2008年05月20日 (火)
おはようございます。今日は、果糖のお話です。
果物に含まれている糖質は、果糖、ショ糖、ブドウ糖です。この中のショ糖は、果糖とブドウ糖から構成されています。市販されている砂糖の主成分がショ糖です。
皆さん、果物の糖質は、全て果糖と思っていませんでしたか?
実は、私も当初はそう思っていましたが、実態は違うのですね。
例えばリンゴ1個(約240g)のカロリーは約150kcalであり、ビタミンC含量は8mg、遊離糖含有量は35.6g(果糖:18g、ブドウ糖:6g、ショ糖:9.6g、ソルビトール:2g)、水溶性食物繊維含量は0.95g、不溶性食物繊維含量は2.95gくらいだそうです。
さて、その果糖ですが、実に面白い性質をもっていますので検討してみましょう。
まず、果糖は、ブドウ糖とは代謝経路が全く異なっています。
そして、果糖のGI(血糖上昇指数)は20くらいと低いです。
果糖の代謝経路は特殊で、10%がブドウ糖に変換され吸収されますが、残りの90%は、果糖のまま吸収され、肝臓でそのまま直接代謝されます。
ですから、果糖は血糖値をほとんど上昇させず、インスリンの分泌もほとんど促しません。
つまり、果糖のGI値が低いのは、果糖が「ブドウ糖として」利用されるのはごく一部であるからであり、果糖の吸収速度が遅いからGI値が低いというわけではありません。
消化吸収されて肝門脈に流れ込んだ果糖は肝臓で、ブドウ糖より速く解糖作用をうけます。
これは、ブドウ糖が解糖系に入って代謝されていく時には、ホスホフルクトキナーゼという酵素が必要なのですが、果糖はこの段階をバイパスして、速やかに解糖系に入って代謝されるからです。
肝臓に取り込まれたブドウ糖、果糖は解糖系、TCAサイクルを経てATP産生に消費され、余分なものは、グリコーゲン、中性脂肪に変換されます。
肝臓のグリコーゲン蓄積には限りがあるので、ブドウ糖より速やかに代謝された果糖の代謝産物により、脂肪酸合成が促進され、中性脂肪の合成が亢進し、高中性脂肪血症となります。
血糖値の上昇をみるGI値では「ブドウ糖>砂糖>果糖」ですが、中性脂肪値の上昇速度は、「果糖>砂糖>ブドウ糖」となります。
ですから、果糖は、ブドウ糖に比べれば血糖値はほとんど上昇させませんが、中性脂肪合成を促進させ、太りやすい性質をもっています。
果物の糖質の主成分は果糖ですので、血糖値はパンや米など穀物より上昇させにくいですが、中性脂肪に変わるという意味では多く摂ればやはり太ると思います。
もともと少食タイプの糖尿人が、糖質制限食で血糖コントロールは良くなったが、痩せて力が入りにくいというような場合は、この性質を逆手にとって、甘味料に果糖を使うのもありと思います。
勿論、通常の糖尿人やメタボ人には、甘味料はラカントSなどがお奨めですが・・・。
農耕以前の人類は、来るべき冬の食糧難に備えて、実りの秋に果物を摂取して、効率よく中性脂肪を蓄えていたというのが私の仮説です。
**
今回のブログは「ハーパー・生化学」
原書27版、上代淑人監訳、丸善株式会社、2007年
などを参考にしました。
江部康二
果物に含まれている糖質は、果糖、ショ糖、ブドウ糖です。この中のショ糖は、果糖とブドウ糖から構成されています。市販されている砂糖の主成分がショ糖です。
皆さん、果物の糖質は、全て果糖と思っていませんでしたか?
