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【暮らし】

増える廃校 活用知恵絞る ネットワークで情報交換

セミナーの後、廃校活用のノウハウについて、会食しながらざっくばらんに意見交換する参加者ら=京都府綾部市で

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 少子化や市町村合併、地方財政の悪化を背景に全国で廃校が増え続けている。地域の歴史や思い出が詰まった校舎を残したいという声は大きいが、利活用の方法や維持管理費の確保が悩みの種だ。廃校問題に取り組む財団法人・都市農山漁村交流活性化機構(東京都千代田区)は、全国の活用事例を基に、知恵を広く共有しようと関係者同士のネットワークづくりを進めている。 (林勝)

 里山風景が広がる京都府綾部市鍛治屋町。旧小学校の建物と敷地を再利用した同市里山交流研修センターで、同機構が十月中旬に全国廃校活用セミナーを開催。活用を模索する人や支援側の行政職員、まちづくりに関心のある若者ら約四十人が集まった。

 建物は人が活用してこそ価値があり、郷愁だけで存続させるのは難しい。学校の役目を終えた建物を、再び人が生き生きと活動する場に生まれ変わらせるには、知恵が求められている。各地の廃校活用事例が紹介された後、参加者から次々と質問が飛び出した。

 「事業をやりたいが運営資金がない」。これに対し、和歌山県田辺市の小学校跡地で、農村体験の受け入れや農家レストラン事業で成果を挙げる農業法人「秋津野(あきづの)」の副社長・玉井常貴(つねたか)さん(68)がアドバイス。「地域の魅力を生かし、将来のまちづくりにつながるビジョンを示すのが大切。最初から行政の補助金に頼るのは避けて」と訴えた。

 玉井さんらは二〇〇〇年から活動。地域の将来計画づくりから始め、農業を生かした交流ビジネスへの展開を地元の農家や住民に受け入れてもらい、協力を取り付けた。農家レストランを切り盛りできる人材も発掘。地域の人たちの出資も受け、〇七年に法人化するなど事業を徐々に拡大。身の丈に合わせて、建物への投資を進めてきた。

 ある自治体職員は「廃校を地域のために使ってほしいが、住民が積極的に動かない」と嘆く。建物を運営する組織づくりや事業を担う人材の育成・発掘も課題。高齢者の生きがいにつなげる、子どもの保護者の協力を引き出すなど、多彩なノウハウが提案された。

 セミナー終了後の会食でも、廃校活用事業の運営者と参加者らは交流を深めた。滋賀県米原市で、旧小学校分校を文化資料館にする事業に携わる同市教委の高橋順之さんは「他地域の取り組みはとても参考になる」と話していた。

 同機構専務理事の斎藤章一さんは「現場の知恵や経験を生かすネットワークづくりを支援したい」と意気込む。来年には東海や北陸、関東など計五カ所でセミナーを開く予定だ。

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◆住民主体で地域活性化

 文部科学省によると、一九九二〜二〇一〇年度の全国の公立学校の廃校数は約六千三百校にも上る。うち七割が利活用されているが、体育施設や子育て・福祉施設など、行政サービスを補完する目的が目立つ。

 一方、住民が積極的にまちづくりに活用し、地域活性化に役立てる事例もある。多いのは、里山や河川を舞台にした自然体験活動の拠点。都市部のニーズに合わせた企画の立案力が必要だ。芸術家や工芸作家に活動の場を提供したり、現代アートのワークショップを開いたりするなど、アートでまちおこしを実現した地域もある。

 過疎地域では地元になかったコンビニや食堂、居酒屋を作って生活の利便性を高める使い方や、都市部からの移住を支援する事業に活用する例もある。

 全国の活用例を調べている都市農山漁村交流活性化機構広報情報チームの畠山徹さんは「廃校を悲観的にとらえず、地域を生かすチャンスにしてほしい。ニーズに応じて使い方を変えていく柔軟性も必要」と指摘している。

 

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