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2012年11月3日(土)付

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家電の苦境―テレビ神話の克服を

大企業のトップが自社を「負け組」と公言するのは、めったにあることではない。パナソニックが2年連続で7500億円を超す巨額赤字に陥る見通しになった。津賀一宏社長は記者会見[記事全文]

大学不認可―田中さん、乱暴すぎる

田中真紀子文部科学相がきのう、3大学の開学申請を不認可とした。前日に同省の大学設置・学校法人審議会が「可」と答申したのを、たった1日でひっくり返したのだ。[記事全文]

家電の苦境―テレビ神話の克服を

 大企業のトップが自社を「負け組」と公言するのは、めったにあることではない。

 パナソニックが2年連続で7500億円を超す巨額赤字に陥る見通しになった。津賀一宏社長は記者会見で「当社は普通ではない。これを自覚するところからスタートしなければならない」と語った。

 シャープも来年3月期の赤字見通しを4500億円に下方修正した。ソニーも家電部門がなかなか黒字化しない。

 いずれも、主力としてきた薄型テレビの不振に加え、リチウムイオン電池や太陽光パネルなど、次代を託そうとする事業が苦しんでいる。

 巻き返しの道は多難だ。何より、テレビに代わる経営の柱が見えない。医療や環境・省エネなど有望な分野はあるが、テレビ事業のような広がりはすぐには期待できない。

 品質が良ければ売れるという神話が崩れ、企業側は「何が売れるのか分からない」という自己喪失に陥っているようだ。

 自らの強みをどう生かしていくべきか。

 産業向けの重電が主体の日立製作所は、鉄道車両などインフラ分野に軸足を移して立ち直った。家電の枠内では差をつけにくいが、学ぶべき点は多い。

 技術の「自前主義」も乗り越えなければならない。これは今までの経営モデルを根底から見直すことを迫る。

 日本メーカーは、購買意欲が高く、製品の質にこだわる豊かな国内市場に支えられ、事業を拡大してきた。だが、日本市場が成熟し、競争がグローバル化するなか、最初から世界に照準を合わせないと勝ち残れない時代になった。

 世界的な視野で技術と市場をとらえ直し、必要なら世界中から技術を買う。自前技術も積極的に外に出す。そんな模索の中から、売れる商品を見抜く感覚を鍛え、製品開発と販売の新たなモデルを築いていかなければならない。

 同時に、日本市場を人口減少の流れにまかせず、イノベーションを生み出すゆりかごへ、再構築する必要がある。

 たとえば、福祉・介護や電力・エネルギー部門などで規制を大胆に見直せば、新しい事業分野が開けてくるはずだ。

 考えてみれば、パナソニックやソニーの決算がいまだに大きな注目を浴びるのは、新たな企業が育ちにくいことの裏返しだともいえる。

 民間の奮起は当然だが、政治も市場の構造転換や起業への後押しに力を入れるべきだ。

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大学不認可―田中さん、乱暴すぎる

 田中真紀子文部科学相がきのう、3大学の開学申請を不認可とした。

 前日に同省の大学設置・学校法人審議会が「可」と答申したのを、たった1日でひっくり返したのだ。

 不認可となった3校は来年度以降、申請し直さなくてはならない見通しになった。

 この30年間で、答申が覆った例はない。しかも、申請内容の問題ではなく、「大臣の政策的な判断」だという。

 これでは3校は到底、納得できまい。

 各校が新設を申請したのは半年以上も前のことだ。この間、審議会とやり取りを繰り返し、その意見を受け入れて計画を修正してきた。

 開校の予定は来春で、すでに志望者向けの説明会を開くなどの準備を進めていた。もう11月だ。大学側だけでなく、志望者も動揺しているだろう。

 田中文科相は不認可にした理由について、記者会見でこう語っている。

 「大学がすごくたくさんつくられ、教育の質がかなり低下してきている」「大学同士の競争の激化で、運営に問題のあるところもある」

 たしかに、いま全国の私立大の半数近くが定員割れを起こしている。その原因が、大学の数が増え続けてきたことにあるのも事実だ。

 4年制大学はこの20年の間に1.5倍に増えている。短大の4大への衣替えが続いているせいもあるが、何よりも文科省が91年に大学認可の規制を緩和したことが大きかった。

 過当競争の結果、経営難に陥る大学も少なくない。

 大学が多すぎるからといって、今ある大学を安易に淘汰(とうた)すれば、在校生が路頭に迷ってしまう。まず新設に歯止めをかけようと考えること自体は間違ってはいない。

 田中文科相は、現在のように委員の大半を大学関係者が占める審議会で認可の是非をきちんと審査できるのか疑問だ、とも指摘している。

 だが、大学行政や審議会のあり方は、別途議論して制度改革を進めるべき問題だろう。

 すでに申請されていた3校については、現行制度に基づいて判断するのが当然だ。政策を転換するつもりなら、審査している間に伝えるべきだった。大臣の鶴の一声で変更していい性格のものではあるまい。

 大学界にも自助努力を求めたい。定員割れしている大学が自ら定員を削るなどの工夫をしないと、事態は改善しない。

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