国民的アニメとしても有名な、やなせたかしさん原作の絵本といえば『アンパンマン』だ。優しいアンパンマンが活躍する物語は子供だけでなく大人まで引き込む魅力がある。「何の為に生まれて 何をして生きるのか たとえ胸の傷がいたんでも」で始まるアンパンマンのテーマ曲『アンパンマンのマーチ』は、歌詞を見ずに歌える人も多いだろう。

曲自体を知っている人は多いと思うが、アンパンマンのマーチの歌詞の意味まで深く考えたという人はそんなにいないのではないだろうか?  歌詞の解釈は様々だが、その中のひとつにこの『アンパンマンのマーチ』は、戦争で海軍に志願し特攻隊として22歳という若さで亡くなった、やなせたかしさんの弟を想い作られたのではないかという説がある。

確かに歌詞を振り返ってみると1番の「今を生きることで 熱いこころ燃える だから君はいくんだ ほほえんで」や、2番の「忘れないで夢を こぼさないで涙 だから君はとぶんだ どこまでも」、3番の「時ははやくすぎる 光る星は消える だから君はいくんだ ほほえんで」などは、特攻隊として敵地へ決死行をする姿を連想できる。

また、それに続く歌詞と合わせて読むと、そのイメージがさらにリアルなものになる。たとえば2番の先に述べた歌詞に続く「そうだ 恐れないでみんなの為に 愛と勇気だけが友達さ」は、愛と勇気だけを心に持ち、一人で恐れずに立ち向かうさまがありありと目に浮かんでくる。

そして最後の歌詞「ああアンパンマン 優しい君は 行け みんなの夢守るため」は、皆を守るために特攻隊となった優しい弟をアンパンマンに見立てているのではないだろうか? もともとアンパンマンは子供向けではなく、大人向けの読み物として作られたこともあり、アンパンマンとは何か考えれば考えるほど深く味わい深い作品だということがわかる。

もしもう一度アンパンマンのマーチを聴く機会があったら、やなせたかしさんがどんな想いで作詞をしたのか考えながら聴いてみてはどうだろうか。きっと新しい感動がそこから生まれるはずだ。

画像:アンパンマン公式ホームページ