コラム:米アップルに根付く「負けず嫌い」DNA

2012年 11月 3日 12:33 JST
 
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By Reynolds Holding

[ニューヨーク 1日 ロイターBreakingviews] 米アップル(AAPL.O: 株価, 企業情報, レポート)であるというのはつまり、謝罪はしないという意味にほぼ等しい。この巨大IT企業は、独自開発の地図アプリの不具合については確かにユーザーに謝罪した。しかし、韓国サムスン電子(005930.KS: 株価, 企業情報, レポート)との特許訴訟で英控訴院が出したアップル敗訴の判決には憤っている。

こうした負けを認めない精神は、アップルのDNAと言える。2年前に「iPhone(アイフォーン)4」の電波感度問題が起きた時も、故スティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)は、具体的に謝罪について問われるまで謝らなかった。

それとは対照的に、後を引き継いだティム・クックCEOは独自地図アプリの不具合について謝罪したばかりか、問題が解消されるまではライバルである米グーグル(GOOG.O: 株価, 企業情報, レポート)の地図アプリを使用するよう推奨した。アップルに新時代到来を予感させる動きだった。

しかし、会社の体質がそう簡単に変わるはずもない。ジョブズ氏の側近だったソフトウエア部門の責任者スコット・フォーストール氏は、問題の地図アプリについて謝罪するのを断固として拒否。結局、同氏は退社する格好となったが、アップルに根付く負けず嫌い精神があらためて浮き彫りとなった。

サムスンのタブレット端末「ギャラクシー」が「iPad(アイパッド)」の意匠を侵害したアップルが訴えていた特許訴訟は、英控訴院が先月、侵害はないとする一審判決を支持し、アップルにその旨をウェブサイトなどで公示するよう命じた。

アップルはそれにある程度は従った。同社のホームページからは、敗訴を知らせる声明への目立たないリンクが張られた。しかし同時に、ドイツでの同様の訴訟でアップルが勝利したとの内容も掲載したのだ。

これに対し、控訴院の判事はアップルの公示内容は誤っているとして、同社に他の訴訟に関する内容を削除し、リンクをもっと目立たせるよう命令。不敵にもアップルは、変更に必要な期間として14日間要請したが、2日間しか認められなかった。

アップルとサムスンは世界中で訴訟合戦を起こしており、アップルが今回の敗訴後に強気な態度に出ても、それは全く驚きではない。ただ、クックCEOは、ジョブズ氏と同じくらい頭を下げることに興味はないようだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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