ダブル世界戦の調印式と前日計量が仙台市内のホテルで行われ、4選手ともにリミット内でパスした。10月4日に長男が誕生したばかりのWBC世界バンタム級王者山中慎介は「とりあえず、必ず勝つ。チャンスがあればKOを狙う」と愛息のためにも豪快な勝利での2度目の防衛を誓った。
座布団一枚だ。ちゃめっ気タップリの山中がいた。計量が終わり、カメラマンの要請に応じて、挑戦者ロハスと向き合った時だ。通常なら、無理やりにでもにらみ合いが始まるのだが、山中は何を思ったか、突然、背伸びする一風変わったパフォーマンスでロハスをプッと笑わせた。
「向こうの方が背が高かったので悔しかったからやった。エヘヘ」
この期に及んで変化球が投げられるのも調子がいい証拠だろう。
いつも以上に負けられない理由がある。先月4日に長男・豪祐(ごうすけ)クンが誕生。10月4日生まれということから「テンシ(天使)の日」と勝手に名付けて、早くも親ばかぶり全開の山中は「世界王者が勝った後、よく子供をリングに上げるけど、今まであの気持ちが分からなかった。でも、今はよく分かります。まだ、生まれたばかりだから会場に来れないけど。シューズやトランクスにも名前の刺しゅうを入れたかったけど間に合わなかった。マジックで書こうかな」などと語っていたものだ。
愛息誕生直後の世界戦で負けて無冠になるのはオヤジの威厳にかかわるし、カッコ悪い。豪快なKO防衛でリングの中央から、夫人の実家沖縄でスクスク成長中の愛息に向かって「豪祐、やったぞ!」と叫ぶつもりでいる。 (竹下陽二)
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