中国:胡主席の影響拡大…軍新体制固まる
毎日新聞 2012年11月04日 22時43分(最終更新 11月04日 23時04分)
【北京・成沢健一】中国軍の最高指導機関である中央軍事委員会副主席が4日、范長竜(はん・ちょうりゅう)済南軍区司令官(65)と空軍司令官だった許其亮(きょ・きりょう)氏(62)の2人に決まった。共産党大会を機に発足する次期党指導部に先立って軍の新体制が固まったが、胡錦濤(こ・きんとう)国家主席(中央軍事委員会主席)の影響力が強まっていることを改めて印象づけ、空海軍を中心とする近代化路線を反映した人事となった。
軍事委は現在、胡氏がトップの主席を兼務し、次期最高指導者への就任が確実視される習近平(しゅう・きんぺい)国家副主席が一昨年から軍事委副主席に就任。制服組10人のうち、郭伯雄(かく・はくゆう)副主席(70)ら70歳前後のメンバー8人が引退する見通しとなっている。
中国メディアによると、范氏は陸軍出身で、瀋陽軍区参謀長などを経て04年9月から済南軍区司令官を務めていた。一方、許氏は空軍出身で、副総参謀長などを経て07年9月から先月まで空軍司令官だった。2人とも、胡氏が軍トップとなってから最高位の階級である上将に昇格しており、特に許氏は胡氏に近いとみられている。
中国国防省は先月25日、総参謀長など4総部トップの人事を発表している。軍指導部の大幅な世代交代が進むとともに、江沢民(こう・たくみん)前国家主席(前軍事委主席)の影響力低下が指摘されている。軍事委メンバーで一時は副主席候補に名前が挙がっていた前総装備部長の常万全(じょう・ばんぜん)氏(63)は副主席よりも格下の国防相に就任する見通しで、江氏との関係が親密な郭氏に近いことが影響したとの見方も出ている。
軍事委副主席に空軍出身者が初めて就任したことも注目される。中国軍は伝統的に陸軍を重視してきたが、近年はステルス戦闘機や空母など空海軍の装備近代化を進めている。背景には、アジア太平洋地域を重視する姿勢を鮮明にしている米国の兵力に対抗するには空海軍やミサイル部隊などの装備拡充が不可欠との認識があり、軍の指導体制にも反映された形となった。