2012-11-02
科学報道の記者にほんとうに必要な能力はこれだ!
|【若手記者が行く】科学取材…専門用語飛び交い理解不能の世界、頭が真っ白に(1/4ページ) - MSN産経west
この記者さんの書いた記事がこちら
「筋力の衰え測ります」 屈伸でOK 立命大が開発 - MSN産経west
同じネタに対するマイナビニュースの記事がこちら
立命館大、しゃがみ姿勢から立つだけで「筋力余裕度」を測れる測定器を開発 | 開発・SE | マイナビニュース
絶対的な分量に差があるのは、紙幅制約のあるリアルの新聞というメディアである以上仕方がないのかもしれません。しかしそれにしたって差は歴然で、たとえば産経の記事にはそもそも「筋力余裕度」という概念は吉岡助教が提唱したもので、パーセンテージの数字もそれを元にしているのだ、ということがわかる記述がない。それで、「アスリートは230%で〜」なんて言っても何の意味もないということがわからない、というのがこの記者さん(とこの記事を通したデスク)の最大の問題なんじゃなかろうか。
学者の発表で意味の分からない専門用語が出てくるのは仕方ない(自分はいちおう機械が専門ですが、「インバースダイナミクス」あたりはパッと概要が思い浮かべられなかった)。はてブだと「予習して行け」という声もあるが、それはそれで限界がある。この手の研究発表なり新製品の発表なりを聞くときに最も重要なのは、「何がこれまでと本質的に違うのか」をしっかりと見分ける能力で、その能力がもはやこの国の大卒を普通に採用して教育していたら手に入れられないんだ、となって初めて、科学記事は基本的にポスドクの記者に書かせるというシステムを考えるべきです。「わたしは私文卒で〜」とか言ってるあたりまだまだ新米のこの記者には教育が必要なようで、むしろ責められるべきはこのレベルの記者を一人で取材に送り出したマネジメントの側にあるではないでしょうか(産経だからマネジメントの側も科学取材なんて何もわかってないのが上にいてグダグダということもありそうですが、そうすると吉岡助教は「これを記事にしてください」ってそのままペラ1枚渡したほうが良かったということになるネ☆)。
以上新聞記者について述べましたが、一般の場合でもニセ科学に対するリテラシーって、この「本質的な違いを見分ける能力」にわりかし依存すると思うんですよね。その上で「人類が知っていること、できることはどこまでなのか」をざっくりと知っていて、あとはちゃんと「それがちゃんと科学やってるか疑う」態度があれば、たいていのアホなニセ科学にはだまされないはずだと思います。研究業績偽造は、とくに今回の森口氏の場合なんかだと、アレはまた科学リテラシーなんかとは別の問題だと思うのでここでは言及しません。あと大蟻食先生の「最悪なのは、教養がないことじゃない。教養を獲得する努力さえ怠っているのを誇ることだ」というのは至言だと思いました。
(追記)新聞社に理系出身/理系院卒出身を増やすべきという議論は別の次元においてなされるべきであって、それ自体は僕も賛成するところでありますが、それは新聞社だけ見ていても解決しないのです。理系出身者の就職先の多様化については別の機会にまた書きたいと思っていますので少々お待ち下さい。
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- 11 http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/lochtext/20121102/1351839297
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