嫌いなのか凄く不機嫌そうに顔を顰めている。 それでも可愛らしく見える辺りは美形の特権だろう。
 そう、お母様の言っていた『重大な用事』とは、ヴォルケイノ家の娘――つまり僕にとっての宿敵、フレア・ヴォルケイノとの顔合わせ。 今思えばこれは、同時に僕のやられ役人生のスタート地点でもあったわけだ。

『ふん、君があ・の・ヴォルケイノ家の娘か。噂通りの野蛮人だな。当然、僕のことは知ってるだろう? 由緒正しい名門貴族クラウン家の――』
『興味ない』
『なっ!? ぶ、無礼だぞ! クラウン家の次期当主に向かって――』
『邪魔』
『ぶふぁ!?』

 ――とまあ、前回では初対面で顔に強烈な右ストレートを貰った挙句、それからずっとガン無視され続けたんだよね。 ……というか、認めさせる以前に最初から全く相手にされてなかったんだよなー、僕。
 べ、べつにフレアに認めて欲しかったわけじゃないけどね!
 コホン。まあそれはさて置き、僕は自分の惨めな未来を変える決意をしたわけだ。
 そのためにも、彼女との関係もある程度改善していく必要がある。
「ねえ、君」
 だから僕は無駄な論争を続ける両親を尻目に、フレアへと声をかけた。
「…………」
 案の定、言葉の代わりに鋭い眼光が返ってくる。肌を打つオーラのおまけ付きで。
 うん。正直言って怖い。凄く逃げ出したい。というか前回のときは気づかなかったけど、子供が放つプレッシャーじゃないよねこれ!? 君、実は伝説の戦闘民族的な血が流れてたりするんじゃないの!?
 なまじその強さを前回の人生で思い知っているだけに、余計怖いんだけど!
 そ、それでもここで退くわけにはいかない! 僕の幸福な人生のためにも!
「僕の名前はライア。ライア・クラウン。君の名前は?」
 何事もまずは第一印象が重要。
 できるだけ穏やかな笑顔を心がけて、フレアに手を差し出す。
 警戒心バリバリなフレアの反応やいかに……!?
「…………フレア・ヴォルケイノ」
 おお、今回は普通に名前を教えてくれた!
 十年仕込みのポーカーフェイスが功を奏したか!?
「そっか。これからよろしくね、フレア!」
「……気安く名前で呼ぶな」
「ぶ!?」
 結局殴られるのね。
 まあ、前回に比べれば威力もかなり加減されてるみたいだけど……
 頑張れ、僕。全ては幸福な人生を掴むためだ!
 ちなみに更新頻度は週に一、二回ぐらいを予定しています。
 し、締め切りは守るよう頑張りますので……!


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