大飯原発:「きちんと判断を」…傍聴席から切実な声

毎日新聞 2012年11月05日 00時15分(最終更新 11月05日 01時07分)

 関西電力大飯原発(福井県おおい町)敷地内の断層(破砕帯)が活断層かどうか、評価が分かれた4日の原子力規制委員会の調査団の会合。結論は先送りされたが、規制委は「活断層の可能性がクロや濃いグレーなら運転停止を求める」方針で、全国で唯一、稼働中の原発が止まる可能性を秘めながら、緊迫した議論が今後も続く。

 会合には傍聴者や報道陣計約100人が詰めかけた。進行役を務めた島崎邦彦・委員長代理を除く4人が順番に見解を話した。

 「重要施設の直下に活断層がある。原発をすぐに停止し、全てを調べ直す必要がある」。そう指摘したのは、渡辺満久・東洋大教授だった。渡辺氏はこれまでも原発敷地内の活断層の危険性を指摘してきており、関係者から「今回の認定作業のキーパーソン」と見られている。広内大助・信州大准教授も、活断層の可能性を指摘した。

 一方、日本活断層学会の元会長で岡田篤正・立命館大教授は、渡辺氏が活断層だと指摘した「ずれ」を、「ずれはいろんな現象で起こる。これを断層現象と即断できない。むしろ地滑り的に見える」と慎重に検討するよう繰り返し訴えた。重松紀生・産業技術総合研究所主任研究員も「全体の構造がはっきりしない段階で、議論していても、判断は主観的なものになってしまう。もう少し調査し判断すべきではないか」と主張した。

 現地調査した専門家の意見が分かれる事態に、会合の終了間際には傍聴席から「きちんと判断してください」との声も上がった。

 島崎委員長代理は「ずれの原因は活断層によるものか、地滑りの可能性が考えられる。今日はそれ以上の議論は無理だ」と判断を示せず、規制委の田中俊一委員長は終了後の報道陣の質問に答えず、会場を後にした。【畠山哲郎、須田桃子】

 ◇運転停止指示、法的根拠なく

 規制委の田中俊一委員長は「(活断層の可能性について)クロや濃いグレーなら運転停止を求める」との見解を示しており、大飯原発の断層が活断層と認定されれば、運転停止を指示する。しかし、規制委が電力会社に運転停止を求める法的根拠はなく、超法規的な「行政指導」に頼らざるを得ない。昨年5月、東海地震が懸念される中部電力浜岡原発で、菅直人首相(当時)が運転停止を要請したのも、これに該当する。ただ、発動した場合、運転継続を求める電力会社から訴訟を起こされる可能性がある。【中西拓司】

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