実は、私も当初はそう思っていましたが、実態は違うのですね。
例えばリンゴ1個(約240g)のカロリーは約150kcalであり、ビタミンC含量は8mg、遊離糖含有量は35.6g(果糖:18g、ブドウ糖:6g、ショ糖:9.6g、ソルビトール:2g)、水溶性食物繊維含量は0.95g、不溶性食物繊維含量は2.95gくらいだそうです。
さて、その果糖ですが、実に面白い性質をもっていますので検討してみましょう。
まず、果糖は、ブドウ糖とは代謝経路が全く異なっています。
そして、果糖のGI(血糖上昇指数)は20くらいと低いです。
果糖の代謝経路は特殊で、10%がブドウ糖に変換され吸収されますが、残りの90%は、果糖のまま吸収され、肝臓でそのまま直接代謝されます。
ですから、果糖は血糖値をほとんど上昇させず、インスリンの分泌もほとんど促しません。
つまり、果糖のGI値が低いのは、果糖が「ブドウ糖として」利用されるのはごく一部であるからであり、果糖の吸収速度が遅いからGI値が低いというわけではありません。
消化吸収されて肝門脈に流れ込んだ果糖は肝臓で、ブドウ糖より速く解糖作用をうけます。
これは、ブドウ糖が解糖系に入って代謝されていく時には、ホスホフルクトキナーゼという酵素が必要なのですが、果糖はこの段階をバイパスして、速やかに解糖系に入って代謝されるからです。
肝臓に取り込まれたブドウ糖、果糖は解糖系、TCAサイクルを経てATP産生に消費され、余分なものは、グリコーゲン、中性脂肪に変換されます。
肝臓のグリコーゲン蓄積には限りがあるので、ブドウ糖より速やかに代謝された果糖の代謝産物により、脂肪酸合成が促進され、中性脂肪の合成が亢進し、高中性脂肪血症となります。
血糖値の上昇をみるGI値では「ブドウ糖>砂糖>果糖」ですが、中性脂肪値の上昇速度は、「果糖>砂糖>ブドウ糖」となります。
ですから、果糖は、ブドウ糖に比べれば血糖値はほとんど上昇させませんが、中性脂肪合成を促進させ、太りやすい性質をもっています。
果物の糖質の主成分は果糖ですので、血糖値はパンや米など穀物より上昇させにくいですが、中性脂肪に変わるという意味では多く摂ればやはり太ると思います。
もともと少食タイプの糖尿人が、糖質制限食で血糖コントロールは良くなったが、痩せて力が入りにくいというような場合は、この性質を逆手にとって、甘味料に果糖を使うのもありと思います。
勿論、通常の糖尿人やメタボ人には、甘味料はラカントSなどがお奨めですが・・・。
農耕以前の人類は、来るべき冬の食糧難に備えて、実りの秋に果物を摂取して、効率よく中性脂肪を蓄えていたというのが私の仮説です。
**
今回のブログは「ハーパー・生化学」
原書27版、上代淑人監訳、丸善株式会社、2007年
などを参考にしました。
江部康二
おひさしぶりです。
相方も昨日HbA1c 6.0をたたき出しまして、いよいよ5台へ突入、早朝空腹時血糖もときどき2桁を出すようになり、主治医からはあまり下げすぎないでと言われるようになりました。ひとえに江部先生をはじめ糖質制限食を推進される方々のおかげです。ありがとうございます。
日々、他に食べられるものはないか、という探検の毎日で、この記事です。果物はいけるんじゃないの?という淡い期待、、、。
しかし、ここで素朴な疑問です。果糖の代謝があったり、インスリン不要なglut4があるのに、どうしてⅠ型の人はインスリンを打たなければならないのでしょう。。。インスリンなしでもエネルギー代謝を行えるとすると、膵臓からのインスリンの分泌が無くなることが、どれくらいのインパクトがあることなんでしょうか、、、
それと、インスリンの分泌が全く無くなった場合、インスリン注射をしないとすぐに死ぬのでしょうか?ちょっとダイレクトな言葉になってしまいましたが、実は今「代謝」を調べておりまして、、、、ネットで検索しても、なかなか疑問はなくならない状態です。
医学書に手を出すか、、、とお財布を見ながら悩んでいる毎日です。
相方も昨日HbA1c 6.0をたたき出しまして、いよいよ5台へ突入、早朝空腹時血糖もときどき2桁を出すようになり、主治医からはあまり下げすぎないでと言われるようになりました。ひとえに江部先生をはじめ糖質制限食を推進される方々のおかげです。ありがとうございます。
日々、他に食べられるものはないか、という探検の毎日で、この記事です。果物はいけるんじゃないの?という淡い期待、、、。
しかし、ここで素朴な疑問です。果糖の代謝があったり、インスリン不要なglut4があるのに、どうしてⅠ型の人はインスリンを打たなければならないのでしょう。。。インスリンなしでもエネルギー代謝を行えるとすると、膵臓からのインスリンの分泌が無くなることが、どれくらいのインパクトがあることなんでしょうか、、、
それと、インスリンの分泌が全く無くなった場合、インスリン注射をしないとすぐに死ぬのでしょうか?ちょっとダイレクトな言葉になってしまいましたが、実は今「代謝」を調べておりまして、、、、ネットで検索しても、なかなか疑問はなくならない状態です。
医学書に手を出すか、、、とお財布を見ながら悩んでいる毎日です。
