バナナ:中比関係悪化で、日本の店頭価格が下落
毎日新聞 2012年11月04日 02時30分(最終更新 11月04日 10時05分)
バナナの店頭価格がじわじわと下落している。南シナ海・南沙諸島の領有権をめぐり対立を深める中国が、フィリピン産バナナに事実上の輸入制限措置を発動。行き場を失ったバナナが日本に流れ込んで市況を押し下げているためだ。国内で飽和感を増すバナナの価格は1年前と比べて1割以上下がり、過去10年でも最安値圏にある。
複数の輸入業者によると、中国は今年5月ごろからフィリピン産バナナの検疫を大幅に強化し、事実上の輸入制限に踏み切った。大消費地を失ったフィリピンは、日本や中東へ輸出を振り向けているといい、果実輸入大手フレッシュ・デルモンテ・ジャパンは「バナナの輸入価格は例年より5〜10%下がっている」と話す。
日本に輸入されるバナナの9割以上を占めるフィリピン産の動向が市場に与える影響は大きい。財務省の貿易統計によると、今年5〜9月のバナナの輸入量は46万トン。前年同期より2万5000トン増えたが、増えた分のほぼ全量がフィリピン産とみられる。秋以降は豊作などの影響で野菜や果物などの生鮮食品が安値傾向にあることも、バナナの価格下落に拍車をかけているとみられる。
総務省小売物価統計によると、昨年10月に1キロ225円だったバナナの価格(東京都区部平均)は、中国が検疫を強化した6月以降、200円程度に下落。例年需要が高まり価格が上がる傾向にある8月から9月上旬にかけて210円程度まで回復したが、再び下落に転じ、10月上旬には192円まで値下がりした。
小売業者によると、気温が下がるとバナナが熟成しにくく甘さが少なくなるといい、秋から冬にかけては値段が上がりづらい傾向にある。バナナの安値傾向は当面、続きそうだ。【岡田悟】