ひと・しずおか:弁護士不在地に赴任、東端克博さん /静岡

毎日新聞 2012年10月07日 地方版

 ◇町医者のようなゼネラリストに−−東端克博(ひがしばた・かつひろ)さん(34)

 弁護士が10年以来不在だった伊東市に1日、開設された「伊東ひまわり基金法律事務所」の初代所長として赴任した。弁護士過疎地を解消する日弁連などの支援活動の一環で、「スペシャリストが必要な大都市と異なり、どんな困りごとにも応えられる町医者のようなゼネラリストの弁護士にならないといけない」。大きな声でくりくりとした目を光らせた。

 中学、高校と学業そっちのけでハンドボールの部活に励んだ。「体育会系」のおおらかさがそこかしこににじみ出る。ともに部活に熱中した友人の父親が弁護士で、「難しい法律を知っているのはかっこいい」程度で、大学は法学部へ。

 「30歳になるときに人生の方向を決めろ」という祖父以来の家訓がある。「一生の仕事はそれまでに決めたらいい」と、卒業と当時に「大好きな子どもとじっくり触れ合える」家庭教師の仕事に就いた。

 04年、法科大学院制度がスタートした。「憧れの弁護士になりたいが、30歳までの3年間で司法試験に一発合格できるか」と、自問自答の末、受験を決意し05年に入学。

 卒業までの3年間に約500万円はかかる学費の一部は、NPO法人「ロースクール奨学金ちゅうぶ」(名古屋市、中部弁護士会連合会など後援)からの援助を得た。将来、弁護士過疎地に3年以上勤務すれば、奨学金の全額が返済免除となる制度だ。

 一発で合格しなければ「弁護士が自分の適職ではないということ」と退路を断った。実家から始発電車で約1時間、午前7時前には愛知大(名古屋市)に着き、約3時間の自習。友人の誘いをすべて断り、飲みにも、遊びにも出ず「すべてを捨てて」勉強した。

 「合格できない恐怖心」「勉強すればするほど新しい課題に突き当たる際限のない深みへの不安」がたびたび襲って、心がぐらついた。そんなとき、「多くの人に学費を出してもらい、勉強をさせてもらっている」との思いが踏ん張る最後のとりでになった。「自分のお金だったら挫折していたかもしれない」

 一発合格から4年。いま、赴任のあいさつ回りなどで多忙な日々を送っている。落ち着いたら「子供たちへの出前授業などで法律の心を一緒に考えたい」という。【鈴木道弘】

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