2008/05/21(Wed) 12:27 | URL | でぃあべーちゃ | 【編集】
メタボ人で糖質制限を実践しているローカバと申す者です。いつも楽しくブログ拝見しております。糖質制限で何が辛いって果物を制限しなければならないことです。お菓子やパン・日々の料理は糖質制限コムさんやいろんな工夫でクリアできており、全く不自由を感じませんが、果物だけは・・・強い憧れがあります。果物は速攻で太るので、毎朝少量の手作りジャムのみでがまんしています。
特に糖質の多いイチジクが大好物で、8~9月は例年になく辛い時期になりそうです。
特に糖質の多いイチジクが大好物で、8~9月は例年になく辛い時期になりそうです。
2008/05/21(Wed) 12:34 | URL | ローカバ | 【編集】
ローカバさん。
果物の我慢は確かにつらいですね。
少量の生の果物時々は私もたべてますが、
その程度なら太らずにすみますよ。
果物の我慢は確かにつらいですね。
少量の生の果物時々は私もたべてますが、
その程度なら太らずにすみますよ。
2008/05/22(Thu) 07:37 | URL | 江部康二 | 【編集】
食事制限を一切しないで体脂肪率が下げられないものかと色々なものを探していたんですが、たまたま目に付いた「桑の葉ダイエット」という桑の葉のエキスが入っている健康食品を見つけました。桑の葉の中に入っているDNJという成分が糖質の分解酵素を阻害して糖質の吸収量を減らすということでした。会社の健康診断で中性脂肪が高くて悩んでいたんですが、するすると下がりました。今は全く正常値です。しかも、半年で体重が7Kg以上減少し、73センチのジーパンがはけるようになりました。めちゃくちゃ嬉しいです。
2008/05/23(Fri) 12:16 | URL | あっきー | 【編集】
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008/05/24(Sat) 16:55 | | | 【編集】
哲学者 さん。
情報ありがとうございます。
サイトを見ました。
フルクトースが危険(神経障害やアシドーシス)というのは点滴の静脈注射の話ですね。
まあ果物を食物として食べるのは大丈夫と思いますよ。
情報ありがとうございます。
サイトを見ました。
フルクトースが危険(神経障害やアシドーシス)というのは点滴の静脈注射の話ですね。
まあ果物を食物として食べるのは大丈夫と思いますよ。
2008/05/25(Sun) 19:27 | URL | 江部康二 | 【編集】
古い記事へのコメントm(__)m
アガぺシロップという低GIの甘味料がありますが
成分の8割近くが果糖のため中性脂肪になりやすく
使用は控えた方が良いという意見があり
そこで果糖について探してましたところ
こちらのページに辿りつきました
やはり果糖は中性脂肪になりやすいのですね
勉強になりましたm(__)m
アガぺシロップという低GIの甘味料がありますが
成分の8割近くが果糖のため中性脂肪になりやすく
使用は控えた方が良いという意見があり
そこで果糖について探してましたところ
こちらのページに辿りつきました
やはり果糖は中性脂肪になりやすいのですね
勉強になりましたm(__)m
スポーツドリンクでは果糖の方が脂肪燃焼しやすいと聞いたのですが、どうなんでしょうか?
アドバイスお願いします!
アドバイスお願いします!
Pel さん。
いろんな説があるようですが、
私は果糖は最も中性脂肪にかわりやすいと考えています。
2008年05月20日のブログ「果糖の代謝は特殊」を
ご参照ください
いろんな説があるようですが、
私は果糖は最も中性脂肪にかわりやすいと考えています。
2008年05月20日のブログ「果糖の代謝は特殊」を
ご参照ください
2010/11/17(Wed) 12:31 | URL | ドクター江部 | 【編集】
NHK情報番組「あさイチ」で果物を食べすぎるとインスリンが過剰に分泌する、と専門家の方が話していました。
http://www.nhk.or.jp/asaichi/2012/09/10/01.html
江部先生のblogには
果糖は血糖値をほとんど上昇させず、インスリンの分泌もほとんど促しません。
とありますが、本当はどうなのでしょうか?
http://www.nhk.or.jp/asaichi/2012/09/10/01.html
江部先生のblogには
果糖は血糖値をほとんど上昇させず、インスリンの分泌もほとんど促しません。
とありますが、本当はどうなのでしょうか?
おおはた さん。
果糖はインスリンをほとんど分泌させませんが、果物は分泌させます。
果物には果糖以外に、ブドウ糖やショ糖が含まれているからです。
果糖はインスリンをほとんど分泌させませんが、果物は分泌させます。
果物には果糖以外に、ブドウ糖やショ糖が含まれているからです。
2012/09/17(Mon) 21:57 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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