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明日への選択2012伊賀市長選

【中】無農薬 がれき危機感

2012年11月02日

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「虫で畑が全滅したこともある」と話す村山邦彦さん。毎日畑にくる=伊賀市東谷

 秋晴れの下、伊賀市東谷の大根畑で有機農業に取り組む村山邦彦さん(39)が出荷作業におわれていた。今の季節はトマトやコマツナ、ホウレンソウ。作った無農薬野菜は、大手野菜宅配業者を通じて大阪や名古屋の消費者に届けられる。

 「無農薬だから苦労は多いです。虫も多い。大変ですが、次の世代に残せることをしたいと思って農業に飛び込みました」。妻と6歳の長女、1歳の長男と暮らす。

 横浜市出身。大学卒業後、東京都や神奈川県で機械エンジニアとして勤務したが、2003年に「脱サラ」、2年半の農業研修を経て伊賀市で新規農業を始めた。「自分自身の生き方を考えた時、生きることの基本である食べ物にたどり着いた」と話す。

 07年9月、桃太郎トマトやミニトマトを中心に約50アールの畑を耕してスタート。現在は約190アールでトマトのほか、ブロッコリーやダイコン、ネギといった十数種類の野菜をつくっている。売り上げも順調に伸び、11年度の売り上げは1200万円になった。現在はスタッフ4人をかかえている。

 忙しいながらも、穏やかな暮らし。そこに突然、東日本大震災で発生したがれきの処理の話が出てきた。

■2千トン処理要請

 震災がれきを巡り4月、県と市長会、町村会の3者が受け入れに協力することで合意。6月には受け入れに関する県のガイドラインができた。8月には、環境省から県に岩手県久慈市の可燃物2千トンの処理要請があった。そのがれきを伊賀南部環境衛生組合の焼却施設「伊賀南部クリーンセンター」(伊賀市奥鹿野)で焼却し、焼却灰を伊賀市の廃棄物処理業者「三重中央開発」で処理する計画がにわかに動き出した。

 村山さんは9月26日、地元で有機農業に取り組む有志ら約30人と「三重中央開発」を訪れて、焼却灰の受け入れをしないよう求める要望書を提出した。「同社から1キロも離れていない場所で有機農業に取り組んでいる仲間もいる。わずかでも放射性物質が含まれていたら、伊賀の有機農業にとっては大打撃。風評被害の可能性もある。みんなが努力して作り上げてきた有機農業がつぶれてしまう」と危機感を強める。

■受け入れ否定的

 環境省は8月、可燃物がれきは新たな受け入れ要請をしないことを決定した。広域処理が必要ながれきの見通しが大幅に減ったためだ。それでもがれき処理を進める県や組合の方針には変化はない。伊賀南部クリーンセンターで計画されている試験焼却に関して、内保博仁・伊賀市長は「地元が試験焼却すらだめだということであれば、尊重しなければならない」と反対の意向を表明している。

 がれき処理について、市長選立候補の2人はどう考えているのか。元関西テレビアナウンサー岡本栄氏(61)は「地元の絆を壊し、地域に混乱をおよぼすので受け入れ反対。伊賀は農作物もあり、風評被害のおそれがある」と話す。

 元企画総務部長の赤澤行宏氏(62)は「がれきを全国で受け入れるという思いはわかるが、国も8月には新たながれき受け入れは要請しないと決めている。伊賀では地元がみんな反対しているのに、がれきの受け入れを強行するような状況ではない」とし、いずれも受け入れには、否定的だ。(保田達哉)

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