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なぜ日本のメーカーが束になっても、ジョブズ一人に勝てないのか?

Business Journal

2012年10月17日 08:39


講師のIGPIパートナー・塩野誠氏

「週プレ大學」とは、「週刊プレイボーイ」(集英社)が主催する、カッコイイ大人たちと出会える場を提供する「学校」である。

 その一環として、9月8日(土)、ライブドア証券元副社長で、現在、経営共創基盤パートナー/マネージングディレクターを務める塩野誠氏の著書『リアルスタートアップ』(集英社)発売を記念し、

 「起業する? しない? どうする 人生のスタートアップ」講演会&討論会

が開催された。
 
 7月に発売され、起業家の間では早くもバイブルとなりつつある本書の内容を中心として、塩野氏に加え、ソーシャルランチを運営するシンクランチ代表取締役社長・福山誠氏と副社長・上村康太氏を講師として招き開催された当日の模様を、今回はレポートする。


参加者からも積極的な発言が相次ぎ、インタラクティブな“授業”となった。

【講演会】

 まず、塩野氏より、新刊のエッセンスについてプレゼンテーションが行われた。

1.どれくらいの大きさの商売になるのか? ということを考えるべき

 趣味から起業に至るとカッコイイ。しかし、事業がどれくらいの規模になるのか、数字で計算できなくてはNG。特に起業となると、仲間を誘ってしまうということで、他人の人生を変えてしまいかねない。後でこんなことではなかったという事態になると、後々自社に対する「いいね!」が減ってしまうということにもなる。

2.どんな問題を解決するのか? どんな体験をさせたいのか?

 最近では、ジョブズ対日本の電機業界という対立があって、日本側の電機業界からはアイディアをものすごく丸くしたものしか出していない。結果として負けてしまう。ジョブズのようになるには、ある事業について「一番考えているのは私だ」と自信が持て、エッジの立つ事業を起業するのが近道だろう。

 ソーシャルランチは、ランチはいつものメンバーなので、そのランチに関する問題を解決すると世の中は変わると宣言した。人間はものすごく楽しいことか、ものすごく恐怖を覚えてそれをリスクヘッジしたいか、どちらかでないと動かない。そのためには、どんな問題を解決するのか? どんな体験をユーザーにさせたいのか? 突き詰めることが必要だ。

3.一言でどういう商売をやりたいのかということを書けないとダメ!

 グーグルの「1クリックですべての情報にアクセスする」のように、シンプルな言葉で何をやりたいのかといったことを表現できるまで考え尽くすことが大切。今はネットで、気合と根性があれば大体誰にでも会えてしまうので、意見を聞いてみたい人に「面白いことを考えたので10分だけ時間をください」といった時に、一言で伝わるかどうかがその後を決めるといってもいいだろう。これは企業内でも一緒で、社内でもデキル人は、結局このワンメッセージを作ることがうまい。上司に一言で「こういったことを考えているので、こういうアクションを起こしてください」ということが言えるかどうかで随分と違ってくる。

4.事業を始める時には絞り込むこと。

 事業の柱は何本もいらない。起業すると7〜8割の時間は雑用。雑務が多い中で複数の柱をこなすことはできない。例えば、文房具や備品を買うこともしなくてはならない。事業コンセプトや経営戦略を考えるような時間は、ほとんどないといっていい。だから、起業する時に絞り込むことが必要だ。

5.何かを代替するサービスは起業しやすい

 人に新しい行動を起こさせるのは大変だ。だから、すでに生活の中でそうすることが当たり前となっているものを、より簡単にしてあげるとか、まったく今までにはなかった方法でそれを解決してあげるなど、何かを代替するサービスであれば、人はスムーズにそのサービスを採用するようになる。よくネットで特殊な機能をつけて便利になるところにお金を払っていただく、ということで起業するケースがあるが、そういう事業は、あまり将来性が見込めないのではないか。

6.出口はいくらなのかを意識しておくべき

 シリコンバレーで必ず質問されるのは、「あなたの会社はどんな会社ですか? いくらなら売りますか?」ということ。投資家・株主は、企業価値を10倍から30倍くらいにはしてほしいという期待がある。なぜかというと、リスク・リターンの問題で、銀行融資は融資した金額が返って利息もつくというローリスクローリターンなのだが、株式の場合はゼロになる場合もあるが期待リターンも高い。だから、起業したら常にどのような状態になったら畳むのか、売却するのかなど、事業の出口戦略を意識していくべきなのだ。

7.スタートアップは、海賊と同じ。

 スタートアップは海賊と同じで、仲間を募って、大海原に出ていって、難破してしまえばしょうがないし、お宝持ち帰ったら山分けだぜ、という認識であるべき。だから、その船に投資する投資家の期待リターンというのも、とても大きいということを意識しておくべき。また、潜在的な競合他社をきちんと知っていくことで、いざとなった時はその競合が自社を買ってくれるという選択肢を残しておく周到さも必要だろう。

【プレゼンテーション後に行われた、参加者との討論会】

――似たようなサービスが出てきた時に、どうするべきでしょうか?


ソーシャルランチの福山誠社長(左)と
上村康太副社長(右)。

上村氏 インターネットであれば、真似するなということはできないです。同じようなサービスが出てきた時に、最初はすごく腹が立ったのですが、結局自社のサービスを磨いて、先にどんどんやっていくしかない。もし後で出てきたサービスが丸パクリであろうが、たくさんのユーザーを抱えたら、そちらが正しかったということになるので、自分たちの価値をどんどん高めていくしかない。

塩野氏 価値を進化させていくという方法があります。お客さまにとって何が評価されているのかで、最近ではOtoO(ネットからリアルの店舗への送客等)がありますが、例えば、リアル店舗の従業員教育であったり、そのビジネスの最もクリティカルな部分について気づいているかどうか、そこが本質的な問題を解決できるものになっているかどうかが価値になります。その価値提案を、どんどん続けていくことだと思います。

――起業した会社の畳み方について教えてください。

塩野氏 創業経営者で自己資金のみでやっている場合は、どこかで一旦キャッシュ化してしまって会社を畳んでしまおうといった考え方があります。一方、プロの投資家から出資される場合は、最初になんらかのマイルストーンの数字の設定をしていて、ユーザー数・顧客数がここまでいかなかったらとか、いつまでにこの売上がいかなかったら撤退しようという基準を決めておくことが多い。そのようにしないと、ずるずるといってしまうからです。

――起業する業界を決める際に、心がけることはなんでしょうか?

塩野氏 起業する業界やサービスを選択する際は、自分の肌感覚が合うビジネスがよい。例えば規制がある業界で、規制を破ってすぐにドアを閉めるということが最高ですが、その規制のドアの開け方について感覚があるといいと思います。また、自分の業界では当たり前のことを他の業界では実行していなくて、なぜなんだろうというのは研究する価値はあります。戦略だけで入ってしまうと嫌になってしまうので、肌感覚や好きな分野に入っていくのは、非常に大切なことです。


塩野誠(しおの・まこと):経営共創基盤 パートナー/マネージングディレクター
ゴールドマン・サックス証券を経て、評価サイト会社を起業、戦略系コンサルティング会社のベイン&カンパニーを経た後、ライブドアにてベンチャーキャピタル業務・M&Aを担当し、ライブドア証券取締役副社長に就任。現在は経営共創基盤(IGPI)にて大企業からスタートアップまで、テクノロジーセクターの事業開発、M&Aアドバイザリーに従事。著書に『プロ脳のつくり方』(ダイヤモンド社)、『リアルスタートアップ』(集英社)がある。慶応義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。

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