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福井でもiPS細胞の培養液研究 米ぬか使い安全性向上図る

(2012年10月24日午前7時03分)

拡大 実験室で打ち合わせをする寺田准教授(左)と森山さん=福井市の福井大文京キャンパス 実験室で打ち合わせをする寺田准教授(左)と森山さん=福井市の福井大文京キャンパス


 京都大の山中伸弥教授のノーベル医学生理学賞受賞で一躍注目を集める「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」。心臓や肝臓、神経などさまざまな細胞をつくることができ、再生医療への期待が高まる。このiPS細胞を安全に効果的に増やす「培養液」の研究に取り組む研究室が、福井大大学院にある。所属する前期課程1年生、森山聖子さん(23)が注目するのは、生活に身近な「米ぬか」だ。

 iPS細胞は多様な細胞に分化するだけでなく、ほぼ無限に培養できる特徴を持つ。ただ細胞の培養液は、ウシ血清から抽出されたタンパク質が加えられたものが多く、牛海綿状脳症(BSE)などの感染症や、ウイルスによる細胞汚染の懸念が残るという。

 大学院工学研究科・生物応用科学専攻の森山さんは昨年7月から、培養液の添加剤として、米ぬかの抽出物を研究している。植物由来のため安全性が高く、ヒトの肝臓細胞を使った実験では、従来の培養液より多くの細胞を培養できた。

 米ぬかは、指導教官の寺田聡准教授(45)の提案で選んだ。「実家でぬか漬けを作ったり、畑にまいたりと親近感があった」という。今後は、抽出物質の有効成分を突き止め、iPS細胞を含む他の細胞にも効果があるか確かめるつもりだ。現在、特許を出願中で、森山さんは「効果が確かめられ、多くの人に使ってもらえるようになればうれしい」と話している。

 寺田准教授は10年以上前から、添加剤として繭玉から抽出された絹タンパク質「セリシン」に注目している。セーレン(本社福井市)と共同で、2009年に幅広い細胞を培養できる無血清培養液を商品化。11年には特にiPS細胞など分化する機能がある細胞を、効果的に凍結できる保存液も開発した。京都大からiPS細胞の提供を受け実験したという。

 「特に凍結保存液は、作業に不慣れな人でも扱える特徴がある。今後、iPS細胞研究が広がる中で必要となるはず」と寺田准教授。山中教授とは同じ大阪教育大学附属高校天王寺校舎出身で、4年後輩に当たる。

 山中教授と学会などで面識もあり「穏やかでありながら、科学者としてデータを大切にする姿勢の揺るぎない人」と評する。山中教授が進めるiPS細胞や再生医療の研究に培養は不可欠とし、森山さんとともに「安全に安価に安定供給でき、効果の高い基盤技術を開発したい」と強調した。

 

 

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