自動車業界では、中国の経済成長率の鈍化により、自動車市場の成長も減速するのではないかと懸念されている。中国の国家情報センター(SIC)は、2006年から10年まで年平均28%の成長を見せていた中国自動車市場が、16年から21年までは7%台に鈍化するとの見方を示している。現代自のある役員は「成長率が低下しても中国の乗用車市場は今年の1300万台から15年には1822万台に拡大するとの点に、鄭会長は注目している。増産しなければ、現代・起亜自のシェアは現在の半分に相当する5%台に落ち込むようになり、中位圏のメーカーに転落してしまう」と話す。
現代・起亜自と共に世界中の多くの自動車メーカーが中国進出を果たした2002年の中国自動車市場は、激しい競争を余儀なくされた「レッドオーシャン」だった。鄭会長は、世界の自動車メーカーの冷笑に真っ向から立ち向かい「逆転発想」の戦略を展開した。「中国の安い人件費に頼らず、先端設備を取り入れることでオートメーションの割合を高めること、大衆車市場をターゲットにし、ソナタやアバンテの最新モデルを投入すること」が中心的な指示事項だった。高級車市場に全力を投入するライバル企業とは差別化を図り、質のいい新型車といったブランドイメージを構築した。もう一つの力はスピードだった。現代自は2002年の下半期、中国政府の批准と共に工場の全面改・補修作業に着手、そのちょうど2カ月後にソナタの第1号車を生産し、進出から1年5カ月後の2004年に累積生産台数で10万台を達成する記録を打ち立てた。
現代自グループのある役員は「危機のたびに鄭会長の“逆転発想経営”が中国市場で功を奏してきた。“量的成長”基調を今後も掲げ、中国をリードする自動車メーカーとしての地位を固めていく」と話した。