最新記事

アメリカ

米大統領選

ロムニーを自滅させる共和党という悲劇

Don't Blame Mitt

問題は、今日のアメリカ社会の現実を把握せず、抑制の利かなくなった共和党の各グループにある

2012年11月02日(金)15時03分
マイケル・トマスキー(本誌コラムニスト)

Bookmark:

印刷

操り人形 富裕層からネオコンまで党内「過激派」の突き上げを食ってきたロムニー Brian Snyder-Reuters

[2012年10月10日号掲載]

 失言と失態を繰り返す共和党の大統領候補ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事を、保守派のコラムニストが寄ってたかってこき下ろしている。確かに本人にも落ち度はあるし、その性格にも難ありと思うが、すべてが彼の責任というわけではない。責任の多くは、思想的にアメリカ社会から孤立し、自制心を失っている共和党内のさまざまな政治勢力にある。

 大統領選に出馬したときから、ロムニーは党内の自滅的な4つのグループの機嫌を取らなければならなかった。第1に、オバマ大統領のせいでアメリカは年収100万ドル超の富裕層には住みにくい国になってしまったと考える人々。第2に、オバマや有色人種に反感を持つ草の根保守派連合ティーパーティーの白人中高年。第3に、オバマの外交政策が弱腰だと批判するネオコン。最後に、扇動的な保守派ジャーナリストだ。

 この4グループから銃を突き付けられれば、ロムニーはどうすることもできない。ロムニー陣営はすべてのグループを満足させなければならず、このむちゃな試みこそが、まずいタイミングでまずい発言をして翌朝慌てて弁解するというパターンの元凶だ。

 副大統領候補の指名でも同じことがいえる。右派からポール・ライアン下院予算委員長を無理強いされたのだろう。鳴り物入りだったが、人気はイマイチだし、果たして何か役に立っているだろうか?

 資金集めイベントでの「国民の47%はたかり屋」発言も同じだ。その場に居合わせたのは富裕層であり、明らかに前述の第1グループを喜ばすための発言だ。ロムニーの本音だったのは間違いないが、求められた「正解」を語ったのだ。

 すべてロムニーの自業自得であり、非難されて当然だ。しかしそれはロムニーだけのせいではない。もちろん選挙参謀のせいでもない。問題は今日のアメリカ社会の現実を把握せず、抑制の利かなくなった共和党の各グループにある。

 ロムニーよりもうまくやれる共和党候補はほかにはいない。いたとしても、元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュくらいだろうが、3人目の「ブッシュ大統領」はまだ早過ぎる。

 共和党よ、現実を直視せよ。ロムニーは限られた選択肢の中では最適の候補だ。ロムニーがいま苦戦しているのは、共和党自身に問題があるからだ。

Bookmark:

ページトップへ

インフォメーション

AD SPACE

FOLLOW US
m

Photo

マタギの里 白と黒の物語

2012.10.25 :「いつの時代の写真ですか?」と問われるという。写真家の木村肇は2…

Picture Power
詳しく見る

MAGAZINE

特集:未来の大学

2012-11・ 7号(10/30発売)

ハーバードなど名門校の講義が無料で受講できる時代に──
オンライン大学の広がりは教育の在り方をどう変える?

  • 最新号の目次
  • 予約購読お申し込み
  • デジタル版
年間予約購読
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

特集

特集一覧

WEEKLY RANKING

  • 最新記事
  • コラム&ブログ
  • 最新ニュース

STORIES ARCHIVE-U.S. Affairs

  • 2012年11月
  • 2012年10月
  • 2012年9月
  • 2012年8月
  • 2012年7月
  • 2012年6月
  • 2012年5月
  • 2012年4月
  • 2012年3月
  • 2012年2月
  • 2012年1月
  • 2011年12月
  • 2011年11月
  • 2011年10月
  • 2011年9月
  • 2011年8月
  • 2011年7月
  • 2011年6月
  • 2011年5月
  • 2011年4月
  • 2011年3月
  • 2011年2月
  • 2011年1月
  • 2010年12月
  • 2010年11月
  • 2010年10月
  • 2010年9月
  • 2010年8月
  • 2010年7月
  • 2010年6月
  • 2010年5月
  • 2010年4月
  • 2010年3月
  • 2010年2月
  • 2010年1月
  • 2009年12月
  • 2009年11月
  • 2009年10月
  • 2009年9月
  • 2009年8月
  • 2009年7月
  • 2009年6月
  • 2009年5月
  • 2009年4月