文学等の世界において著名となった女性の作品と存在を矮小化し、女性を虐待などすることは「テクスチュアル・ハラスメント」と呼ばれているが、本件は、日本における初のテクスチュアル・ハラスメントに関する裁判である。 本判決は、「小谷真理」というペンネームで活躍するSF評論家であるXに対する名誉毀損の成立を認めたものであるが、(1)賠償額が比較的高額であること、(2)本件書籍の発売元にも賠償責任を認めたこと、(3)インターネットのホームページに謝罪文を掲載するよう命じたことの三点に特色があり、重要な先例的意義を有する判決と評価することができるとともに、今後の同種事案の処理上参考になる裁判例として紹介する。 〜判例時報1792号P80より抜粋〜
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1 | 被告山形浩生及び被告株式会社メディアワークスは、原告に対し、連帯して金330万円及びこれに対する平成9年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
2 | 被告株式会社主婦の友社は、原告に対し、被告山形浩生及び被告株式会社メディアワークスと連帯して金110万円及びこれに対する平成9年11月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
3 | 被告山形浩生は同人のホームページ「YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page」(http://www.post1.com/home/hiyori13/jindex.html)のトップページに、被告メディアワークスは同社のホームページ(http://www.mediaworks.co.jp/alt/)のトップページに、それぞれ別紙1記載の謝罪文を投稿して、これを1か月間掲載せよ。 |
4 | 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 |
5 |
訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の、その余を被告らの負担とする。 |
6 |
この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 |
1 争点1(本件項目の違法性)について
(1)名誉毀損の成否
ア 名誉毀損の基準
イ 本件書籍の読者層
ウ 本件記載部分1ないし3が摘示した事実
(ア)本件記載部分1は、「そもそも小谷真理が巽孝之のペンネームなのは周知で」という記載で
始まるが、〜
(イ)次に、本件記載部分2では、「小谷真理には(というか巽孝之には)そんな能力はない。」と
記載されているが、〜
(ウ)さらに、本件記載部分3では、「今出ているSFマガジンの書評欄で評者どもが一様にほめて
いるのが小谷真理という男の『聖母エヴァンゲリオン』で」と記載されており、〜
(エ)これに対して、被告らは、〜
2 争点2(各被告の責任原因)について
(1)被告山形の責任
(3)被告株式会社主婦の友社の責任
ア 発売責任
イ 抗議後、適切な処置を怠った責任
(ア)しかしながら、発売元にすぎない場合であっても、〜
(イ)そこで、被告主婦の友社が、いつ、どのようにして本件の名誉毀損を知り、どのような対処を
したのかについて検討する。〜
(エ)以上に認定した事実によれば、(管理者註:(ウ)の欠番は本文どおり)〜
3 争点3(損害賠償及び名誉回復措置)について
(1)損害額
ア 原告が「小谷真理」のペンネームで、〜
イ さらに、フェミニズム評論の分野においては、他の評論の場合と異なり、〜
ウ また、甲7、8、54号証によれば、被告山形は、〜
エ なお、原告は、被告山形は原告の名誉を毀損する害意や〜
オ 他方において、本件では、本件書籍の販売実数は、〜
(2)弁護士費用
(3)被告らの負担割合
(4)名誉回復措置